異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

帰れない

 ――柔らかくて甘い。なんだか懐かしい味。

「この卵焼き美味っ!」
「だね! 鈴奈天才! 私も甘いの好きになっちゃった」
「嬉しい。結構、頑張ったので……でも一と作ったんですよ?」
「はーじーめー君! 私と遊ぶのはあんなに嫌がったのにぃ……」
「ごめんなさい。暇だったんですよ……」
「暇だったから……」

 2人は怒っていた。なんで修羅場になってるの!? なんかすみません。

「おい!」
「痛っ! 翼なんで叩いてくるんだよ」
「俺だっていちゃいちゃしたいぞ!? 学と悲しく飯を食べようとしたら景色に見とれてやがるし。おい! 遠足でぼっちは辛すぎるからやめろ!」
「皆で楽しく食べましょう!」

 まぁ、なんだかんだ和気あいあいと食べる事が出来た。
 俺のメンタルを抉るような会話もあったけど……

「この『汚い』おにぎりなんだよ!」
「お前が雑に持ってきたから『汚い』んでしょ」
「っせぇ! 『汚く』して悪かったな鈴奈」
「……」
「ほら……酷く言うから鈴奈ちゃん泣いちゃったじゃんー」
「あ、あの、それ俺が最初に握ったやつです」

 その後、めちゃくちゃ馬鹿にされた。みたいな事もあったけど楽しかったからこれはこれで良しとしよう。

「じゃあ、そろっと帰りますか」
「だねー!」
「山は降りるまで、ですから油断は大敵ですよ」

 ……何と勝負するんだよ。
 俺達は落ちた吊り橋のある所まで来た。

「……渡れます?」
「簡単じゃないの?」
「え?」
「お先ー!」

 隣にいた陽葵さんは助走をつけ跳ぶには距離がある……というより、普通の人間じゃ絶対跳べないくらいの崖を超えていった。

「あの……俺らじゃ無理じゃないですか?」
「大丈夫」
「大丈夫ですよ?」

 これは……また、俺と翼が取り残されるパターンか。
 鈴奈は植物の茎のようなものを橋のようにして渡る。学さんはボトルを綺麗に崖に嵌めてその上から渡る。

「「あのー……俺達も乗っていいですか?」」
『重量オーバーです』

 鈴奈の茎は耐久無さそうだからわかるんだ。でも、学さんのはいいだろ……

「ちょっと2人ともー! 早くしてー! 置いてくよー!」

 待て! 鬼畜か。置いていかれたら確実に死ぬ!

「おい……俺は山に有効そうなスキルはないんだ……」
「俺も同じ……いや、どこでも有効なスキルはない」

 自分でいっててなんだか悲しくなってきた。

「あのー! 大変言いづらいんですけどー! 俺ら渡れませーん!」

 俺は聞こえるように大きな声で言う。

「……分かったー! 待っててね」

 陽葵さんがこっちに戻ってきた。陽葵さんは俺と翼を順番に抱えてあっちに持っていった。
 普通は逆だよな……情けない。

「ありがとうございます」
「いいのっ! いいの!」
「あ、そうだ! 私にいい考えがる! 山といったら熊ってイメージが勝手ににあるから歌でも歌わない?」

 と、鈴奈は言う。確かに熊とか面倒臭いしな。陽葵さんがやけに拳を見てるのが気になるけど出てきたら余裕でぶっ倒すよ。っていうアピールなのかな?

「いいね。楽しそうだから歌うか!」

 と、順番に歌う。最初は鈴奈が歌っていたあっちにいた頃のJ-POPか何かだろうか。
 次に俺が歌った。アニソンを歌った時のポカーーン。とした感じがまたなんとも言えなかった……。

「次は私が歌いましょうかね。皆さんあまり知らないかもしれないので途中から歌います」

 学さんか。このかっこいい大人系の声で何を歌うんだろ。知らないだから……萌えソングとかだったら面白いな。
 ふっ。と息を吐き。一気に息を吸い込む。

「お父さん、お父さん!
魔王のささやきが聞こえないの?
落ち着くんだ坊や
枯葉が風で揺れているだけだよ」

 ……どっかで聞いたことある。音楽の時間……?

「ストップ! ストップ! 急に魔王を歌いだすな!」

 おー。翼のツッコミ珍しい。新鮮な感じでいいな。

 グラグラグラドスーン

「え? 今、何かの音がしませんでした?」
「も、もしかして魔王の封印を解いたのね!?」

 ザザザザザッ

「なんか近くなってない?」
「近くなってる……」 

 魔王と戦闘なの!? RPGでいつたらレベル23くらいだから確実に負けイベントじゃないか。

「コエガシテキタカラナ」

 この声どっかで聞いたことあるような……

「陽葵さん! 何かあったら1人でワンパンですよね!」

 急に陽葵さんに振るクズの鏡に俺はなっていた。男が女性を盾にするって……

「オマエラヘノリベンジサセテモラオウ」

 リベンジって誰だっけ……

「おいおい! リベンジって誰だよ。頭大丈夫か?」
「オマエハアノトキノバカカ」

 ……ってことは

「「クズリリーだな!」」
「コエガキコエテキタカラキタ」

 どうやら、知能があるということで因縁の相手とかは覚えているらしい。あれって、この国の姫とかに命じられてたんじゃないのかよ……逃がされたって感じなのかな? で、熊だしー。山に帰るかー。みたいな感じなのかな?

「鈴奈! あんたの作戦のせいでピンチじゃねぇか!」
「弁当で許して……」
「まぁ翼さん。そんなに言った所でどうしようもありません。倒すしかないんですから」

 ……翼。お前、偉そうに言ってるけど今度こそ金に釣られるなよ。
 どうやら、俺達は遠足中にも関わらず戦闘シーンがあるみたいだ。
 あれ……遠足だっけ。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能)

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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