異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

トシイエの試練と確約された死の呪い

「はぁ~~~…」
ユートは大きくため息をついた
ただでさえ変態紳士ロリコンで面倒な奴だと思っていたが…四賢者となれば関わらない訳にはいかなくなってしまった

「それで?お前は何でこの街にいるんだよ」
「四賢者なんて呼ばれてんだからこんな賭け事なんかに参加しなくても金なんて幾らでも懐に入るだろ」
ユートのその質問にトシイエは嫌そうな顔をして答える

「僕だって嫌だ…だけど…バスに命じられたら断れないからさ…」
「実は四賢者…つまりはバス達に加護を受け取った四人は何故か君に試練を与えるか、君を強くするか、君に協力するかをしろって言われてるんだよ…でなきゃ男の面倒を見るなんてゴメンだね」
トシイエはそう言って部屋の隅に置いてあった槍を手に取る

「…面倒…何の事だ?」
ユートはトシイエが最後に行った面倒を見るという言葉に違和感を覚える

「こういう事だ…よっと!!」
トシイエはそう言って手に持つ槍の周りに風を竜巻状に纏わせた後、ユートに向けて槍を突く…ユートは殺気を感じてとっさに横にかわす
すると、纏っていた風が強い空気の渦を作り出し、壁にまるで細いドリルで削った跡の様な穴が出来上がった

「まだまだ行くぞ~」
トシイエは今度は持っていた槍をユートに向かって投擲とうてきする
槍の先端がまるで木の枝の様にどんどん刃の部分が枝分かれしていき、部屋の壁スレスレに至るまでに刺突部分が増殖した

逃げ場を失ったユートは『感性強化センスアップ』を限界まで自身に付与し、自身の感覚をまるで周りの時間の凝縮されたかの様に錯覚する程高めて槍の隙間を探して避ける

「何すんだ!殺す気か!」
ユートは抗議しようとトシイエに近付くがいつの間にかトシイエの手は新たな槍を手に取っておりまた投擲を始めてきた

「良く聞けよ~…これからお前がリリカちゃんの退室許可を得るまでこうやって絶え間無くお前に攻撃を続けるが次からは『スキル無し』で避けるなり裁くなりしろよ」
「もし使ったら『魔神封印術式クローズ・リ・コフィン』から一生出れないからな~」

トシイエの急な宣告に戸惑いを隠せないユートだが…今はとにかく目の前の槍を対処しなければならない為長い間反応する事は出来なかった

ユートは飛んできた槍の下に潜り込み回避した後
壁に突き刺さった槍を抜いて持ち上げようとするが…重すぎて持ち上がらない…持ち上げようと精一杯力を入れている間にまた追加で槍が飛んでくる

「くそっ…こんなクソ重い槍を軽々と持ち上げて投げるなんてどんだけ馬鹿力なんだ!」
ユートはそう文句を言いながら飛んできた槍を右に左にかわしていった




二十分後、ユートは完全に疲弊しきっていた
既に左肩と右足のモモを貫かれておりその穴から向こう側が見えている
視界が霞み、意識が朦朧モウロウとし始めてきた

「どうした?この程度か?所詮お前も魔法やスキルに頼りっきりの雑魚ザコだったのか…」
「もういい…お前はここで死ね」
トシイエはそう言って血のように鮮やかな赤い槍を出現させる

「これはお前も知ってるだろうが『ゲイ・ボルグ』という槍だ」
「『掠っただけで死ぬ』…今のお前じゃあ避けられないだろ!!!」
トシイエはそう言って投擲のフォームを作るとゲイ・ボルグが赤い光を放ち出す

「これで終わりだ『確約された死の呪いゲイ・ボルグ』」
ゲイ・ボルグは真っ直ぐにユート目掛けて飛んでいく

ユートは目を瞑った…死を覚悟したのだ
刹那…本当に刹那の瞬間…ユートの中の何かが音を立てて崩れ落ちた…

だが…崩れたのはユートのトシイエに対する敵意等という物ではなく…
壁…ユートの中の壁が崩れ落ちたのだ

ユートは、咄嗟トッサ足元に落ちている槍を一つ持ち上げると…その槍を『ゲイ・ボルグ』目掛けて思いっきり投げ付けた
すると、ユートが投げた槍はまるで白い炎と黒い炎とが絡み合う様に螺旋状に燃え上がりゲイ・ボルグを迎え撃つ

そして、ユートが投げた槍はゲイ・ボルグを地に落としトシイエの心臓目掛けて突き進んだ
トシイエは飛んできた槍を受け止めようとしたが…あまりの勢いに受け止めるのは不可能だと判断したトシイエは避ける事しか出来なかった 


「ハァ…ハァ…遂に…か…」
トシイエは紙一重で槍を避けた事での疲労感が全身を襲う

トシイエはユートに対して声をかけようとしたが…
ユートは既に床に倒れ込んでいた

「…仕方ないなぁ」
トシイエはユートを持ち上げてソファーに寝かせる事にした

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