異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

恐怖

 俺は『殺します』という発言に若干ビビりながらも後ろを振り返る。
 すると、俺の後ろには昨日指揮を執っていた女性騎士が俺の頬に当たるか当たらないかの距離で剣を構えていた。
 彼女は昨日と違い私服に近い動きやすそうな格好をしていて黄色に近い金髪を後ろにまとめて縛っている。顔がまとまっていて美人騎士といった感じだ。
 そして! 下には短いショートパンツを履いていて太もも! 太もも! 太もも! がニーソからひょこっと顔を出している。俺得すぎる!
 ……と、話を戻すのだが俺の頬には剣が突きつけられており、ここから少しでも顔を動かしたら迷わず俺の頬から血が出る。痛いのはゴメンなのでそのままの状態で話す。

「……何もしませんよ?」
「そうですか。死んでしまえばいいのに」

 そう言うと彼女は剣を鞘に戻した。
 死んでしまえばいいのにって……国を守ることにおいて偉いと思われる人がこんな事を言ってていいのだろうか……。
 すると彼女は1人、前に歩きだしていた。
 そこからは『付いてこい』と言われている気がしたので黙って俺は後ろから付いていく。
 少し歩くと小さめの船。サイズでいうなら大きめの車より一回り大きい物が止まっていた。
 彼女はその船の前に止まり指でそれを示す。これに乗って行くと言うことだろう。
 俺は乗ればいいのかな。と思い後ろに付いている扉から入ろうとすると止めるように俺の前には剣が出された。

「……すみません」

 俺は元いた場所に戻ると黙ってそこに立ち尽くした。それとほぼ同時に彼女は剣を戻し目を閉じた。
 俺も何となく目を閉じた。
 目を閉じると色々なことを思ってしまう。
 この人が急にサン・チュを見た瞬間、女王と外見が似ているという理由で焼男さんを刺し殺すんじゃないかとか。
 この人の愛想が悪すぎて俺を心配してここで働くように留めようとするんじゃないかとか。
 考えれば考えるほど嫌なことばかり出てきて気分が多少悪くなっていた時、後ろから声がした。

「よう! ……久しぶりではないな」
「ですね」

 あはははと続けるように笑う。そうゴリさんだったのだ。あんだけ『またどこかで会いましょう』オーラを出していたのにすぐに会ってしまった……ないよ!
 すると隣まで来ていた彼女は目を開けていて「よろしくお願いします」と物凄く美しく愛想の良い綺麗なお姉さんを演じていた……と、いっても素を知らないんだけど。
 だが俺との態度とでは全く違うのは分かった。
 何でっ……!? まぁ態度が変わっているということは他に色々心配していたことが晴れてその点に関しては良かった。

「おう。久しぶり! 宜しくな! やっぱりあんたは愛想が良いよ」

 一部の人間もしくは俺以外の人間にはな! 是非ともそれを追加して頂きたい。
 まぁこれはこれで船内の雰囲気が悪すぎる。ということは無くなったので良しとしよう。

「2人ともいるし早速行くか!」

 その声で俺はゴリさんの後ろに続き船に乗る。
 扉を開けると長細い椅子が2つが向かい合うように設置されていた。
 椅子の上では寝たりも余裕で出来るのでは無いだろうか。
 椅子の下には玩具等の遊び道具もあり暇にならないようにはなっているのだが彼女が遊んでくれるということはありえないと思うのでゴリさんとずっと話していよう。少しばかり彼女に対する嫌味と取られてもおかしくないが元々は彼女から仕掛けてきたことだ。そこら辺はいいだろう。
 第一、これから少しの間、生活をするのにも関わらず自己紹介無しの時点でおかしいだろ。
 なんて思っていると俺の望みは一瞬で絶たれた。

「じゃあ俺はあっちだからお二人さんで楽しんでな」
「えっ……」

 俺はつい声に出してしまったが聞こえてないようなので助かった。
 何故、この狭さなのに操縦席だけ扉を挟んだもう1つ奥にあるんだよ! 扉があるから何かなーとは思っていたがあまりにも酷すぎる。

「……ふぅ」

 奥にゴリさんが入っていくのを確認し覚悟を決めた俺は座る。
 彼女は入った直後の椅子に座ると予想した俺は1番遠くの操縦席真近の椅子に腰をかけて待機していた。
 だが彼女は1番近くの椅子を過ぎ、真ん中を過ぎる。

 ドクドク

 近付いてくるという恐怖のあまり自分の心臓の音が聞こえ心臓が出てくるような気がした。どんだけ怖いホラーゲームをさせられているのだろうか。
 そして俺の前に座った。
 俺がホラーゲームの主人公なら迷わず叫んでいただろう。
 椅子と椅子の感覚があるとはいえ少し前に倒れかかったら迷わずこの豊かな胸(大体Dカップくらい)に飛び込んでしまうだろう。こんなに重い物を下げていて辛くないのだろうか。一変、陽葵さんにでも聞いてみて殺されかけるのも悪くは無い。
 俺の神経は崩壊しかけ殺されるなら誰がいいかな。なんて考えていた。
 もうお家帰りたいよ。と泣き叫びたかった。
 いやこの世界にとっての俺の実家はあそこだから。帰省する時に殺されそうなのか。と、1人納得する。
 じゃなくて……! 変な汗出てきた。滝のように各部分から出ているのを感じられた。
 服が着替えられそうなところを予め聞いておけば良かったなと軽く後悔をする。

「……」

 おっと意外にも彼女は無言を続けていた。
 あるとすれば真っ直ぐに俺を見つめて睨みつけているだけだった。

「……」

 俺も黙って見つめ返す。こんな状況で少しでも恥ずかしいと思ってしまう自分が情けない。

「クズ童貞が」

 彼女はそう言うと目を閉じた。
 今の言葉は俺の胸に深く突き刺さった。少し恥ずかしかったため顔が赤くなったのが出てそんなことを言われてしまったのか。
 もう辛くなるだけだから深く考えるのは辞めておこう。
 そう思い本当は横になりたいところを我慢し俺はそのままの座った状態で目を閉じた。

 ――気がついた時には意識を失い寝ていたのだろう。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配 身体強化(全身) 魚との会話 危機察知

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品