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雪見だいふく

船出

 俺はホテルに戻るため砂浜を歩く。

 ザクッザクッ

 1歩、1歩踏み出す音が大きく感じた。
 なんか体だるいな……最近、倒れてばっかりだしな。
 俺はホテルの前に到着する。

「……ふぅ」

 自動ドアが開く。やっと着いたー! と、両腕を上げると砂が落ちてくる。
 汚いな……このまま入っても大丈夫なのかな。
 ま、まぁいいだろう。
 俺がフロントに到着しエレベーターに乗ろうとすると遠くからマイク越しか、かすかに声が聞こえてくる。
 何かイベントでもしてるのか?
 俺は気になりそちらの方向に向かう。方向的には昨日、パーティを行ってくれた大広間だろう。
 部屋に近づくにつれてなんと言っているか聞こえてくる。

「グス……あなたはなんだかんだ言って……いつも助けてくれて……それで……」

 この声は陽葵さんか? 何次会までしてるんだよ。全く……明日にはこの島から出るというのに。
 でも、何かしてるなら俺も行きたいなー……!
 そう思い俺は大広間に入る。

 ――そこに広がっていた景色。

 それは中央に大きな城のようなもの。左右には松のような木。そして、たくさんの椅子。黒服の人達。
 そしてその中心には俺の写真があった。
 ちょい待て! これってお葬式じゃないか!?

「……」

 どうしよう。黙ってた方がいいのかな。

「一君は本当に……ううっ」

 会場は悲しみに満ちていた。
 多くの人から涙が見えていた。と、いってもほとんどが最近、食事を一緒にしたおっさん達だったが。
 ていうかさ……葬式するのが早すぎると思うんだよ。招待したらサン・チュとか来てくれたかもしれないのにさぁ。ていうか、俺……死んでないし!
 俺はそんな雰囲気を後ろから眺めていた。
 この感じだと主人公実は死んでいた……! みたいでホラーになりかねないからどうにかしないとな。
 はぁ……本当にどうしよう。悩み、ぼーっとしていた時に俺は右足を椅子の角にぶつけてしまった。

 ガチャッ

 椅子の音が会場全体に鳴り響く。

「「「「……!」」」」

 全員が俺を凝視するかのように見つめる。

「一君の……ゆ、幽霊が現れたっ!?」
「ふっふっふ! ふははははは!」

 群れをなすおっさんの中央付近から笑い声をあげる者がいた。
 そいつはおっさんとは違う、若い男だった。
 年齢は恐らく20代。ショートの黒髪で高身長、それにして顔は整っている。だが、民族衣装のような服装にギラギラと輝く指輪を10本の指に装飾していて、それが彼の品を台無しにしてるようにも思えた。でも……イケメンなら何でもありみたいな所あるよな。
 ムカつくぜ。

「その彼! えーっと……一さんは私の力により幽霊としてここに戻ってきたのです!」

 そう言うと、謎の儀式のようなものをし始める。ていうか、しどろもどろですね。俺は死んでないしインチキ霊媒師だろ。

「「す、凄い!」」

 会場全体がざわめき始める。
 いや、これ葬式としてどうなんだよ。

「私に感謝しなさい!」
「あ、ありがとう……」

 一緒に最後を過ごした。と、思っているのか知らないが陽葵さんや鈴菜、それに学、ゴリさんは物凄く責任を感じているように重苦しい顔だった。
 それと同時にまた会わせてくれて「ありがとう」という気持ちなのか霊媒師に深くお辞儀をし感謝していた。

「感謝の気持ちにはこれですよ!」

 そう言うと予め用意していたのか募金をする時に使うような箱を持参していた。
 おっさん達が少ないながらにお金を入れていくのが分かった。
 こいつさぁ……いい加減にしろよ。いい気になりやがって、しかも死んでないし。勝手に殺してんじゃねぇよ!

「ちょっと待て……!」

 会場が静まり返る程に大きな声で叫ぶ。

「そもそも俺は死んでない! そいつはペテン師だ!」
「「えっ……?」」

 その後、俺は死んで無いことを証明し場は静かに収まった。
 そして、部屋に戻った。

「本当に……今回みたいに早とちりすんなよ。死んだと思う気持ちは分かるけどさ……」

 説明を求められたので俺は竜宮城もどきでの事を説明し翼と混浴を楽しんだ後、すぐ眠りについた。


「おはよー!」
「……おはよ」

 俺以外の4人は既に目を覚ましていた。

「皆、早いな。島から出ていくのに何で気合が入ってんだよ……」
「いやー! 昨日、よくよく考えたら女王様、直々なら金銀財宝がたくさん貰えるのかなーって、期待してた!」
「そ、そうだな」

 こいつらは欲深いというかなんと言うか……。
 まぁ、この島ともお別れか。色々あったな。最初は色々、やばいと思ったぜ……って、この島来てから俺……あんまりゆっくりしてない!? 仕事しに行った時に何もしてなくて休みに仕事っぽいことたくさんしてるって……おかしいな。
 涙が出てきたぜ……今度来た時は絶対楽しんでやるんだからな!

「でも色々あったけど楽しかったですね。また、絶対来ましょうね!」

 その時はサン・チュとかも連れて行きたいな。
 朝食をみんなで食べた後にお世話になった人(と、いってもおっさんがほとんどだが)に挨拶をすると、そろそろ出る時間になっていた。
 俺達5人は船の前で待機する。

「……お! お前ら早いな。送ったら暫くはお別れになりそうだな……」

 ゴリさんが砂浜を走りこちらに来た。

「そうですね……まぁ、どこでも会えますよね……!」
「いやー! 良い島だったな!」
「そうですね」

 翼と学がそうぼやく。
 最後の最後までここは本当に良い島なのだ。
 挨拶を交わしたにも関わらず俺達の船近くまで見送りに来ていた。

「よしっ! そろそろ行くか!」

 俺達4人は船に乗り。手を振ってくれる見送りの人達に手を振り返す。
 そして船が出発すると同時に5人で声を合わせる。

『ありがとうございましたー!』

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

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お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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