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予選ブロック



 イベント開催当日。


 イベントは昼の12時からスタートなのだが、少し早めにログインしてしまい時間が余ってしまった。今日はレイ達とも待ち合わせをしているため、それまで屋台を見てまわり、時間を潰すことにした。

 イベントに参加しないプレイヤーの多くは参加プレイヤー達の戦いを観戦するか、屋台を出すかのどちらかである。屋台を出すプレイヤー達は既に開店を始め、競い合ってプレイヤー達を呼び込んでいる。私も匂いにつられ、何を食べようかなとうろうろしていると、競い合うプレイヤー達の声が飛び交う中でひときわ大きい声のする一角を見つけた。気になって覗いてみると、よく見知った人物がいた。

 「ガルドさん、こんにちは~」
 「おう、マチの嬢ちゃんか」

 あれ、そういえばガルドさんってイベント参加者だったはずだよね?と思い気になって尋ねてみた。

 「おう、もちろん出るさ。だが、出番がくるまでここで売るつもりだ」
 「そうなんですか。あ、焼き鳥一本ください」
 「あいよ!ところで、赤熊をソロで倒すくらいなんだ、当然、マチの嬢ちゃんもイベント参加者なんだろう?」
 「はい、参加しますよ。目指すは優勝です!」
 「そうこなくっちゃな。だが、俺もいることを忘れるなよ」
 「勿論です!」

 できればガルドさんとは予選で当たらずに決勝トーナメントで本気で戦いたいなと思った。


 ◇


 屋台を見てまわり、程よく時間も潰れたため、レイ達との待ち合わせ場所である受付前にある広間に来た。

 「マチ―!こっちこっち!」
 「お待たせ―。ごめん、待った?」
 「いや、俺たちもさっき到着したばかりだぜ」

 受付前の広間には、イベントに参加するプレイヤー達が集まっていた。人混みでレイ達の場所が良く見えず困っていたが、レイ達の方から声がかかりそこへいくと既にみんな集まっていた。

 「マチさんも来たことだし、早速行きましょう」




 「はい、皆様の登録の確認が終わりました。では、次にこちらのカードをお受け取りください。カードに書いてある文字が、予選が行われる各ブロックです。ブロックはA~Dまであり、そこで勝ち進むと決勝トーナメントのブロックへと進むことが出来ます」

 受け取ったカードを見てみると、そこには「A」の文字が書かれていた。

 「私はAだったけど、みんなは?」
 「うちはDブロック」
 「私はBブロックね」
 「俺はCブロックだな」
 「俺もCブロックだ」
 「勝ち進むのは俺だぜ!」
 「シュン、俺だって負けるつもりはないぜ」
 「うわっ!こいつら暑苦しい!」

 みんな違うブロック…とはいかず、ヒロキとシュンが同じCブロックで戦うということになってしまった。そんな私の心配をよそに、二人がお互いのこぶしをぶつけ合ってやる気を高め合っている様子を見ていたリンさんが毒を吐いていた。

 「確認が終わりましたら各ブロックの控室にてお待ちください」
 「それじゃあ、お互い頑張りましょう」
 「うん」
 「おう」
 「ああ」
 「ええ」

 そういって、みんなそれぞれの控室へと入っていった。みんながそれぞれの控室へと入っていくのを尻目に私も自分のブロックの控室へと向かった。
 控室はプレイヤー達の熱気とこれから始まる予選への緊張感に包まれていた。予選は順次行われる予定なので、Aブロックである私の試合は一番最初に行われる。慣れないその場の雰囲気にのまれそうになっていると、私の耳に予選を開始するアナウンスが聞こえてきた。

 『まもなくAブロックの予選が開始されます。10秒後、試合が行われる闘技場コロシアムへと転送されます。詳しいルールの説明はそこで行われます』

 アナウンスが終了されるのと同時にカウントが始まり、10数え終わった瞬間に、私は闘技場へと転送された。闘技場は古代ローマの闘技場を思わせる4層のアーチが積層し、大理石で出来た円柱がアーチを挟んで並んでいた。辺りを見渡してみると、プレイヤー達は闘技場に散らばるように配置されていた。観客席の方を見れば、何百人ものプレイヤーで埋め尽くされていた。観客席の中央にあるガラス張りになっている建物があり、その中には二人の人物が入っていて、マイクを持っていることから解説者だと思った。プレイヤー達が解説をすることは難しいし、運営側の人たちかなと思っていると、先ほどの転送前に聞こえてきたアナウンスとは違う別の人の声が聞こえてきた。

 『さぁ、ついに第一回公式イベントが始まったわね!名づけて、青春ガチンコ闘技場バトル!解説はアタシ、運営のキャサリンと』
 『あれ、今回のイベントってそんな名前でしたっけ?。あ、同じく運営のブランクが担当させていただきます』
 『男と男がこぶしで殴り合うシーン…はぁ、想像するだけで最高だわ!』
 『キャサリンさん~、みんなドン引きしてるので早く自分の世界から帰ってきてください』

 そういって、体をクネクネさせて想像しているキャサリンさんの姿を見たプレイヤー達は皆そろってドン引きしていた。闘技場内にいるプレイヤーも同様にドン引きだった。

 『…ごほん、では気を取り直しましてルールの説明を行います。制限時間は30分で使用不可のスキルはなし。闘技場内から落ちても負け、勿論HPがすべてなくなっても負け。勝ち残った勝者2名だけが決勝トーナメントのブロックへと進むことが出来ます。残り2名となった時点で制限時間にならなくても、そこで試合が終了となります。なお、負けたプレイヤーは控室に戻されます。10秒後に試合のゴングが鳴らされたら試合開始となります』

 そして、開始を知らせるゴングと当時に一斉にプレイヤー達が動き出した。

 「へへ、すまないな、ねーちゃん。大人しく落とされてくれや」

 『おおっと!試合開始と同時に女性プレイヤーに男性プレイヤー数名が切りかかっていった!これはせこい!』

 試合開始と同時に私に向かって数人のプレイヤー達が向かってきた。女性である私を倒し易いと踏んで向かってきたのだろう。

 「女性だからってなめてちゃ痛い目みるよ!」
 「なっ!」

 私が腰から刀を抜いて、切りかかってきたプレイヤーの剣を正面から受け止めて、押し返して見せると、そのプレイヤーは力で勝てると思っていたのに押し返されたことに驚愕に目を開いていた。そのまま、がら空きとなった懐に飛び込んで、刀を一閃させてHPを全損させた。

 『なんと!女性プレイヤーがやられると思いましたが、逆に男性プレイヤーの方がやられてしまいました!』

 周りを見渡してみると、こちらへ向かってきていたプレイヤー達が先ほどの戦いをみて、足を止めてこちらを警戒していた。私も出方をうかがっていると突然、こちらに向かって大きな音が近づいてきて、こちらを警戒していたプレイヤー達が一斉に後ろを振り向いた。

 「な、うわああああああ!」
 「ひ、やめ」
 「な、なんだあれは!」

 『おおっと!突然竜巻が発生しプレイヤー達を次々巻き込んでいます!』
 『あら、あれはもしかして二つ名[氷の魔女]さんの攻撃ね』

 プレイヤー達を巻き込みつつ、こちらへ向かってくる氷の魔女が発生させたという巨大な氷の竜巻に向かって私はスキルを発動させた。

 「【《赤熊の爪レッドウルステアー》】!」

 【《赤熊の爪レッドウルステアー》】を刀に纏わせ、向かってくる氷の竜巻に向かって振り下ろした。予想以上の強さに吹き飛ばされそうになりながらも踏ん張り、竜巻と刀がぶつかり合いう甲高い音を響かせた後、竜巻が消滅した。

 「……あなた、おもしろい」

 不意に、後ろから声が聞こえたため体を回転させて刀を突き出すと、氷で覆われた杖で私の攻撃を受けて止め、無表情な顔をした冷たい目で私を見る、私より頭一つ分くらい小さくて氷のような色をした髪を持つ女性が立っていた。

 「あなたが[氷の魔女]さん?」
 「そう、みんなからはそう呼ばれている」

 どんな攻撃をしてくるのかわからず【《赤熊の爪レッドウルステアー》】を纏った攻撃を受け止められたことを内心で驚愕しつつも、それを表には出さずに相手の出方を窺うために警戒した。【《神獣降臨》】は予選ではまだ見せたくない。どうするべきか迷っていると、終了の合図を知らせるゴングとともにアナウンスが聞こえてきた。

 『残り2名となったため、試合を終了します。Aブロックの勝者は マチ選手 と アイリス選手 です。控室に戻った後は観客席で他のブロックの試合を観戦したりして次の試合まで体を休憩させてください。』

 いつの間にか私たちだけとなっていて、決着がつかずになんとも言えない結果となったが、私は決勝トーナメントブロックへと進めることが出来た。

 「……決勝トーナメントでまた」

 終了のゴングが聞こえるとともに、構えを解いたアイリスさんは控え室へ転送後、そう一言だけ呟くと私の前から去って行った。







 

 

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