異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

目を覚ませ

 ……学を助けるためには何が必要なんだ? 考えろ翼の力を最大限に使えば何かが出来るんじゃないか?
 そうだ! 言ってもこいつはたかがハリセンボン。陸に上げておけば息が出来なくなり死ぬはずだ。死ぬと学がどうなるかだけが心配だけどな……

「おい。ハリセンボン。大人しく学を戻さないとお前を陸にあげるぞ?」
「キャハハハ! 面白いことを言うね。私をこの状態で殺したらそこの男の意識は無くなって植物状態になるよ? 良いのかなー? ニヒヒヒヒ」

 こいつには死の恐怖とかは無いのだろうか。ハッタリだとは思うが万が一のことを考えると殺すなんて出来るはずがない。
 なら、どうやって戻せと言うのだろうか。

「釣られたことに対して怒って学を洗脳してるのか? なら、逃がすから許してくれよ」
「……それだけじゃないんだよねー。大体、お前ら全員腹立つから海になんて戻ったらキングハリセンボン呼んできちゃうよ?」
「なら、どうしろってんだよ」
「お前らが今捕まえた魚ー! 全員逃がして? そうしたらうちを解放した後にキングハリセンボンを呼ぶなんてことはしないよー」
「……嫌だ。って、言ったら?」
「そこの男は死ぬかもねー……というより、船ごと沈むかもねーへへっ」

 ……魚を逃せば助けてくれる、か。だが、こんなに馬鹿にしてきたやつが逃がしただけで本当に満足してくれるとは思えない。「騙されてれるー!クスクス」って、笑われる気しかしない……だが、学の命に比べれば魚を逃がすことなんて容易いよな。
 俺はクーラーボックスに近寄りそれに手をかける。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょちょ! 待て! 腹が減ったぁ。食べたいー! お願いだから逃がさないでくれぇ」

 と、翼が座りながら嘆く。
 最初に取った俺のクーラーボックスを開けたくさんの魚を海に逃がす。

「キャハハハ! いいね。いいねぇ! 最高の気分だよー!」
「はい。これでいいんだな? 学を解放してもらえるか?」

 と、クーラーボックスの中身を強調するように見せる。

「見せてこなくても残ってないのは分かってるよ? さっき操れたのもスキルを使用して外を見ていたからに決まってんじゃんー! でーもー! ほかのクーラーボックスにもさ・か・な入ってるよねー? ふっふー」

 と、上機嫌そうな声を出す。
 あームカつく。こいつ単体ならさっさと倒すのに。ハリセンボンが自分のスキルを明かし戦いやすくなった……だが、学を解放してもらうのが最優先と考えているので俺はなかなか攻められない。

「逃がせば学を返すのか?」
「さっきからそう言ってんじゃーん」

 迷わずに俺は翼のクーラーボックスを掴む。

「ごめんな……翼。許してくれ」
「ふぁぁあ!! せめて、学のだけは捨てないでくれ! 頼む! 捨てられたら俺泣いて死ぬ。魚! 久しぶりの魚がァ!」

 俺は翼のクーラーボックスに入っている魚を全て逃がす。

「キャハハハ。マジ笑えるわ! その男の泣き顔は笑いものだね! 魚を大切にしてくれてることには関心するけどね!」
「……最後にこれを逃せばいいんだな?」

 俺は翼のクーラーボックスを手に取る。
 翼は親にゲームを没収された小学生やゲームを破壊された引きこもりのようにその場に肩を落とし崩れている。まるで、魂が入っていない人のように。
 俺が魚を海に全て捨てると。

「うわぁぁああ!! ふざけんなぁ!」
「これで学が助かる……と思うから、な?」

 俺は力の抜けている翼を手で抑えながらダイヤモンドハリセンボンの話を聞く。

「キャハハハ! 愉快! 愉快! 本当に逃がしてくれるとはキャハハハ! その代わり君達は助かった。良かったね! とりあえずその男の意識を戻すよー」
「す、凄いですね……って、あれ!?」

 学はさっきの状況に戻ったような反応を示す。

「あれ……私の前にいたハリセンボンは?」
「キャハハハ! サンキュー! お前を洗脳したお陰で魚を全員逃せたよー!」

 翼は何処から声がしているのか、そもそも何が起きているのか困惑しているので後で説明しておこう。
 とりあえずはポカーンとしててくれ。

「まぁ、本当に魚を逃がした人は君が初めてだよ。大抵の人はそこの崩れてる男みたいに必死で抵抗してくるからねー。と、言ってもまだ2組目なんだけどキャハハハ」
「で、何が言いたいんだ? 後はお前を逃せばいいのか? ……いや、ちょっと待てよ! お前、爪が甘すぎんだろ! 今、お前を殺せばいいんじゃないか? 洗脳も溶けてるし……」

 これでわからないこいつらには食べる部分だけ渡して俺は調理と偽り棘を全部……と、ゲスい事を考える。

「あ……まぁ、私は死ぬけどキングハリセンボンが許さないと思うよーキャハ」

 なんで、こいつは死にそうなのに何故笑ってるんだ?
 でも、嘘だとしてもキングハリセンボンが来たら困るから大人しく逃がすか。

「……来たら怖いからとりあえず逃がしとくよ。もう辞めてくれ……頼むから」
「魚さえ取らなければ許す! 他の魚を逃がしてくれた事には感謝するから、これを受け取って」

 クーラーボックスの中に高価そうな棘を1本落とした。こいつは本当に良い奴なのか悪い奴なのか分からない奴だな。自分のためになることは1つもないし。
 俺はなんだかんだいって高そうな棘を置いていってくれたダイヤモンドハリセンボンに感謝の気持ちを伝える。

「……ありがとな」
「これに懲りて魚を食べまくったりしないことだね! じゃ!」

 ダイヤモンドハリセンボンは海に戻されすぐに魚影は見えなくなった。
 結局、高そうな棘を貰えた俺は得をしていたので満足していた。
 だが、この泣いてる翼と混乱している学。下で魚を待っている2人の対処が辛いなと思った。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能)

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

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お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
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