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sun

動き始める時間



 「ふぁ~、大分疲れましたね~」
 「そうねぇ、でも中々良い試合だったじゃない」


 ——ここはとある室内



 二人の男女?は、今日の出来事について振り返っていた。


 「予選の時にはまさかあんなに激しいものになるとは私は予想していませんでしたよ。イベントでゲットする他にボスモンスターを倒したら、その倒した最初のプレイヤーには倒したボスモンスターに因んだ能力のユニークスキルが与えられる」
 「そういえば、予選の時にあのシバの森の王者の能力を使っている子がいたわね」
 「うん、確かにいましたね。だが、それ以外にもプレイヤー一人一人に必ず一つのユニークスキルが眠っている。それを早くも解放させる者たちがいたのは予想外でしたね」
 「アタシも早くても後一か月くらいは先になるかと思っていたわ」
 「早い段階でユニークスキルを目覚めさせるもの達は魂がよほど強靭なのでしょう」

 「あら、二人とも戻っていたのね。今日はお疲れ様」


 と、ここまで話していると後ろのドアが開いて一人の女性が入ってきた。
 その女性は部屋の中央にあるテーブルの椅子に座りお茶を啜り、二人に労いの言葉をかける。


 「私たちはそこまで疲れていませんよ、あなたの方こそお疲れでしょうに」
 「ふふふ、これぐらいどうってことありませんよ」
 「本当に大丈夫無理してない?」
 「心配してくれてありがとうキャサリン、ブランク。でも、私は大丈夫よ」
 「まぁ、あなたがそう言うなら」
 「そういえば、他のみんなは元気かしら?」
 「ええ、元気よ。みんな色々とやってくれているわ」
 「それは良かった。またみんなで集まれるといいですね」
 「全て片付いたらきっと適うわ」
 「そういえば、気づきましたか?」
 「勿論よ」
 「何のこと?」


 試合を見ていたキャサリンは、ブランクが言おうとしていることが分かっているのか、ニヤリと口元を歪ませた。その場にいなかったその女性は何がなんだかさっぱりといった感じに首を振る。


 「今日のイベントでヤーウェ・・・・さんあなたのパートナーの懐かしい力の波動を感じました」
 「……まさかよね」
 「そのまさかよ。私のパートナーの波長も感じたわよ」
 「嘘でしょ?ファルとフェルの?それは本当なの?冗談なら怒るわよ?」
 「落ち着いてください。冗談なんかじゃありませんよ。私たちも最初見たときは驚愕で、危うく実況という立場を忘れるところでした」
 「そう……」


 ヤーウェと呼ばれた女性はファルが動き出したことを聞いて、涙ぐむ。

 
 「でも、彼らが動き出したってことは……」
 「ええ、邪獣達が動き出すわ」
 「こんなところで休んでは居られないわね。それじゃあ私はそろそろ戻るわ」


 そう言ってヤーウェは、お茶請けのお菓子を一つ摘まんで自分の作業へと戻っていった。




 ——遠いある大地にて、一体の邪獣が長き眠りから目を覚ます。



 「この力の波動は……。ググググググ、そうか奴等めついに動き出したか。我らの仲間は未だ目覚めてはおらぬが、封印から解けてまだ時間があまりたっていない今なら我一人でも事足りるであろう……。まっておれ、神獣ども」


 ググググググググと笑いながら邪獣の一体は行動を開始した。


 長き眠りから覚めた、邪悪の化身がついに動き始めた。

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