異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

ディオニスと女の七変化

ーユート視点ー

「ユートさん!?なんでここに…」
リーザスが慌てている

「ん?イリーナ、リーザスに教えてなかったのか?俺達はずっと陰ながら見てるって」

「あっ……いや別に忘れていた訳ではないんだ…その……」
イリーナは俺から視線を逸らす

「イリーナ…帰ったらお仕置きだ」
俺は満遍の笑みでイリーナを見る
まぁ、俺の目は笑ってないと思うが…

「冒険者ユートよ、久しいな」
ディオニスが俺に声をかける
除け者にされていたのを気にしてか少し強めの声で

「久しぶりディオニス、体調の方はどうだ?」

「よせユートよ、お主は世間話をしに来たのではないのは既に知っているのだ、早く要件を言わぬと牢屋にぶち込むぞ?」
おぉ怖い怖い

「まぁ俺達が来た目的の一つとしては、さっきガモウが言ってた俺とアルカ、ドーラ、イリーナの指名手配を解除してほしい」

「目的の一つ?もう一つはなんだ?」

「カリス国との強固な同盟、そしてこの国の永住権の確保だ」
俺がそう言うとディオニスは難しい顔をする

「ふむ…ユートの永住権の事は速やかに遂行できるが…前半二つはきびしいなぁ」
ディオニスが髭を撫で下ろしながら俺を見つめてくる
……なるほど…まぁ別に良いだろう

「それじゃあ俺達が出すチップは、正直に言って金は無いし俺にはA級冒険者という称号だけだ」
「★Ⅸクエスト二個でどうだ?一つの頼み事につき一つだ」
俺がそう言うとディオニスがニヤリと笑う

「良いだろう、仮にそうなった場合はお主はS級冒険者となるが構わんか?」
ディオニスが最後の警告と言わんばかりに強く聞く

「まぁ仕方ねぇよな」
俺のこの一言でディオニスは部屋を出ていく

「明日には指名手配の件は終わっていよう、楽しみに待っていろ」
と言い残して……



「ユートさんの凄さを改めて実感しました…あのディオニスとほぼ対等に交渉するなんて…」
リーザスは口を開けて驚いていると

「対等?そんな訳ないだろ…常に俺が下手だったよ」
俺はイスに座り込み頭から煙を出す

「ユート殿、焦りは禁物だぞ」
イリーナがお茶をいれてきてくれた

「ありがとうイリーナ、お前は気が利くな」
しかも中々美味いな、俺はどちらかと言えば紅茶は苦手なんだが普通に飲めるな

「それでユート殿、★Ⅸクエストにはいつ頃出発するのだ?」
ガモウがなにやら不機嫌そうにイリーナを睨みながら俺にたずねる
おいおい、イリーナが引いてるぞ

「いや、俺の★Ⅸの件はディオニスが俺の要求を全て達成させてからだ、そこの所はディオニスは解ってくれてるさ」
「それじゃあ…次行きますか……」
俺は背伸びをしながら立ち上がる

「あぁそうだ、侍女さんはもう下がって良いよ、俺達はこのまま出るから」
そう言うと侍女達は部屋から出ていった

「それで?次はどこへ行くの?」
リーザスが少し食い気味に聞いてくる

「ん~…次の場所はイリーナとリーザスをカリスに送ってからにしようかな」
俺がそう言うとイリーナとリーザスはショックを受けたのか後退りをする
……ガモウはなんでそんなに嬉しそうにしてるんだ?

「なぜだユート殿!私達では不安があるのか!」
イリーナ落ち着けって…いや…あの…肩から手を離してほし……

「次の目的地はヴィクトリアだからだ、お前らも行きたくないだろ?」
俺がそう言うとイリーナによる揺れがおさまる

「そうか…次はヴィクトリア王国なのか……」
イリーナは俺から手を離し頭を抱える

「……私は遠慮しとくわ」
リーザスは流石に付いて行かないらしい

「…私は行こう、ユート殿の側に付いていたい」
イリーナは決意した顔で俺の手を握る

「俺も……」
ガモウもついて行こうとしていた様だがリーザスに肩を掴まれる

(ガモウ、私を置いてどこへ行こうと言うの?)
リーザスが小声でガモウに語りかける

「嘘だろ…」



先にリーザスとガモウをカリスに返す為に転移ワープする

「私はもう部屋で寝てるわね…おやすみなさいユートさん…」
リーザスはフラフラとした足取りで寝室へと向かった

「……あの様子だとリーザス様が心配だ、寝室まで送ってくる」
ガモウもリーザスに付いて行った

「さてと…それじゃあ行くかイリーナ」
イリーナの方を見るとやはり顔色が悪い

「…なぁイリーナ、別に無理して来る事はないんだぜ?」

「だ…大丈夫だユート殿…妻としてユート殿の側を離れる訳には……」
イリーナの顔色がより一層悪くなる、このままだと危険だな

「ごめんイリーナ…」
俺は催眠魔法をかけてイリーナを眠らせる

安らかに眠れスリープタイム
闇属性魔法の一つの催眠魔法
対象者の眠りを誘う
術者の加減によって眠りの深さは変わる

リーザスもガモウもいなしいな…
「パサルー、ちゃっとイリーナを寝室に連れて行ってほしいんだがー」

「そんなに呼ばなくてもずっと後ろにいたわよ?」
パサルの声が背後から聞こえる

しかし、振り返ってもパサルの姿は無かった
「流石に私でもそんな風に無視されたら悲しむわよ~?」
目の前にいる清楚な感じの女性が口を開く

「いやいやいや…パサルはもっとラフな格好で、さらに言えばそんな清楚な感じの服とは無縁の奴だぜ?無いないない」
俺がそう言った直後、ナイフが俺の頬に切り傷を付ける

「これで解った?」
パサルがナイフを片手に舌を出す

「はい、あなたはパサルです」
女性は化粧一つで変わるってのは本当だったな



「……事情は解ったわ、それじゃあこのイリーナちゃんをお客様用の寝室に寝かせておけば良いのね」
そう言うとパサルはイリーナを抱えあげる

「流石の筋力だな」

「まぁね、これくらい出来なきゃ私達はお払い箱だしね」
パサルは一瞬暗い顔を見せたがまたいつもの表情に戻る

「それじゃあユートちゃんは次で最後の仕事?」

「まぁな、なんでいきなりちゃん付けで呼んだんだよ…」

「さぁ?気分の問題よ~」
クスクスとパサルは笑いながら去っていった

「まったく……それじゃあ行くか…」
俺は最後の仕事を果たす為、ヴィクトリア王国へと転移した

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