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雪見だいふく

伝説の魚

「……眩しっ!」

 俺は遂その魚に見とれてしまった。
 隣の学はまだ見とれているのかその場に立ち尽くしていた。
 俺達が驚いて立ち尽くしてしまうほどの魚。それは、針1本1本が宝石のように輝いているハリセンボン。ある箇所の針はルビーのような色。また、ある所はエメラルドの様な色。
 他にもダイヤモンドやサファイアなど様々な色をあしらっている。

「凄く綺麗だなぁ……」
「だろ? この針1本1本が宝石のように輝いているハリセンボン! 本当に凄いよなぁ。学を見てみろよ俺らが話しているのに気づいていないのかすっかりこれの虜になってるぜ」

 それ位に凄い魚だ。
 俺も驚いて何秒かは沈黙してしまった。だが、他にも引っかかったから黙ってしまったような……テンションが上がって何かを忘れてる気がする。思い出せ俺!
 結局、俺は何かは思い出せ無かったが何か引っかかる事があるという事だけは分かった。

「学……大丈夫かー!」

 俺が1人で考え事をしていると翼が何度も学に呼びかけるように声を上げていた。
 だが、翼は何処か違う世界に飛ばされているかのように輝くハリセンボンを見つめながらぼーっとしている。
 俺も不安になり学の肩をさする。

「大丈夫かー? おーい!」

 俺は不安になり学の耳元だがかなり大きな声をあげる。

「……」
「おい! 学!」

 学はその場に意識を失ったようにぐったりと倒れてしまった。

「おいっ! おい!」
「割とヤバくないか? これ。熱中症か何かか?」

 俺はこんな時だからこそ冷静になる。気は動転していて口調は危うやなのだけれど。

「キャハハハ」
「「おい! ふざけてる場合じゃないぞ?」」

 俺と翼の声が合わさる。

「は? 今、お前がこんな状況なのにふざけて笑ってんだろ?」
「お前が笑ったんじゃねぇかよ!」

 俺と翼は取っ組み合う。無論、喧嘩をしたら勝ち目なんて無いのだが。
 なので、俺は先に謝る。こいつがこの状況で笑った事に対してはかなりイラついているけど。

「悪かった。とりあえず落ち着け。この状況で笑ったのはどうかと思うがとりあえず学の様態が先だ。運ぶから手伝ってくれ」
「……お前だろ。いや、別にいいけどな。とりあえず運ぶってなら手伝うぜ」

 俺達はとりあえず学を休ませようと俺が両腕、翼が両足を掴むと例のクーラーボックスから声が聞こえてきた。

「キャハハハ。人間とかマジウケるんですけどー! お前らさっきの笑い声相手の方だ。って、思ってるんでしょー! その笑い声はわ・た・し! 私をほったらかして何処かに行こうなんて舐めるのもいい加減にして欲しいよねー!」
「「……?」」

 俺と翼は全く状況を理解できていなかった。
 魚が喋った……? いやいやいや、翼だろ。こいつ、女の声真似こんなに上手いのか? いい加減にしろよ。
 けれど、もし仮に魚が喋ったとし……?!
 俺はこの瞬間にこいつが何なのかを思い出した。そして、謝りたい人が出来た。
 ゴリさんごめん。
 何故、俺はあの時思い出さなかったのだろう。『針1本1本が宝石のように輝いている』こんな魚、他にいるわけが無い。そう。『ダイヤモンドハリセンボン』だ。けれど、ゴリさんの情報によると『キングハリセンボン』を呼ぶという話でこいつ単体が『喋る』『見惚れさせて気絶させる?』なんて事は無かったはずだったはずだ。

「おい! お前ふざけてんじゃねぇぞ! 挙句の果てには学の手まで離しやがって」

 俺は思い出すと同時にどうやら手を離していたようだ。学ごめんな。気絶しているとはいえ頭をおもいっきりぶつけたよな。

「俺じゃないって言ってんだろ! とりあえず今は黙ってろよ!」
「一人芝居してんじゃねぇよ! お前ふざけてんのか?」

 俺は翼の話なんか一切無視してダイヤモンドハリセンボンが入っているクーラーボックスごと海に投げつけようとする。
 翼は口をポカンと開け呆然としたような顔でこちらを真顔で見つめている。失望のあまり何も言えないような感じだった。
 俺が体の後ろに重心をかけ前に重心を持っていこうとすると何者かが俺の手を止めた。

「……やめろ!」

 威圧で船の上に突風が起こった。俺はあまりの突風に船から落ちそうになる。
 俺は状態を立て直しクーラーボックスをとりあえず船の上に置き、振り返ると俺の手を止めていたのは学だった。

「……お前起きたのか!?」

 俺の不安が一気に解けたのか「ほっ」と、息を吹くと学が近付き物凄い力で俺の腕を握ってきた。

「痛っ! お前どうしたんだよ! 落ち着……け、俺だ。……記憶か何かが飛んだのか?」

 痛い。実際には切れないと思うがこのまま腕が引きちぎれてしまうかのような威力だ。
 すると、色々な事が起こり呆然としていた翼が我を取り戻し学を止めに入る。
 流石と言うべきか翼は軽々と俺の腕を握る手を離した。
 俺は痛みを飛ばすように手首を回す。
 だが、痛みはとれない。当然の事だ。俺はそんな動作をしてる場合じゃないと思い、痛みを我慢しながらも学に話しかける。

「どうしたんだ?」
「……」

 だが、学は何も言わない。記憶が飛んで殺人鬼にでもなったのか? なんて、考えていると俺の足元近くから声が聞こえてくる。

「キャハハハ! 愉快愉快! そいつは私が洗脳したよ! どうするかは自分で考えな! アヒャヒャヒャヒャヒャ」

 と、嘲笑うかのように爽快に笑う。
 こいつ、マジで腹立つな! 俺達はこの迷惑魚と戦わなくてはいけないようだ。

 ――俺達は学を助けられるのだろうか。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

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