異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

アルカの決意と死刑宣告

「リリカちゃぁぁぁぁぁぁん!」
アルカの声が焼け野原となった港を駆け巡る

しかし、その問いかけに答える声は無い
現実は残酷である

「ねぇドーラ…ユートに頼めばリリカちゃんも生き返りますよね…リリカちゃんと…また…会えますよね…」
アルカは膝から崩れ落ちた体制でドーラに問いかける
その声は泣いているせいか掠れていた

「……アルカ様…いくらユート様でも…死んだ人間を蘇らすのは…不可能だと思います」
ドーラはアルカの質問に答えるのは胸が苦しかった
アルカの答えを否定するのは自分が考えている事も否定するからだ

「そう…ですよね……」
アルカは俯き泣き叫ぶ

「アルカ様、あれって…」
ドーラがそう言って指さした方を見ると
そこには氷漬けにされている何かをある

それはリリカのロケットであった
アルカがそれを拾うと誰かの声が聞こえる

『アルカお姉ちゃん、勝手に逝ってごめんね…』 
『アルカお姉ちゃん、最後に私に言ってくれた言葉凄く…嬉しかったよ…あんな事言われたの…生まれて初めてだった…』
『私はもう死んじゃったけど…一つだけワガママを言っても良いかな…』
『このロケットを…大切に持っててほしいんだ…私とお姉ちゃん達との…思い出の品だから…』
『最後になりますが…アルカお姉ちゃん…大好きです…』

声はそこで途絶えた

「ねぇドーラ、今の声聞こえた?」

「え?声っすか…別に何も聞こえてないっすけど…」
どうやらドーラは聞こえて無かったみたいだ

「行こうドーラ!ユート達が待ってます!」
アルカは立ち上がり笑顔を見せる
そのまま集合場所へ走り出す

「えっ…あ…はいっす!」
ドーラはアルカの後をついて行く



そんなアルカ達をずっと見つめてる影が一つ
「……面白い少女達だ、これからも観察を続けるとするかな」
影は倉庫の闇へと消えていった




ーユート視点ー

「はぁ…はぁ…ユート殿…もう…魔力が切れて一歩も動けない…」
イリーナがその場で倒れ込む

「どうしたどうしたぁ?まだまだお前の限界はこんなもんじゃないだろぉ!こんなんじゃ黒幕の野郎に殺られちまうぞ!シャキッとしろぉ!」
俺は某熱血テニスプレイヤーの如くイリーナをシゴいていた

「ほらもう1セットやるぞー!」
俺は火球フレイムボールを大量に作り出しイリーナへ向けて撃ち出す

「『ー火の玉地獄フレイムジャグリングー』!!」
そしてイリーナはなんとか立ち上がり防御魔法を発動させる

「ま…『魔法障壁マジックバリア』」
イリーナはギリギリのタイミングで展開できた
しかし、本当にギリギリに発動したので反動があまり殺せなかった

イリーナは数m飛ばされる

「もうやめてぇ、ユートさん!」
リーザスが俺にしがみつく

「ハ☆ナ☆セ」

「もうイリーナの魔力はとっくに0よ!もう訓練は終わりにしましょう!」

ふむ…確かにそれもそうだな
これ以上やったらイザという時に
「魔力切れ…やっちゃったぜ☆」
なんて事になったら元も子もないからな

「それじゃあそろそろ集合場所に行くぞ」
俺は飛ばされたイリーナに手を貸す

「すまないユート殿、ところで魔力が回復できるアイテムを持っていないか?」
イリーナはなんとか立ち上がってはいるが 
その足は生まれたての小鹿の様であった

「いや、アイテムは無いんだが…回復する方法はあるぞ…ただ…この回復法は…」

「手段は何でも構わない…今は一刻も早く魔力を補充したければならないのだ…」

「……恨むなよ」
俺は一言そう言うとイリーナとの顔の距離をつめる

「え?ユート殿…一体何を……」
イリーナが言い終わる前にその行為は始まった
接吻である

「ウッ…ンン…クゥ……」
イリーナに俺の魔力を注ぎ込む

二、三分程その行為をした後、顔を離す

「ふぅ…結構送り込んだが…どうだ?」
ユートがそう言うと、イリーナは顔から煙を出して倒れてしまった

「あれ?イリーナ?…注いだ魔力量が多かったか?」
俺はイリーナが倒れた理由が解らずリーザスに聞こうとしたが、リーザスも顔から煙を出して倒れていた

毎晩の様に一緒に寝てるのに、今さらなんで狼狽えてるんだ?

仕方なく俺は二人を担ぎ集合場所である噴水広場へと向かった



噴水広場に行くと既にそこにアルカとドーラが来ていた

「おぉ、お前らが早く来るなんて珍しいな」
俺はいつもの様に声をかける

「そうですか?別に普通ですよぉ」
アルカは満遍の笑みで俺の言葉に反応する

しかし、ドーラは黙っていた
いつもなら
「ドーラはいつも規則正しくユート様に這い寄るこんとn…これ以上は言ってはいけないような気がするっす」
って返すと思うんだが
まぁいっか、些細なことだろうな

「それじゃあ、これからカリス王城に先入するぞ」
「潜伏スキルを持ってないドーラは俺の魔法『迷彩化ステルス』を発動させて潜入してもらう」

「あぁそうだ、おやつは銅貨三枚までだぞ」
ご定番の挨拶も済ませて…イザ…出発だ

「ユート様…ちょっと離したい事が…」
出発しようとした矢先にドーラに服を引っ張られる

「どうしたドーラ」

「実は…アルカ様から目を離さないで欲しいっす…今のアルカ様は…恐らく無茶をするっす」
ドーラは暗い顔になる
原因は知らないがこの間に何かあったのだろう

「解った、だが俺はお前らから目を離す事はしないさ」
俺がそう言うとドーラはホッとした顔をする

「だからお前らが俺のサイフから金貨十枚を使ったことも知ってるからな…」

「いや…あのっすね…それは…あははは…」

「ドーラ…後でお仕置きな」
俺はニッコリと屈託のない笑顔でドーラに死刑宣告お仕置き宣言をした




さぁ…始めよう……俺を退屈させるなよ?

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