異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

女王様『後編』

 俺は読み聞かせを始める。

「ひとりぼっち――」

 本の題名は『ひとりぼっち』この話を超簡単に説明すると、両親を亡くし2人きりになってしまった中学生の双子が前向きに生きていこうと決めた時に姉が病でなくなってしまい妹は悲しむが家族全ての死を乗り越え、前向きに生き抜く話だった。

「終わり」

 面白い話だが中学年くらいにしては気難しい話だな。と思った。
 やはり俺なんかとは小さい頃の経験が違うのだろうか。

「私、この話大好きなんですよ! ありがとうございます!」

 と、感激し喜び俺の両手を掴んでくる。俺をロリコンにする気か!

「それと……一さん! 話をしている時に浮かない顔でしたけど何かありました? 私、外交とかをよくするので分かっちゃうんですよね……最初に会った時の反応といいどうかしましたか?」

 この子……サン・チュと同じで察しが強いな。

「ほら……またしましたね。私に話してくれないと悲しいですよっ?」

 俺のハートは撃ち抜かれたような気がした。
 正直に答えるか。

「すみません……単純に女王様に似ている人を知っていた。ってだけですよ」
「私に……似てる人、か」

 言葉を濁すようにそう言うと彼女は突然泣き始め俺の胸に抱きつく。
 色々と危ないです。俺の突起物が暴走します。犯罪に手を染める気はないんです。
 ここは年上らしく冷静に判断し行動するのがいいたろう。
 俺はその抱きついてくる肩を軽く叩きながら慰める。

「事情は聞かないでおきますし分かりませんが……大変でしたね」

 そう言い彼女が落ち着くまで抱いた手を後ろに回し頭を撫で続ける。
 すると、このいい場面。正直、俺も嬉しかった場面に妨害が入った。

「ふぉい! ロリコンがいるじょ!」

 翼が俺らの方を指差し騒ぎ始めた。
 すると警報のようなものが鳴り響きたくさんの足音が聞こえてくる。
 そして扉は開かれた。

「おい! 貴様! 死にたいか!」

 綺麗な顔立ちの女性騎士が俺に剣を向けてくる。
 その後ろからは数100人もの軽装をした男達が俺に向かってハンドガンやライフルなどの様々な遠距離武器を向けてくる。
 それはまるで大泥棒が数多の警察に包囲されているかのような感じだった。
 すると、さっきまで俺の胸にいたはずの女王様はワープか何かを使ったのか俺の前に立ち「帰りなさい!」と叫んだ。
 それを戸惑うように了解し俺をギロリと睨みつけ帰っていった。

「……なんだかすみません!」

 そして何事も無かったかのように話を続ける。さっきと違うといえばチューリさんを含めた5人の監視の目と睨みつけるような目だ。
 だとしても、あの状況から即座に判断しあれだけの人数をまとめる力は本当に凄いと思う。

「……こんなことになってしまったんですから泣いてしまった理由を話すしか無いですよね」
「べ、別にいいですよ?」
「いえ……申し訳ないので話させてもらいます」
「は、はい」
「私には1人の姉。それも双子の姉がいました。姉は私より何でも優秀でスキルなんて私ではとても適わないし、まとめる力も明るさも断トツ的に上でした」

 いやいやいや。まさかな奇跡だよな。うん。
 それにあいつは人前では凄いけど俺の前での態度とか酷かったしな。

「そんな姉は3年前、この城から出ていってしまいました。ある事件をきっかけに――」

 おいおい。待てよ? 本当にあのサン・チュじゃないよな。

「丁度、その頃は治安が悪くテロリストもたくさんいました。そして、その治安が悪いと訴える住人が何とかしろと一気にこの城を攻めたてたのです」

 それは酷いな。対抗すべきはテロリストだろ……!

「その頃、女王だった姉はそれはそれは困りました。しかも当時はまだ小さかったのです。この街では女性がずっと女王を担っていたのですが娘は若い。それなのに母は病で倒れ込んでいる。もちろん女王なんて当時の姉には荷が重すぎました」

 それはそうだ。男手は使えないってことだからな。俺は1つだけ気になり聞いてみる。

「チューリさんは女王様のお兄様ですか……?」
「そうなりますね。でも女性が受け継ぐ決まりなので姉になったんです」
「それでそのお姉様はどうしたんですか……?」
「もちろんテロリストを片っ端から成敗していきました。
 ですが効率も良くないので時間ばかり食ってしまう。睡眠時間も疎かになる。姉はかなりイライラし疲れていたと思います。
 そこで追い打ちをかけるかのように母親が国もまとめられないなんて『ダメ女王』ね。と、そんな酷い言葉をかけたのです」

 本当に酷い話だな。孤独で可哀想すぎる。

「私は何度も声をかけましたがそれからは全てを1人でするようになりました。抗議に対する会見も民衆の不満を少しは良くすることも……誰にも頼らずに頑張りました。
 ですが不満は積もるばかり遂に爆発し城を本格的に攻めにくるものが現れ最終的には『女王の首を取れ!』と武器を持ち攻め始めました。
 ですが姉は1人1人を殺さぬように命じ、1人も民を殺すことだけはしませんでした。気絶させて返しているだけなので反乱は続きました。
 最終的に民衆のリーダーがこちらに話を持ちかけてきました。その出した政策はあまりに不合理なものでした。
 姉が怒りそれを否定すると民衆のリーダーは首元に剣を突きつけたのです。そこで姉は殺されないためにスキルを使い人を初めて1人殺してしまったのです。
 それを悪く思い姉は全ての民の前で謝罪しどうしようとしたのかを熱弁しました。
 今更になりやっと心を打たれたのかその日から反乱は止まり街も復興していきました。国の全財産ともいえる金を注ぎ込んだのであっという間に復興は終わりました。1人の命により止まったのです。
 ですが姉は常にそれを気にしていた。1人で部屋で泣き叫んだりしているのをよく見ました。
 ですが私は声をかけることが出来なかった。
 そして、次の日には復興を祝う会を開く予定でしたがその前日に姉は失踪してしまったのです……」
「……」

 俺は何か声を出すことは出来なかった。あまりに悲惨で可哀想な話だ。

「……誰かが声を姉にかけてあげていれば。私が……手を差し伸べていれば……! 姉はあんな風に背負い出ていくことは無かったかもしれないのに! 出ていった今では……分かりません」

 俺はサン・チュをもう一度思い浮かべる。確かにあいつは俺と会った時に同じ世代と付き合うのは久しぶりだの嬉しそうだった。
 一応、その姉の名前を聞いてみるのも悪くないのではないだろうか。

「良かったらでいいんだけど……お姉様の名前を聞かせてもらえますか? そしてそのお姉様に会いたいですか……?」

 泣いて語る彼女に俺は目線を逸らさず、優しく問いかける。


「姉の名前は『サン・チュ』です……もちろん会いたいです!」


 ――この子達のためになんとか出来るのは俺しかいない。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配 身体強化(全身) 魚との会話 危機察知

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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