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ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし

ノベルバユーザー173744

58……目を覚ませば再び異空間?

 ムニムニ……。

 ふかふかのベッドに、ルーズリアは常春の国と言われて、暖かく、年中花が咲き乱れる。
 いつもふわふわと花の香りが漂う。

 しかし、

「うにゃ……」

 目をこすりながら体を起こすと、家や王宮の部屋とも違う……。

「マ、ママ……?セリお兄ちゃん……?」

 起き上がった場所は何故かひんやりとしていて、そして、

「キャァァ!」

 目の前の蒼い巨大な石……岩と言うべきか……透明ではないものの深淵の青……そして、ラピスラズリのように金粉や時々白い部分が出ているわけではなく、蒼く、ただ天の川のように銀粉が散っている。
 だが驚いたのは、その形は、兄のデュアンリールが図鑑で教えてくれた、ドラゴンの形。
 しかし、いびつに崩れている部分もある。
 そしてその前に、虹色の卵が祭壇の上にクッションを下に敷いて置かれていた。
 卵は大きい。
 リティの頭よりも大きいはずである。

 周囲を見回して、誰もいないことを寂しく思いながら恐る恐る卵に近づく。
 すると、声が響いた。

『そなたが我が子の守り手か』

 キョロキョロとするが、誰もおらず、卵とそして、岩を見る。

「えっと、ル、ルーズリア王国のラルディーン公爵ミューゼリックの娘ファティ・リティと言います」
『ファティ・リティ。良い名だな。私は、約2000年前に死んだドラゴン。この建物は私の力が漏れるのを防ぐことと、そのねぼすけを守るために作られた』
「ねぼすけちゃん……」
『そうだ。私は妻との間に二つの卵が生まれた。一つは孵化したが、これは眠り続けている。そろそろ起きろと言いたいのだが、守り手がいなかった。ようやく見つかった。よろしく頼む』
「あの……た、確か、パパやお兄ちゃんが、シェールドにはドラゴンがいて、そのドラゴンは他国に居られないと……」

 リティは問いかける。

『他のドラゴンなら、溟海(うみ)も渡るのに苦心するが、ホワイトドラゴンと我らブルードラゴンならば何のことはない』
「でも、ルーズリアに住むことは……」
『それは出来ぬ。もし、ルーズリアにねぼすけを連れていくと、さほどせず戦場となるだろう。ドラゴンについてありもしない力を持つと噂が流れ、ねぼすけも、そなたも傷つく』
「で、でも、パパやママがいるのです。デュアンお兄ちゃんも。リティをいい子だって可愛いって言ってくれたのは、頭を撫でてくれたり、抱っこしてくれるのはパパ達……」
『……ねぼすけには母はいない。父は我だが、もう、時はない。兄はいるが家族や守る者達で手一杯……頼む。この子を……ここから出してくれ……広い世界を見せてくれ。もう父にしがみつく年ではないと……』

 淡々としているようで、懇願し、リティに訴える。

『お願いだ。もう時間はない。この子を抱いてあちらの扉から出て欲しい』
「扉……」

 何もないと思っていた空間に扉が見えた。

『頼む……私はエーレンフリート。無理矢理連れてきたことは謝ろう。ファティ・リティ……どうか、その子を頼む。すぐに出て行って欲しい。もう……』

 躊躇ったものの、必死の声に、

「エーレンフリートさま。分かりました。連れて行きます」

 大きい卵を抱きかかえ、大きな岩の顔を見つめる。

「エーレンフリート様に祝福がありますように……」
『ありがとう……ファティ・リティ、そなたと、ねぼすけの前途が明るいことを……行きなさい』
「はい」

 ファティ・リティは言われた扉に近づき、扉を開け出て行った。
 扉が閉まることを感じた岩……石と化した元ドラゴンは、

『我が子と竜の守り手となる異国の姫に祝福を、幸福であれ……』

 と呟くと、意識が途切れるとともに、岩が崩れ落ちたのだった。



 扉を出ると、リティは見たこともない空間に、

「どうしよう……ここはどこ?」

 と立ちすくむ。
 目の前には大きな廊下に、両側には部屋がある。
 誰かの住まいだろうか?
 すると、扉が突然開き、

「何があった?気配が!」

 出てきたのは、前に会った、絶世の美貌の王アルドリーとその弟のアルトゥール。
 しかし硬直するリティに、キョトンとし、

「あれ?柘榴姫……」
「リティどうしたんだ?こんなところに……」
「話を聞くよりも、まずは中に入ってもらおう。おいで、柘榴姫。カイ兄さんもいるよ?」

とアルドリーに抱き上げられ、室内に入る。
 一応、アルドリー達の行動にそれぞれ配置につこうとしていた騎士達は、あっけにとられ、

「誰だ?あの子は……」
「見たことない……」

と呟くが、カイが、

「あ、リティ姫!」
「カイお兄ちゃん。お、おはようございます」
「おはようございます。リティ姫はお利口だねぇ?でも、セリは?それか側に誰か……」

アルドリーの問いかけに、首を振る。

「目が覚めたら、大きな青い石のあるお部屋にいて……。声がして、この卵ちゃんの守り手って、言われたのです。この子を連れて部屋を出て行きなさいって……」

 言葉もなく、一旦戻ってきていたヴァーソロミューが部屋を出て行き、アーサーもついていく。
 アルドリーは、リティをソファに座らせると、ブランケットで体を覆い、

「寒かったでしょう?柘榴姫。カイ兄さん。ハーブティを。そして、お菓子をお願い」
「はい」

カイは、息子の年齢の青年とともに、別室に入り、戻ってくる。

「リティ姫。どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「あ、紹介するよ。お菓子を持って来たのは、ラファの一つ上の幼馴染で、セドリシア、セナだよ。セナはカズールの分家の跡取り。お父さんがあそこで寝てるリオン兄さん」
「すみません。病弱で……ストレスで逆流性食道炎に」

 セナは頭を下げる。

「普段は良いのですが、今回は大叔父が外遊とのことで、叔父のフィア兄さんに任せると何かが起こると……」
「一応父さんは破壊魔だけどやるときはやるよ?大丈夫だよ。それより、その卵」
「エ、エーレンフリートさまが、ねぼすけを連れて言ってくれと……無理やり連れて来て悪かったと言ってました」
「エーレンフリート……」

 アルドリーは呟く。
 そして何かの言葉を紡ぐ。

「柘榴姫。その竜王の名前は忌み名。もう口にしてはいけないよ」
「忌み名……悪い言葉ですか?」
「違う。竜族の真実の名は軽々しく呼んではいけないんだよ。竜族は本当に大きい上に強い力を持つ。だから、貧弱な人間が名前を呼び捨てにしたり、簡単に口にしては特にレッドドラゴンなんて激怒して火を噴くよ。プライドが高いだけでなく戦闘能力も高いからね」
「分かりました。あの、えと、幸矢(コウヤ)さま。この子どうしたらいいですか?」

 虹色の卵を差し出す。

「ん?お休みしてるんじゃないの?」
「いいえ、中で動いてるのです。グルングルン……時々、ほら、蹴ってる」

 卵が動き、その瞬間、ペリペリっとかすかに割れる音がした。

「えっと、今割れたところを、トントンって叩いてみて。啐啄(そったく)って言って、親がここにいるからって知らせるの。柘榴姫、中の赤ん坊を傷つけたらいけないから、外からは手を出せない。あ、ヴァーロ!」

 青ざめた顔で戻って来たヴァーソロミューは、

「父の岩が砕け、中は砂煙です……」
「ちょうどよかった。ヴァーロ。卵が中から殻を壊しているんだ」
「は?全く動きもしなかったねぼすけが?」

その言葉に、パリン、とかけらが落ち、中から何故か左後ろ足が出て来た。
 そうすると、左右に抜けないと言いたげに足を振り回す。

「足が出て来た……。普通顔だよね」

 ヴァーソロミューは呟く。
 すると拗ねたのか、ドンドンと殻を叩き、次は右後ろ足が出る。
 卵に両足……の奇妙な姿に、周囲はぶっと噴き出す。

「おーい、ねぼすけ。顔を出しなさい。殻全部壊して。不格好だよ」

 その言葉に、ドーンという音とともに、目の閉じたままの頭が出てくる。

『うゆしゃい!にーた、パパよりうゆしゃい!』

 目はまだ開いていないが、したったらずの思念が聞こえる。

『ねぼしゅけ、ちあうもん!にーたきあい!』
「えっと、手と体が出ていないから、殻をのけましょうね」

 これ以上は本人の力では無理と、リティは殻を取っていく。
 すると、家にいるナムグの赤ん坊よりもプリプリとしたお尻に長い尻尾、小さい翼を持った、ずぶ濡れの生き物が現れた。
 ブランケットやタオルで濡れた毛を拭き、それが何故か真っ白の毛玉になった。

「ブルードラゴンの子供は生まれた時には純白の毛なんだよ。他のドラゴンは漆黒だけどね」
「そうなんですか……」
『ママ!おにゃまえ!おにゃまえ』

 せがむ竜の子に、

「えっと、男の子ですか?女の子ですか?」
「女だと思うよ。オーラが違うから」
「……じゃぁクレスツェンツはどうでしょう」
「……それは素敵だね」

 アルドリーは微笑んだのだった。

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