異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

固有スキルと第2ラウンド

互いに見合ったまま動かない
否、動けない…なぜなら動く瞬間には必ずどこかしらに隙が生じる為迂闊に動く事が出来ないのだ

そんな中で先に動いたのはユートだった
このまま睨み合いを続けていても埒が明かない為、きっかけ作りに先に動き獣人族の男の懐に潜り込んだ筈だが…何故か目の前の獣人族の男の姿が消え背後に回られた

目で追いきれないスピードでは無かった為見失う事はなかった物の目が追いついても体もそれに着いて行くとは限らない…その為獣人族の男の渾身の蹴りを脇腹にモロに食らってしまった

ユートはまた二三m程蹴り飛ばされるが何とか受け身をとってダメージを最小限に抑える

「中々やるなお前…素手でさらに魔法を使ってくる気配がない奴に魔法やスキルを使うのは大人気ないと思って使ってなかったが…そうも言ってられなそうだ」
ユートはそう言って劣化のスキルは発動したまま『肉体強化グロウアップ』のスキルを使い身体能力を向上させる

「小生は使わない訳ではござらん…小生には魔法の適性が無いのでござるよ…だが…小生は魔法は使えなくてもこの肉体があるでござる!」
獣人族の男はそう言ってランカ達の制限リミッター解除と似たような技により全身の血流を普通よりも早いスピードで循環させる

ユートは獣人族の男の変化にすぐに気付く
普通ならば攻めて攻撃の隙を与えさせないか…防御に徹して相手のスタミナ切れを待つのが定石だが…ユートがとった行動はあえて己の急所を晒したのだ

「…混乱させるつもりなのでござろうが…小生には無駄でござる!」
獣人族の男はユートのあからさまな誘いに身を投じ、心臓の上にある肋骨部分を殴り抜ける

ユートがなぜ隙だらけにしたかと言うと…
実は、ユートが発動した魔法は『肉体強化グロウアップ』だけではな…自身に『空気の鎧エアバック』を発動して獣人族の男の攻撃を跳ね返そうとしたのだった

だが…次の瞬間ユートの体は十数m吹き飛んでいた
ユートは何が起きたのかをわからず受け身をとるのを忘れて地面に対して激しく転がり続け…遂にはユートの首は折れてしまった

ユートの首は180度回転して両手足の関節も変な方向へひん曲がっている…ユートの心音も完全に聞こえなくなっていた

「小生は確かに魔法適性は無いでござるが…」
「小生には『魔法消滅マジックキャンセラー』という固有ユニークスキルを持っておったのでござる…」
獣人族の男はユートに近付きそう告げながら合掌してユートに祈りを捧げる

「…もし敵で無かったのなら共に貴殿と歩みたかったものでござる」
獣人族の男はそう言って先程、ユートから教えて貰った館まで歩き出す

「……成程…固有ユニークスキルか…それは予想外だったな…現に俺は一回死んでしまった」
獣人族の男は声が聞こえたユートの死体があった場所に振り返ると…
そこには全身の関節が元の方向へゴリゴリと音を立てながら戻っていくユートの姿があった

「よく聞いておけ…この世界で今後生きていきたいのならば死体の処理を怠らない事だ…髪の毛の一本たりともな…今の俺の様な奴がいて静かに首元を掻っ切られるからな」
ユートの関節は完全に元通りになりさらに髪の色が変化していきながら急速に伸びていく…額から二本の角が生えてきた

「バカな…確かに貴殿の心音は活動を停止して明らかにその姿も死体そのものであったでござる…貴殿は妖の類であったでござるか…」
獣人族の男はそう言ってユートの『変身』に警戒を怠らずに自分の戦闘の型を作る

「確かに死んだ…だが俺には死ぬ事によって発動するスキルがある」
「その名も『転換スイッチ』だ…これにより俺は本来の姿を取り戻す…普段からこんな姿じゃあ子ども達に嫌われちまうからな」
ユートはそう言って手の指の関節や首の関節をポキポキと鳴らした後に獣人族の男に質問を投げかける

「何故こんな事をした?誘拐って何の事だ?」
ユートのその質問に獣人族の男は聞く耳を持たずに再度ユートに突っ込んでいく…

確かに獣人族の男の固有ユニークスキルの『魔法消滅マジックキャンセラー』によってユートが幾ら高度な防御魔法を展開してようと獣人族の男にとっては藁の楯同様である為に突っ込んだ…突っ込んでしまった

「聞く耳持たずか…仕方ない…一旦大人しくさせるか…」
ユートはそう言って獣人族の男の腕を掴みあげて投げ飛ばす

「さぁ…第2ラウンドを始めよう……俺を退屈させるなよ?」

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