影に潜む物とゼロの秘策

ービル街ー

アルカと別れたゼロはビル街にて痕跡を消しながら進んでいた
尾行等を気にする理由は簡単なもので妨害役の人に気付かれれば正面戦闘になってしまうからだ

正面戦闘は今のゼロにとって好ましくない、ゼロは基本的に刀やナイフ等の刃物を扱っているが今は『LOVEGUN』と呼ばれる異質な銃を使わなければならない
しかし、ゼロが所有するスキルに銃に関わるスキルは無い…その為、妨害役との遭遇は避けるべきなのだ


ゼロが他のビルに比べて巨大なビルを探索し終えた後、ビル街にクロウディアはいないと判断し別の場所を探そうと移動を開始した時
突然何か巨大な物がずれ落ちる様な鈍い音が背後から聞こえてくる

ゼロが後ろを振り返ると…先程までいた巨大なビルがまるで斜めに切られた様な断面が生まれており重力に従ってビルがズレているのだ
そうなれば、当然ビルは倒壊し目の前にはビルの残骸が広がっている

｢初めまして…そしてさようなら…｣
背後からそう声が聞こえた、次の瞬間にゼロの首と胴を二つに割る様に黒い刀が通り過ぎる…だが、ゼロの首はない為ただ横切るだけであった

｢ふむ…カッコよく決めようとしたが…まさか『魔』の者であったとは…恐れ入った也…其の腕もまだまだである｣
｢失礼、一撃で仕留めるつもりであったが故名乗るのを忘れていたである｣
男はそう言ってゼロの方を向いて一礼する

｢其の名は『ソンブラ』也、汝の命を貰い受ける｣
ソンブラがそう言うと足元の影がソンブラの体を登っていく
集まった影は徐々に日本刀の様な形を成し、余った影は全身を多い装甲となっていた

｢…武器が使えないルールでも関係ないカ…羨ましい限りヨ｣
ゼロはそう言って素手での格闘の為の構えをとる


互いに睨み合ったまま動かなくなった
ゼロからは動けなかった、素手でリーチが短い分タダでさえ不利なのに先に動けば必ず好きが生じてしまうのだ

先に動いたのはソンブラであった
刀を突いてゼロの方へ伸ばすと、装甲に使っていた影を刀に集中させて刀の刀身を伸ばしてゼロを貫こうとする

武器が無く、素手であるゼロには刀を避けるしか対処法がなかった
だが、避けようとしたが…身体が動かなかった

足元を見ると、ソンブラの方から影が伸びてゼロの影に付いているのだ
すると当然避ける事は出来ず、次の瞬間ゼロの胴体を刀が貫いた

｢ふむ…身体は普通なようである…恐らく突きは効くのであろうか｣
｢だが…油断は禁物である…汝が完全に死すまでは攻撃は緩めないし拘束も解くことは無かろう…早い内に死す事を勧めておこう｣




三十分が過ぎた頃、ソンブラも苛立ち始めていた

既にゼロは死ぬ直前な筈なのに…既に虫の息の筈なのにゼロはずっとソンブラの顔を睨み付け不敵な笑みを浮かべているのだ

｢…チマチマと突いているのはどうやら時間の無駄なようだ｣
｢脳天から切り裂こう、既に十二分に時間稼ぎもできたである…ナナシの方も片付けたであろうからな｣
ソンブラはそう言って刀を振り上げ良く狙いを定める

だが…刀を振り下ろした瞬間、教会の方から巨大な爆音が響き渡る
ソンブラは攻撃を中断し、教会の方を振り向くと…火煙が上がっており辺りの木々も燃え盛っていた

｢…この熱気…そして減っている様子からナナシは切り札を切ったという事…か…｣
｢手伝った方が良いか？……そうか…いらぬ世話か…｣
ソンブラが一人でブツブツと呟いている間に、既にゼロの方の準備も整った

｢…オイ…生きてる内ニ…ワタシが正常な内に聞いておくヨ｣
｢クロウディアはどこにいるネ…居場所を言うヨ｣
ゼロはソンブラにそう聞くが…ソンブラは高らかと天に向かって笑う

｢面白き魔の者よ…正気である内に？汝はそこから動く事は出来ないのであるぞ？其を殺す事など到底不可能である｣
ソンブラがまだクククと薄らと笑っていると…今度はゼロが笑い始める

｢そうか…残念ヨ…じゃ、死ぬがイイヨ｣
ゼロがそう言うと急に辺りの空気が重くなる…これは比喩ではなく実際に徐々に重くなってきているのだ
それは急激に空気中の精霊がそこにいる物を押さえ付ける為に権限し空気を重くしているのだ

｢…これは…震えている…精霊達が畏怖している…何が起ころうと…｣
ソンブラが狼狽えているとゼロを拘束していた筈が急に目の前からゼロが消えている

ソンブラはゼロを探す為に辺りを警戒すると…突然ソンブラの身体は数ｍ程飛ばされる
ソンブラは何が起きたのか確認すると…そこにはゼロがいた

｢キル…キル…キルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルｩｩ!!!!!｣
否、正確にはゼロの様な何かがそこにはいた