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[獣姫]マチvs[神速剣]ジーク



 決勝トーナメントブロック第四回戦で行われたアイリスさんとフーガさんの試合は圧巻だったと言える。
 試合自体は一瞬だったのだが、戦闘が圧倒的であった。
 どうやらフーガさんもアイリスさんと同じく氷魔法の使い手のようで、試合開始と同時に氷魔法を放っていた。
 だが、フーガさんの攻撃がアイリスさんへと届く前にアイリスさんから強烈な冷気が放たれた。
 自分が放った魔法を飲み込んで迫りくる猛烈な吹雪にフーガさんは目の前に2mもの巨大な氷の壁を出現させて防いだが、猛烈な吹雪はおかまいなしに、それさえをも飲み込んでいった。
 吹雪の過ぎ去った後には氷に覆われた闘技場と、氷像と化したフーガさんが残された。
 フーガさんが物言わぬ氷像へと姿が変わったことにより試合続行不可能となり、アイリスさんが勝利し次の試合へと駒を進めた。
 客席にいるほとんどのプレイヤーがこの光景に驚愕していたが、私にとっても闘技場を氷で覆ったことには確かに驚愕だった。
 だが、私は勝利したことにも喜ばずにただ無表情でその場を後にするアイリスさんの冷たい感情が宿る冷めた瞳に目を奪われた。

 (……なんて悲しい目をしているんだろう)

 アイリスさんの瞳に宿るこの世界に退屈したような目を見たときに私はそう思った。

 「……」
 「マチ、どうしたの?」
 「ううん、なんでもない!それじゃあ行ってくるね!」
 「そう、ならいいけど。試合頑張ってね!」
 「頑張れよ!」
 「ファイト―!」
 「マチ、負けんじゃねえぞ!」
 「もちろん!」

 考えていても仕方ないと思い、次の試合に備えて思考を切り替える。





 「お前がマチだな」
 「はい。ヒロキの仇は取らせてもらいますよ!」
 「やれるものならやってみるがいい」


 『さぁ、決勝トーナメントブロックの準決勝第一回戦はマチ選手vsジーク選手です!』

 『ジーク選手は第二回戦でヒロキ選手と対戦したプレイヤーですね。あの時はまだ全力ではなかったようですのでこの試合で見れるかとても楽しみです』

 『マチ選手は第一回戦に出ていた子よね。あのときはケモナーたちが騒ぎ出したわね』

 『えぇ、そうですね。今は獣耳とかはありませんが、あれが生えたら上手く実況できるか私、とても不安です!』


 「…えぇー」
 「えらく人気になったもんだな」
 「嬉しくありませんよ…」
 「そうか」

 鼻息荒く解説を行う運営実況者に引いている私のその様子をみて笑うジークさん。


 『それでは参りましょう。決勝トーナメントブロック準決勝第一試合始め!』


 「いきます!」
 「こい」

 ジークさんはその場から動かない。

 「【ストロークファスト】!」

 まずは様子見のため、【《神獣降臨》】を使わないで攻撃を仕掛けてみた。

 「【《神速剣 途逸》】!」

 刀先がジークさんまであと30cmあるかというところでジークさんは高速で刀を抜き放つ。
 ジークさんが抜き放った刀は私の刀の腹に叩き込まれた。
 だが、ヒロキとジークさんの戦いを一度見ているのでジークさんの刀が叩き込まれる寸前には私は刀を手放した。
 支えを失った刀はジークさんの直撃を受け吹き飛んで行った。
 刀を手放したことで、体勢が崩れることなく続くジークさんの攻撃を回避することに成功した。

 「…刀を手放したか」
 「あまり刀は必要じゃないので」
 「そうだったな」

 「【《神獣降臨 フェンリル(獣人型》】!」
 「来たか」

 獣耳と尻尾が生え、若干髪のボリュームが増す。
 そして、瞳がオオカミの持つ鋭い瞳へと変わる。
 客席にいるケモナー達が騒ぎ出す。
 ついでに実況者も騒ぎ出したが、キャサリンさんにどつかれていた。

 「【《双風爪ダブルウィンドクロウ》】!」

 自身の爪に風を纏わせてジークさんへと攻撃を仕掛けた。

 「【《神速剣 途逸》】!」
 「爪はもう一本あるよ!」
 「ぐぁ!」

 片方は【《途逸》】によって弾かれたが、もう片方の爪でジークさんの身体を切り裂いた。
 ジークさんは回避することで直撃は回避した。
 ジークさんは一旦距離を取り、刀を鞘へと戻す。
 その動作を見て私は確信した。

 「ジークさん、あなたは刀を一旦鞘へと戻さないとスキルを発動できないみたいね」
 「……当たりだ。よくわかったな」
 「そりゃ、あんだけなんども鞘に戻してたらわかります」
 「それもそうだな」

 「タネが割れたところで俺は倒せないぞ!【《神速剣 縮地斬》】!」
 「!」

 一瞬にして目の前からジークさんが消えた。
 目の前から突然姿が消えたことには驚いたが、姿が見えなくても問題はない。
 相手の姿が見えなくても相手が動くことで生じる気流の流れを感じとり、相手の居場所を大体把握することが出来る。

 ………今の私は風を司る神獣フェンリルなのだから!

 「そこだ!【《双風爪ダブルウィンドクロウ》】!」

 私は背後・・に向かって両爪を振り下ろした。
 ガキンっ!と私の爪を刀で防ぐジークさんが姿を現した。

 「なぜ俺の居場所がわかった」
 「私の能力の一部で気流の流れを感じ取ることができるの」
 「……スキルではないのか」
 「違う。この姿の能力よ」
 「厄介な能力だな」
 「それはどうも」
 「褒めてるわけじゃ…ない!」

 ジークさんが足払いを仕掛けてきたことにより鍔迫り合いの状態が解除された。

 「【《神速剣 牙竜天睛》】!」
 「させない!【《暴風拡張テンペストオーグメント》】!」
 「なにぃ!っく、風の防壁か!」

 ジークさんの刀が私へと届く前に私を中心として広がる暴風により、ジークさんが吹き飛ばされてスキルは中断された。

 「ならば、このスキルは道を切り開くもの【《神速剣 天衣無縫斬》】!」

 ジークさんが発動させたスキルは私の回りに吹き荒れる暴風の壁を斬り裂いた。

 「風を斬った!?」
 「とどめだ!【《神速剣 牙竜天睛》】!」

 暴風の壁を突破して目前までジークさんが迫り、私にとどめを刺すべくスキルを発動させた。

 「ここで負けるわけにはいかない、私は決勝まで進む!【《双風爪ダブルウィンドクロウ》】【《赤熊の爪レッドウルステアー》】!」

 私は!【《双風爪ダブルウィンドクロウ》】【《赤熊の爪レッドウルステアー》】を同時に発動させた。
 スキルの効果は融合し、赤い爪に風を纏った状態となった。

 「うおおおおおおお!」
 「はあぁぁぁぁぁ!」

 お互いのスキルがぶつかり合い、激しい衝撃波を生み出した。
 お互いのスキルの威力は拮抗し、このままいけば先に力が尽きたほうの負けだが、その拮抗はあっけなく崩れた。

 「なっ!」

 ジークさんの持つ刀が衝撃に耐えきれなくなり、刀が砕け散った。

 「私の勝ちね「【《神風咆哮ゴッドブラストハウル》】!」

 「ぐあぁぁ!」

 至近距離で【《神風咆哮ゴッドブラストハウル》】を食らい、ジークさんの身体はそのまま飲み込まれて消滅した。
 しばらくした後、光が集まりジークさんの身体を再構築し始めた。


 『ジーク選手のHPが全損し、死に戻りが発生したああああ!よってこの準決勝第一試合を勝利したのは マチ選手 だああああ!』

 『ここまで昇ってきたプレイヤー達が繰り広げるバトルは素晴らしかったわね』

 『えぇ、そうですね。最後の最後でジーク選手の刀が壊れてしまいましたが、素晴らしい試合をありがとうございます。さて、次の試合はガルド選手とアイリス選手の試合となります。次の試合は20分間の休憩を挟んだ後、始めたいと思います』





 




 

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