ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし

ノベルバユーザー173744

50……ネグロス侯爵をとっちめる?

「本当に、本当に、本当に許せなくてよ!」

 プリプリと怒りながらエスコートされるローズ様にテオは、

「本当に申し訳ございませんでした」
「貴方に怒っているのではなくてよ」

扇を広げ、こそっと囁く。

「あいつの手の指輪……侯爵家には不釣り合いのでかい石がついてた。本物のはず。だが、ネグロス侯爵程度が幾つも持てないだろう」
「……時々、宝石商が出入りするそうですよ。ですがさほど真っ当なところではないようですね」
「あぁ、シェールドから放逐された、偽物の宝石商のマッドだろう?」
「そうですね」
「そっちも気になるな……」

 ミューゼリック夫妻とセリとリティの後ろを歩いていた2人は、立派な体躯のミューゼリックが立ち止まったことに気がついて足を止めた。
 ミューゼリックの斜め前には、細身の青年が頭を下げていた。

「マクシム。元気そうで何よりだ」

 身分の上の者に声をかけられないと返事をしてはいけない。
 先程のネグロス侯爵が、ラルディーン公爵の客人であるローズ様に声をかけるのも、本来は無礼、失礼な行為である。

「お久しぶりでございます。ラルディーン公爵閣下。夫人。そして、ローズ様、セリ先輩、テオ先輩お久しぶりでございます」

 丁寧に頭を下げる。

「そして、父の無礼……本当に、申し訳ございませんでした」
「それは構わない……それより、紹介しよう。私の娘のファティ・リティだ」
「ファティ・リティ嬢……初めてお目にかかります。ネグロス侯爵嫡子マクシムと申します」
「初めてお目にかかります。ファティ・リティと申します。本日は招待して頂きありがとうございます」

 リティは丁寧に頭を下げる。

 グランディアの布を用いた異国情緒あふれる、でも可愛らしいドレスを着こなし、マクシムの先輩セリに手を引いて貰っている少女は、可愛らしい花のような少女である。

「お越し下さり、ありがとうございます。どうぞ、奥に」
「マクシム!ここにおったのか!」

 後ろからやってくるのは父親の侯爵。

「何をしておるのだ!この何をやらせてもうまくできんクズが!その上、仕事だなんだと言い訳し帰ってこん癖に!」

 近づき指輪をつけた手で殴ろうとしたのを、すっと近づいたローズが扇で止める。

「何をされていらっしゃるのかしら?パーティも始まっていないというのに、何を?」
「黙れ!貴様のせいでいらん恥をかかされた!その上、関係ない息子の教育に口を挟むな!」
「ほぉ……じゃぁ、私が挟ませて貰おうか?」

 ミューゼリックが近づく。

「マクシムが仕事で忙しいのは当然だ。まだ若く、近衛に入ったばかり。その上、この間のデビュタントでの事件で、王宮の方がごたついていて、特に少ない術師の1人であるマクシムに負担がかかっていると、新しく入隊したクレスールが証言していたが……?自分の息子の能力を侮っていないか?ネグロス侯爵。昔は大人しくおどおどしていたとしても、子供は成長する。眼を見張る程だ!その時に後悔しても遅いぞ」
「ラ、ラルディーン公爵閣下……いえ、私は……」
「不快だ!私たちに近づくな!特に妻と娘に近づいてみろ!陛下にご報告申し上げる!」
「陛下に?」
「私の妻は正妃様の叔母であり、娘は陛下に可愛がられている。ではな!マクシム。案内を頼む」

 ミューゼリックはマクシムに声をかけ、青年になりかけの少年は、

「はい。ではご案内いたします」

と案内を始めた。



 ちなみにその頃、早々にパーティに来ていたクレスールは、両親と妻を目立つテーブルに座らせ、そっと偵察に向かった。
 前々から幾つもの屋敷に侵入してきたこともあり、楽である。
 と言うか、侯爵家でこの程度しか警護や護衛、衛兵がいないのかと思うと呆れる程である。
 このルーズリアでは最も警戒している屋敷は、ラルディーン家で次がラーシェフ家である。
 それは、もうこの世にない親族が侵入し、散々荒らしてくれたからである。
 それと、シェールドから贈られた貴重な生物に植物が植えられており、手を出されては困るからである。
 シェールドで最も警戒が強いのは、王宮とマルムスティーン侯爵の屋敷とカズールのチェニア宮。
 特にチェニア宮はそこらへんに無造作に放置されていたものが国宝だったりするので、最近になって決まった研究員が出入りし、宝物の鑑定と宝物殿を作るか相談中だと言う。

「はぁぁ……ローズ様に褒めて頂けるような情報あるかなぁ」

 内心そう呟きながら、気配を殺し、足音を忍ばせ歩いていく。
 しかし、薄汚れていると言うか、侍女の出入りも少なく、衛兵もいない。

「そう言えば、この屋敷の奥方は数年前離婚した……にしても、埃だらけにススだらけだな……表は綺麗だがここまで汚いもんか?」

 小声で呟く。

 そして、前もって頭に叩き込んでいた家の見取り図を思い出し、歩いて行ったのだった。

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