異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

七夕の夜に呪いを解きましょう

「やぁユート君、元気にしてた?」
あー…この軽い感じの声は……

「何の用だよアルト、俺はお前らに用なんて無いぞ」
この虚無の世界は俺がアルト達と会うことを望んだ時に誘われる世界
しかし、今俺は別にアルト達に用は無い

「ユート君、君の世界では今日は『七夕』というイベントがあるみたいじゃないか」
七夕?もうそんな季節になってたのか

「それだけか?なら寝かせてくれ……毎晩あいつらに付き合ってて寝不足なんだ」
俺は口に手を当てあくびをする

「君達も盛んだね♪結婚してからほぼ毎日してるじゃないか」
ほっとけ

「それでね、僕はこの七夕というものはとても素晴らしいと思ったんだ」
「相思相愛の二人が一年に1度だけ出会える日…なんともロマンチックじゃないか♪」
まぁ…そうなったのは織姫と彦星の自業自得だと思うけどな

「こういったイベントの日は君たちの世界ではお祝いをするのだろう?」
まぁ、そうだったな

「そこで僕から君達…下界の人達にプレゼントをしよ「いらん」」
「えーなんでさー!」
アルトが頬を膨らませる

「お前らが関わると面倒な事になると俺の第六感が反応している」

「まぁ君に拒否権はないんだけどさ♪」
「目を覚ましたら枕の下にある物があるからそれがプレゼントだよ♪」

よし、燃やすか☆

「ちなみに処分したら君にあらゆる呪いが襲いかかるから気をつけてね♪」
なん…だと……




目を覚ました
とても憂鬱な朝だ

「ユート殿やっと起きたか、寝不足なのは解るが既に食事の支度はできているぞ」
寝起き早々に嫁の声とは良いものだな
なんかこう…心が落ち着くよ

「先に食堂へ行っててくれ、すぐに俺も行くから」

「そ…そうか?では失礼しよう」
イリーナが部屋を出ていった

俺はすぐに枕を持ち上げ、アルトが寄越した物を確認する

それは七夕と言えばこれだと言える代物
『短冊』であった

「あいつらが普通の短冊を寄越す訳ないしな」
俺はすぐに鑑定眼ステータスチェックを発動させる


[名前] 星降る短冊
[ランク] 神話級
[アイテム説明]
神によって想像された魔法の短冊
これに願い事を書くとその願いが現実となる

特殊効果スペシャルスキル
七夕の奇跡セブンスミラクル


「あいつらが考えそうな事だ、さっさと燃やすか」

俺は手に取り『揺らめく炎フレイム』で燃やし尽くす

すると俺の体が光に包まれる
やべっ!呪いの事忘れてた!

………ん?
特に何も起きてないな
アルトの奴、変に脅しやがって

イリーナ達が待ってるし早く食堂へ行くか
そう思いベッドから降りる時にある違和感を感じた

なんかベッド高くなった?

俺はすぐに部屋にある大きな鏡で確認する
そこには本来俺の姿が映るはずだが…
映っていたのは黒髪ショートの黒目で身長は140cm程の少女…いや幼女がいた

「な…なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!」
声を荒らげるが聞こえるのは俺の声ではなく
声変わり前の幼い声が屋敷中に響き渡る
幸い服は元の服が今の幼女サイズに縮んでいた為裸では無かったが少し違和感があるな


「なにやら女の子の声がユートの部屋から聞こえましたが…ユート!何しでかしたんですか!!!」
アルカが扉を蹴破って入ってくる
それに続いてドーラも入ってくる

「あれ?ユート様がいないっすね、イリーナ様が部屋にいるって言ってたっすのに」
ドーラが部屋を見渡す

「あれ?あの女の子は誰でしょう?」
アルカが俺を発見する

「どうしましたか?迷子になったのですか?」
アルカがしゃがみ込み俺と視線を合わせる

いや…アルカはしゃがんでも、しゃがまなくても目線はあまり変わらないと思うが

「迷子なんかじゃねぇよ、俺だユートだ」
とりあえずアルカ達の変な事を考える前にアルカが考えてる事を否定するが

「そんな事ある訳ないじゃないですかぁ~、冗談が上手い娘ですねぇ」
アルカがクスクスと俺の事を笑う
後でお仕置き確定だ

「冗談じゃねぇよ、ユートだ、神様あいつの呪いのせいでこんな身体になっちまったんだ」
俺はアルカの頬を引っ張る

「痛い痛い!こんな事をするのはユートしかいないのです!じゃあ本当にユート……」
アルカが引っ張られた頬を撫でる

「か…」
「か?」

「可愛いのですぅ♡はぁ~抱きつきたくなりますね♡」
アルカが俺を抱き上げる

「なっ!離せアルカ!」
俺は手足をジタバタさせて振り解こうとするがどうやら力も普通の幼女並みになってる様だ
アルカは冒険者だ、普通の幼女程度に力負けはしない

「ドーラもやるっす!」
ドーラも俺に抱きついてくる

えぇい!離れろ!

「おい、ユート殿の部屋から幼い少女の声が聞こえたから、アルカとドーラに様子を見に行かせてたが…帰りが遅いため見に来たら…なんだその少女は………」
イリーナが壊れた扉の前で佇んでいる

「あっ!イリーナ!見てください!ユートが可愛い女の子になってますよ」
頬でスリスリするな!

「なん…だと……」
イリーナが膝から崩れ落ちる
そうだよ、普通はこんな反応だよ

「くっ…こんなの……可愛がるしかないではないか!許してくれユート殿!」
そう言うとイリーナは俺に向かって飛びついてきた

結果、俺は三人から抱きつかれ可愛がられる

「い……いい加減にしろお前らァァ!」
俺は『スパーク』の魔法で三人を巻き込み、俺を中心に雷を発生させる



「落ち着いたか?」
三人は俺の前で正座をさせている

「「「はい…」」」

「ところでユート殿、なぜその様な姿に?」

「あぁ実はな……」
俺は幼女化した原因を三人に語る
ついでに七夕の事も


「呪いでそんな可愛い姿に……神様には感謝しなきゃですね!!!」
アルカが顔を上げる
俺はそんなアルカを超眼力ヘビにらみで睨みつける
するとアルカはガクガクと震える

「はい…すみません……」
まったく…
まぁ…今回の事は呪いの事を甘く見てた俺の自業自得だしな

「だったらその呪いを解くっす!」
いや、今俺はほとんどの魔法が使えないから解呪が使えないんだが

「餅は餅屋、呪いを解くなら専門家にっす!」
「あのヴィクトリア王国教会シスターのベル様に頼むっす!」
あぁ…俺を神の使徒扱いしてたあのシスターか……
あんな奴で大丈夫なのか?

「教会のシスター位なら死の呪いすらも解けるって聞いた事があるっす!さっそく行くっす!」
なるほど、なら行ってみる価値はあるな

俺は試しに転移ワープを使うと普通に使えたので三人を連れて行こうとしたが
どうやら俺+1名しか転移ワープが発動しなくなっていた

「じゃあドーラが行くっすよ、この中で適任なのはドーラだと思うっすから」
ふむ……確かに
アルカを連れていったら何かしらの不運が起こるし
イリーナはまずヴィクトリア王国には行きたくも無いだろう

そうして俺とドーラでヴィクトリア王国の教会へ転移ワープした



「あっ!ドーラちゃんお久しぶりです、今日は教会へなんの御用でしょうか?」
「あれ?今日はユートさんはご一緒じゃないのですか?」
ベルは俺達にあって早々マシンガントークを始める

「ベルさん、実は……」
ベルに今までの経緯を話すドーラ

「ふぇぇ!?それじゃあこの女の子がユートさん!?」
ベルは俺の頭を撫で始める

「可愛いですねぇ、ずっとこうしていたいですよ、肌触りもとても良い感じです」
俺は右手に火球フレイムボールを創り出す

「はわわ!ごめんなさい!謝りますからその火球を消してください!」
まったく、余計な魔力を使わせないでくれ
今の俺はMPが測定不能じゃなくて普通に限界があるんだからな

「そ…それでは早速解呪をしますので中にどうぞ」
ベルは俺とドーラを教会へ誘う



「それでは始めますので服を脱いでください」

「あ?」

「ひぇぇ…あのですね、解呪を行う際は対象者の肌に直接触れて行うのですよ…なので服を脱いでください」
なるほど、そういう事なら仕方ない

俺は着慣れた服を脱ぐ
すると服が元のサイズに戻っていく
……なんともご都合主義な服だ

「それでは…いきます……」
『汝に取り憑きし呪いよ、我ベルの名の元に浄化せよ』
『ー超高等解呪術式ゴスペルソングー』

俺の身体が光り出す
おぉ!ベルの事をバカにしてたけどやる時はやるんだな!見直したぜ!

しかし
光が途絶えても俺の姿は戻らなかった

「あ…あれぇ?おかしいですねぇ……これは死の呪いも簡単に解呪する術式なのですが……」
ダメじゃないか、見直して損した

俺が服を着ているとベルの顔付きが変わった
と言うより何か雰囲気が違う

「ど…どうしたベル?」
俺は心配になりベルに声をかける


「アハハ♪ユート君は人の忠告を聞かないなぁ、ダメだぜ?人の忠告は素直に受け取るものさ」
この軽い口調……まさか

「そう!みんな大好き魔法神アルトさんだよ~♪」
なんでアルトがここにいるんだよ

「このベルって女の子が『神降ろし』のスキルを持ってたから勝手に降りてきたのさ☆」
……ベルって本当は優秀な奴なのか?
まぁ今は気にしないでおくが

「その呪い解きたい?ねぇねぇ解きたい?」
「この呪いはねぇ……『彦星に会ってキスをする』これだけさ!」
彦星って誰だよ

「さぁ?この呪いは僕が作った訳じゃないしね」
……大体察しがついたテノールだろうな

「ちなみにその呪いは今日中に解けないと一生そのままだからさ」
おい…今なんて

「じゃあ僕は帰るね、ばいばーい♪」
そう言うとベルの雰囲気が元に戻った
神降ろしは終わったらしいな

「ぅぅん…あれ?私は一体何を……」
ベルは目を擦りながら辺りを見渡す

「じゃあなベル、また何かあったら頼むよ」
「ばいばいっす!」
俺とドーラは転移ワープでユースティアにある家に帰った



「ダメだったのか…まぁ端から期待はしてはいなかったから構わないが」
イリーナが頭に手を当て考え込む

「実は、呪いは解けなかったが…解呪の方法は教えてもらった」
「なんだが、彦星に会ってキスをするらしいんだが…彦星って誰だろうな」
俺がそう言うとアルカ、ドーラ、イリーナの目付きが変わった

「ユート殿、その彦星とやらに心当たりがあるぞ」
おぉ!流石はイリーナ!頼りになるぜ!

「それは私達の中の誰かだろう」
はぁ?

「ユート殿は元は男で現在女性の姿に変わっている…ならば彦星は女だと思うのだがどうだろうか」
いやその理屈だと俺同様に元は女性で今は男性の姿になってる奴だと思うんだが?

「細かい事は気にするんじゃあない!さぁ!私達と口からとろけそうなキスを……」
三人が俺にせまる

「な…なぁ…おい待てって…お前ら目が怖いって……」
俺の悲痛の声は届かず
三人に好きな様にやられた
内容はご想像にお任せしよう


「ダメだったな」
「そうっすね」
「でも今日は趣向が違ってて興奮したのです」
ぅぅぅぅ…俺の嫁達は怖いです……

「やはり普通に男とキスをさせるしかないのか?」
やっぱりそうなるのか……
というかお前ら途中で気づいてただろ!

三人は明日の方向を見て口笛を吹く
こいつら……

「とりあえずギルドへ行ってみるか、何かしら解るかもしれないしな」

「お前らは家で留守番してろ」
これ以上こいつらといたら更におもちゃにされそうだ

全員渋っていたが無限収納アイテムボックスから何かを取り出す素振りをするとすぐに三人とも了承した



はぁ…はぁ……
ギルドまでの道のりが遠い……
街の色んな人に声をかけられ…愛でられ…

俺はギルドの扉を開くと全員の視線を一心に集めた

なんだこいつら、急に静かになりやがって
今さっきまで昼間っから酒飲んで賑わってたのにさ

俺はその間を突っ切りモモがいるカウンターへと向かう

「なぁモモ、リョフはいるか?」
俺はいつもの口調でモモに話しかけるが

「女の子がこんな所に来ちゃダメですよー、そこら辺にいるゴロツキ冒険者様に食べられちゃいますよ~」
モモまで俺を幼女扱いするか!

「俺だモモ、ユートだ、ちょっとした事情で姿は変わっているが正真正銘ユートだ」
俺はギルドカードを提示する

「!?……これは…確かにユートさんですねギルドマスターへの面会ですね、しばらくお待ちください」
モモは一瞬驚いていたがすぐに冷静に対処する
俺ならばこんな事も起こるだろうとか思ったんだろうなぁ

「相棒どうしたんだ?指名手配の次は女性化か?お前も大変だなぁ、ガハハハハ」
リョフが大口開けて笑う

「それで?なんでギルドへ来たんだ?」
俺はここまでの経緯を説明する


「ふ~む…そのヒコボシっていう男を探しているのか……」
リョフが考え込んでいる
リョフの真面目モードならなにか解るかもな

「よしユートくん、俺とキスをしよう!」
はぁぁぁ?

「聞くところによるとヒコボシって奴は愛してる奴しか見えてなくて天の神様に会うのは一年に一度だけにされたんだろ?」
まぁ大雑把だがそうだな

「それだけ自分の欲求に素直な男は正に俺だと思うんだ」
リョフ……確かにお前は素直だが…自分で言ってて悲しくならないのか?

「大丈夫痛みはない、俺に身体を預ければ大丈夫だ」
リョフが近づいてくる

「や…やめろ…来るなぁ…俺はそっち系の趣味はないんだよ」
俺は火の槍フレイムランスを発動させようとするが
『MPが足りません』
頭の中にメッセージの様なものが流れる

嘘だろ!まだ転移ワープ二回と火球フレイムボール一回とスパーク一回とだけだぞ!
容量少なすぎだろ!

そしてリョフとの距離が拳一個分位にまで近くなる

あぁ…誰でも良い…助けてくれ…この際神様あいつでも良いから……

その時リョフの部屋の扉が開くと

「ギルマスー、先日の仕事の分の給料を貰いに来たのじゃが…何やっとるんかお主らは」
そこに来たのは受付嬢の一人グレープだった

「ん?グレープか、見ての通りキスをしようとしているだけだ!」

「お主…まさか幼子に興奮する体質じゃったとは…流石に儂でも許容できぬぞ、その娘は嫌がっておるぞ、そんな事を見せられて黙っていられる程、儂は薄情ではないのでの」
グレープは冷却フリーズを発動させる
いや…ちょっと待って…威力強すぎ…

次の瞬間俺とリョフは氷状態になっていた



ぅぅん…ひどい目にあった
俺は目を覚ますと目の前は真っ暗であった

こんな経験前にもあるぞ
まだ呼吸は出来てるから完全にデジャブという訳ではないがな

「お前さん起きたかの?お主も不幸な目にあったの、リョフはしばらくお灸を据えておくのでな安心せい」
グレープの声が聞こえてくる

しかし何だろう…
この枕はとても柔らかいな
まるで女の人の肌の様な感しょk……

俺はどうやら膝枕というイベントが起きているらしい
イリーナ達にもやられた事が無かったな
しかし寝心地は悪くはないな
このまま二度寝も悪くないかな……

「これこれ、また寝てしまったら主の呪いとやらが解けなくなってしまうぞ?」
そう言えばそうだった!

俺は起き上がると

ポヨン
何か柔らかなものに頭をぶつける

「んん…少し激しいのじゃ、もう少し優しくしないと女子おなごに嫌われてしまうぞ?」

「ごめんグレープ!また後で!」
俺は急いでギルドを出ていった
あれ?
俺、グレープに呪いの事話してないよな?
まぁ些細な事か………


「ふふふ…面白い男子おのこであった、あの小娘を匿っているだけはあるのぉ、また会える日を楽しみにしておるぞ」
グレープは妖しく笑うと闇に紛れて消えていった




まずいまずいまずい!
タイムリミットまで残り三時間しかない!
どんだけ寝てたんだ俺は!

しかし一回寝たからMPはだいぶ戻った
こうなったらあいつに頼ろう!

俺は転移ワープを使ってユースティア王国王城のあいつの部屋を行く



「よぉディオニス、元気にしてるか?」
そう、俺が会いに来たのはこの国の王、ディオニスだ

「ふむ…その我に対してのその口振り…貴様はユートだな?どうしてその様な体になっておるのだ?」
ディオニス…話が早くて助かる


「ふむ…そういう事か…しかしあてが外れたな我はそのヒコボシたる男は知らぬ」
ディオニスでも駄目か

「すまんなユートよ、ところで前回のお主の頼みの報酬なのだが」
それから一時間弱ディオニスの長話が始まる

「………良いかユート、あの様な事を平然と要求してくるのはお前くらいで……」

「ごめん!その話はまた今度ゆっくりとな!」
俺はそう言って転移ワープで何処かへと飛んだ


「まったく…ずるい男だな……」
ディオニスはそう言って溜まっている書類に目を通す




タイムリミットまで後三十分…
終わった…俺は一生このままなのか……
アルカ達にはなんて言えば…
俺はそんな事を考えながらユースティア王国の噴水公園のベンチで座っていた

「女の子がこんな時間に一人だなんてどうしたんだい?パパとママは一緒じゃないのかな?」
俺に声をかけてくる奴がいた

それはユースティア王国騎士団団長カイトであった

「あぁカイトか、俺だよユートだ」
このセリフを今日だけで何回言ったんだか…
こうなった経緯とここまでの出来事を話す

「ユートはいつも面白いね、君の話は聞いてて飽きない面白いものだ」
カイトが俺の目の前にきて目線を合わせながら笑っている

まったく人の不幸を笑うんじゃねぇよ

「俺は帰る、これからの事をアルカ達と考える為にな」

「そうかい?まぁ頑張ってくれよ、僕はこのまま街の巡回をしてるからさ」

俺は立ち上がろうとしたが足の感覚が掴めず転んでしまった



う~ん…なんだこの口に当たってる感触は……
これは…人の唇…まさか!?

俺はすぐに起き上がると体が元に戻っていた

「イタタ…ユート押し倒すなんて酷いじゃないか」
え?…はぁ?…じゃあ彦星って……

「カイトの事だったのかァァァァァァ!?」




俺は家に帰り扉を開けると

「おかえりなさいユート…いやユーちゃん!今日はトコトン遊び倒しましょう!」

「服も沢山買ってきたっす!好きなのを選んでほしいっす!」

「ユート殿、味覚も子どもみたいになってたら困るのでな…いつもより味を濃くしてみたのだ」

三人が出迎えてくれた
流石は俺の嫁達だ、やる事が早いな
………だが

「あ…あれ?元に戻ったのですか?」

「あぁ戻ったぞ?…ところで……」
「お前らさんざん人で遊びやがって…覚悟は出来てるよな?」
俺は指の関節をポキポキと鳴らす

「あの…これはっすね…アルカ様がやろうって」

「私は二人を止めたんだぞ!ユート殿!私はやめようって言ったんだ!」

「安心しろよ…全員平等に『お仕置き』してやるからさ☆」
俺は満遍の笑みを浮かべながら三人に近づく

その後、屋敷の周りで三人の女性の悲鳴が響き渡った



ー虚無の世界ー

「アハハハハハ♪やっぱりユート君は面白いね」
アルトが大口開けて笑い転げてる

「だってwまさかあのカイト君が彦星約だったなんてwアハハハハハ」

「あの『星降る短冊』の呪いの効果は」
「処分した人の性別を変えてその後、その者に関わりがある者を彦星又は織姫役にするって呪いなんだよね」

「あ~楽しかった…それじゃあ僕も動き始めるかな」
そう言うとアルトは真面目な顔になり立ち上がる

「まったくぅ、ホント余計な命令しか出さないよねゼウスの奴」
そう呟くとアルトは何処かへと消えていった





ーユートの屋敷ー

「アルカ様、この辺で良いっすか?」
ドーラが俺が切ってきた竹を持ち上げ屋敷の庭を右往左往としている

「もう少し右に…あ!行き過ぎました!少し戻ってください……」
アルカは俺が描いた図を元にドーラに指示を出す

「ユート殿、『そうめん』はこんな感じで良いのか?」
イリーナはキッチンにて七夕の行事食そうめんを作っている

ちなみに俺は七夕の竹に飾る為の吹き流しや巾着を紙で作っている

「ユート、こんな感じですか?」
アルカが俺に確認を取りに来る


「あぁ、これくらいで良いぞ少し雑草が多いな…刈るか」

風の刃ウィンドブレイド
しばらくすれば雑草は無くなるだろう


そして、竹に飾り付けを済ませた丁度のタイミングで呼んでいた人達が来た

「よぉ相棒、タナバタの準備終わったか?」
リョフが何やら大きな樽の様な物を担ぎながらやってきた

「ユートさん、呪いの方はなんとかなったみたいですね良かったです」
モモとアップルがリョフに続いてやってきた

モモとアップルはいつものギルドの制服ではなく私服で来ていた
いつもの制服も魅力があるのだが……
私服姿は
「かわいいな…… 」

口に出してしまった
モモとアップルは頬を赤く染めている

そんなやり取りをしていると

殺気!?
後ろから矢が飛んできた
俺はそれを受け止め、撃ったやつを見るとイリーナであった

「何やら不穏な気を感じたので撃ったのですがユート殿であったか、これはすまない事をしたな」
イリーナ…目が笑ってないぞ……


「やぁユートくん、近くを通ったので来たよ」
お前を呼んだ覚えはないぞカイト

「まぁまぁ、さっきの事はお互いに水に流そうじゃないか」
ホント、カイトのこういう切り替えの速さは見習いたいな


「ユート殿、そうめん出来たぞ」
そうか、人数も集まったし始めるk……

そう思った矢先に屋敷の前に一台の馬車が止まった

「ユートさん、なにやら面白そうな事になってると聞いたので遠路はるばる来たのですが…ベストタイミングでしたかぁ」
中からフェーリが降りてきた
なんだ?ギルドマスター達は全員察しが良いとかの次元じゃないぞ

ユート様クソ野郎が大変な目にあっていると聞いてバカにしようと来ましたが…遅かったようですね…チッ」
ミルシィの男に対する口の悪さはいつも通りだな

「わ…私も来たのですよ……」
ベルも馬車の中から降りてきた
お前まで来てるとは思わなかったな

「ユートさんの呪いが解けたと聞いたので様子を見に来たのですよ、そしたら何やら宴会が始まりそうじゃないですかぁ」
ベル、お前みたいな奴は酒は飲めないんじゃないか?

「それにつきましては先程『神降ろし』で神に許しを得ときました」
アルトか…



全員が星空の元、席についた

俺が全員の前に来て挨拶をする

「えー、今日は七夕という事で本来七夕はこういった宴会はあまりしないイベントだが…流れでこうなったので宴会にしたいと思います」
「その前に、みんなには、この『短冊』に願いを書いてほしい」
「七夕のメインイベントはこれみたいなものだからな」

そう言って俺は全員に手作りの短冊を配る


数分後全員の願いが書き終えた様だ

「『飛翔フライ』が使える人は自分で竹の空いている部分に短冊を括り付けてください」

俺は飛翔フライが使えない人達の短冊を括り付ける
ついでに覗いたのは内緒の話だ

アルカ
『私の不幸体質が直りますように』
俺からもお願いします…彦星さん織姫さん

ドーラ
『もっとたくさんの武器や防具を造るっす』
これは願いじゃなくて目標じゃないかな

リョフ
『筋骨促進』
四字熟語できたか…まぁリョフらしい願いだな

モモ
『仕事がもっと楽になりますように』
……切実だなぁ、後でリョフに俺から頼んでみるか

アップル
『お姉ちゃんの恋が実りますように』
モモは恋してるのか…俺も応援するかな

ミルシィ
『全てのウジ共が死滅しますように』
織姫さん彦星さん、こいつの願いは叶えないでください!

フェーリとイリーナは飛翔フライが使えるので自分で括り付けていた

フェーリ
『心地よい睡眠がとれますように』
フェーリよ、これ以上寝たら流石にやばいんじゃないか


「わ…私のは絶対に教えないぞ!」
イリーナは頑なに教えても見せてもくれなかった
括り付けた後に見るなんて無粋な真似はしないが気になるな……



こんな願い事をユート殿に見せる訳にはいかないな……
織姫殿、彦星殿幸せにな
私の願いは叶えられたらで良いので頼んだぞ

「おーい、イリーナ宴会始めるぞー!」
ユート殿の声だ

「あぁ今行くぞ」
私は括り付けその場を後にした
その時夜空の星が二つキラリと輝いた様な気がした



七夕特別編
『七夕の夜に呪いを解きましょう』
~END~

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