異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

ラストスパート

 うわぁぁぁ! この人達、どんだけ能天気なんだ!
 俺達は吊り橋が落ちた事を全く気にせず、頂上まで残り階段のみとなっていた。

「いぇーい! 後、この階段だけー」

 頂上までの階段は後、100段程度だろうか。

「なぁ、どうせなら誰が早く登れるか勝負しないか?」

 こいつ、何言ってんの?
 俺から見える階段はどう考えても横の幅が1人分しかないんだが……

「おいおい。どう考えても1人しかこれは通れないだろ」

 と、俺は階段を指す。

「隣に渡る場所あるじゃねぇかよ」
「んー……確かに面白そうね!」
「私も賛成ですよ。落ちても草むらですもんね」

 この階段は崖に囲まれている感じだった。結構、長い神社の階段みたいな感じね。崖の下はこの風景に合わないくらいの草原だけど。落ちてもいいように……ってか、全然嬉しくないわ!
 それより……こいつら何言ってんの? 翼が言ってたのはこの崖だよな……頂上まで結構あるぞ? 後、名前分からないけど崖登る道具もないじゃん。
 どうやら、俺はまたこいつらの超次元ゲームに付き合わされるみたいだ……せめて普通に飯食べようよ。

「じゃんけんするぞー!」
「じゃ、じゃんけんですか……」

 鈴奈はビクビクしていた。いや、手を出してる時点で普通のじゃんけんだろ……それが怖いのかもしれないけどさ。

『じゃんけん! ポン!』

 その後、数々のあいこを繰り返し俺はまたも『主人公補正』を使用し、普通の階段を上れることになった。

「っしゃぁ! 死にたくないしな……」
「この程度で死ぬわけないじゃん……ぷぷっ」

 鼻で笑ってきた。流石超次元ってところか。
 その後もじゃんけんは続く。次に勝ったのは翼。その次は学さん。3番目に勝ったのは陽葵さん。最後は鈴奈といった感じだ。

「まっ、負けた……陽葵さん流石ね……」
「ふふっ。私の力にひれ伏しなさい」

 勝った人から俺の左右2人ずつで場所を決める。
 一番左から学さん。鈴奈。翼。陽葵さん。といった感じだ。

「どうせやるなら何か賭けないか?」
「負けた人はぁ……卵焼きなし!」
「卵焼きなしって……陽葵さん子供じゃないんだから」
「いいのっ! 卵焼きこそ至高よ!」
「皆さんの実家の卵焼きは甘かったですか? しょっぱかったですか?」
「私は甘かったですよ……」

 と、浮かない表情をする。

「鈴奈、具合でも悪いのか?」
「そうじゃないです」
「あひゃっ」

 俺は脇腹をつねられた。気に触ることしちゃったかな……あ、弁当……つまり学校。これ以上言うのは頭の中とはいえ可哀想だからやめておこう。

「俺はしょっぱかったぜ」
「私も……うっ」
「なんでそんな顔するんだよ! ふざけんな!」
「ちなみに私もしょっぱかったですね」
「俺は甘かったです。卵のふわふわにはやっぱり甘いのが合うでしょ! ねー?」
「そうですよねー!」

 と、鈴奈と手を合わせて喜ぶ。結局、皆卵焼きは大好き。という事だ。

「わ、私の現実世界に戻ったらやることランキングが増えたわ……」
「そろそろ勝負と行くか!」

 きゅ、急だな。

「よーい! ドン!」

 一斉にスタートする。と、いっても正規の方法で登ってるの俺だけなんだけどね。
 俺は階段を1段ずつ着実に進んでいく。
 ん、隣からワインが降ってきているような……。

「私の勝ちですかね」

 そこには巨大なボトルに乗った学さんがペットボトルロケットの要領で飛んでいた。
 どこまで小学生を貫く気だ! ツッコミたいが疲れるのでそんな余裕はない。下手したら卵焼き食べれなくなるし。

「あんなの、反則じゃねぇか!」

 未だに登れていない翼が喚く。『弱い犬ほどよく吠える』とは、言ったものだ。こういうのの事だな。階段を上ってる俺が偉そうに自己満足をする。

「自分で作ったの食べれるー!」

 次は鈴奈だ。って……なんで浮いてるの!? 陽葵さんは巨大フィルムケースのようなものに乗っていた。
 こっ、これは野菜ロケット!? 

 ――あれは……小学校6年生の頃だった。

「やっ、やべぇ! 自由研究が終わらねぇ! どうにかしないと……」

 俺はネットサーフィンの様に自由研究関連のサイトを調べまくっていた。

「こっ、これだぁ!」

『野菜ロケット』これなら、楽しそうだし俺でも出来るぞ!
 俺は必死にどの野菜が1番飛ぶのか調べた。お陰で庭が野菜のカスみたいなやつまみれになったけど。

 って、ことはぁ!?

『野菜のカスが頭上に降り注ぐ』
 俺はお得意の焦がし焼きマスターを駆使し見事に野菜のカスを全て燃やした。

「ふぅ。どんなもんだ!」
「私もうゴールしてますー!」

 頂上から叫んでいた。……くそ!
 残すは3人。
 卵焼きが危うくなってきたぞー……。
 でも! 翼はまだ登ってないし。頂上もどんどん近くなってるし。恐らく、40段くらいだろう。
 すると、下から悲鳴と物凄く重いものが下に落ちたような音が聞こえてきた。

「わぁっと! 危ないんだよ! 馬鹿か!」

 そうだ。まだ1番のぶっ壊れが残っていたんだ。
 陽葵さんは山をパンチで崩していた。

「階段がないなら作るのみよ! 君には負けないよ!」

 いや、もうレベルが違います。
 陽葵さんはみるみる山を崩しあっという間に頂上まで登った。

「ふぅ。私に掛かればこんなものよ!」
「早すぎんだよ!」

 残り30段くらいだな。
 疲れた……。でも、休憩してたら卵焼きが! 遅そうだし少しの休憩くらいなら。

 ……ドスドスドス

 翼が登り詰めていた。

「相手のコースに入ったり妨害してはいけないなんてルールは無いはずだ!」
「……わっと! 危ない! やめろ!馬鹿かお前は」

 下から尖ったものが飛んでくる。尖ってる魚だから秋刀魚か何かだろうか。
 なら……これだ!
 もう1回飛んできた。

『焦がし焼きマスター』

 俺はその魚を燃やす。

「ニャー!」

 翼が飛んできた。猫のように落ちた魚を食べていた。その、魚を食べていた事により俺は見事に勝利した。

「馬鹿め! そんな焦げた魚を」
「くそ……くそっ! 焼いた魚なんて久しぶりに見たからって……」

 って、景色。景色。

「うおおおお! すげぇ!」

 右に流れる壮大な滝。その水しぶきを受けているのか輝いている木々。俺らの前を通る鳥達。
 凄く良い景色だ……。

「あー暑い暑い。そこの木陰で食べよっか」
「いいですねー!」
「暑っ!」
「景色綺麗だなぁ……」

 学さん以外小学生か! 本当に。景色見に来たんじゃないの? 結局、食べたいだけかよ! 頂上に登ったー! とか、そういう感じはないの?

「学さん。景色が綺麗ですね」
「凄いですね……この景色を見ないなんて……」
「まぁ、言っても無駄ですよ。来て良かったですね」
「ええ」
「2人ともー! そんな所につっ立ってどうしたのー? 早くご飯食べよー!」

 俺は陽葵さんにウエットティッシュと箸を渡され昼食を摂ることにした。

 ――俺はこの時、景色の綺麗さで吊り橋が壊れていることを完全に忘れていた……。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能)

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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