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ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし

ノベルバユーザー173744

41……恋バナとプロポーズは突然に……?

 数日後、1人の細身の青年が姿を見せた。
 長いストレートの髪は漆黒、そして白い肌に瞳も漆黒。
 端正と言うよりも可愛らしい顔の青年と言うより少年である。

「失礼致します。国王陛下……カズール伯爵閣下の命で参りました。カイ・レウェリンの5男セリディアスと申します。どうぞよろしくお願い致します」

 優雅にお辞儀をするセリに、父親に抱っこして貰っていたリティはきょとんとする。
 黒い髪は滅多にない。
 特に目の前の青年のように、艶のある黒髪は稀である。
 綺麗だなぁ……でも、聞き捨てならないことを聞いた気が……。

「えっと……パパ……」

 コソコソと問いかける。

「今、お兄さんはカイお兄さんの子供って言ってましたよね?」
「そうそう。カイは7人息子ばかりでな。長男と次男が国王陛下の側近」
「はぁ……髪の毛つやつや……つやつやで、光ってるところが王子様の王冠みたいです」
「ん?どうしたの?リティ」

 伯父の国王の問いかけに、頰を赤くして、挙動不審になる。

「兄貴……セリの髪の毛が綺麗で、王子さまのようで羨ましいだそうだ」
「ありがとうございます。兄弟の中で僕1人が母に似ていまして、この髪と瞳は母譲りなんですよ」

 微笑む。

「お姫様の髪も艶があってお美しいです。それに瞳は優しい空の青ですね」
「あ、ありがとうございます」

 もじもじとしつつもお礼を言う。

「あ、えと、ラルディーン公爵家の末娘、ファティ・リティと申します。セリディアスさま、よろしくお願い致します」
「……」

 リティを見つめ、頰を上気させぷるぷると震えるセリディアスに、父親のカイが、

「本性を出さないように……セリ」
「何で?父上!こんなに可愛かったら、僕も着せ替えとかしたい!だって、兄弟、皆僕以外父上似で、いつも僕が母上のふりしてパーティに出るじゃん!」
「でも、綾はね……」
「それは分かってるよ。それに、兄貴たちの嫁さんは、体調の崩しやすい3兄の姉ちゃんは兎も角、他の姉ちゃんは男装か、パーティに出ないって言うし……もう、僕がローズ様の特訓受けてなかったら、うちが幾ら公爵家でも終わりだよ」

父親よりも頭1つ以上低い小柄な青年は、父親を睨む。

「父上……僕だって、僕だって男だもん。可愛い女の子と踊りたいんだよ!これでも!いい歳だよ!弟だって結婚や婚約してるのに!酷いよ!それに、父上ならまだ許す!ダンス、父上は上手いもん!でも、兄貴たちのダンスを何とかして!じゃないと僕、もう踊らない!仕事以外女装なし!」
「えっと〜ねぇ?と言うか、綾が踊れないの解るでしょ?」
「だから、父上と踊るのはいいけどさぁぁ!兄貴たちのパートナー、なしにしてくれたらいい!兄貴たち、ダンス下手なんだもん!僕の足を何だと思ってるの?失礼だよ!それに、兄貴たちは自分たちの嫁さんいるんだから!もう、絶対踊らない〜!」
「……そうだねぇ……うん。帰ったら、あの子たちに言っていいよ。で、ダンスの特訓をさせることにしようね?」
「やったぁぁ!父上大好き」

 父親に抱きつく。

「……この親子、親バカでファザコンなのよ……ごめんなさいね」

 ローズ様はのたまう。

「カイは奥さんを溺愛していて、自分に似た6人の息子は、厳しくなるみたい。でも、奥さんに顔も性格も瓜二つで真面目で努力家のセリには甘いのよ」

 リスティルたちも噂に聞いてはいたが、かなりの溺愛ぶりに驚きである。
 ちなみに騎士にしては細身で可愛らしく、女装に違和感は感じない。

「だから、父上!僕も男装でダンスを踊りたいです!お姫様と!あんなに可愛いお姫様と踊れたら絶対に一生自慢できる!と言うか、僕は嬉しい!お願いだから、父上ダンス踊りたいなぁ……?お願い出来ませんか?」
「……確か、今度パーティありましたよね?陛下」
「そうだねぇ。デュアンが出られないから、誰かパートナーをと思っていたんだ。セリ、パートナーお願いできる?」
「はい!パートナーとしてだけではなく、お姫様をお守り致します、ご安心下さいませ」

 父から体を離し、騎士としての礼を返す。

「と言う訳で、次のダンスパーティは、デビュタントのやり直しだから、リティのドレスも新調だね。体に負担のないものを。その時に、セリも合わせて作りなさい」
「えっ?あの。自分の……」
「うちの一族の今年の姫のエスコートをするんだから、こちらで手配するよ。ダンスのレッスンもよろしくね」
「やったぁぁ!初めて女の子とダンス!しかも可愛いお姫様!幸せ〜!」
「こらこら、セリ、大声で言わない」

 カイはたしなめるが、唇を突き出した年齢未詳の少年が、

「だって!僕は、ずっと母上の代わりか、兄貴たちのパートナーか、仕事の潜入で女装だよ!可愛いお姫様をエスコート!嬉しいんだもん!リスティル陛下ありがとうございます!」

ニコニコと笑う少年に、ローズ様は、

「リスティル陛下もミューゼリック閣下も後悔すると思うわ」

と、ティフィに聞こえる程の声で呟いたのだった。



 その翌日から、セリはリティのダンスのレッスンと警備、勉強を見たり、髪を結い上げたり、ドレスのデザインにもチェックを入れる。

「女の子だから、年齢相応のものではなくて、顔立ちに似合う可愛らしいものがいいと思うんだ。ほら、無地のドレスよりも花柄のドレスにしたり、可愛くて十分。ハァ……姫様は可愛くて本当に似合うから、僕は見てるだけで幸せかも……」
「あの、セリお兄ちゃん。短くでいいのですか?」
「えっ?あぁ、このドレスはね、失礼しますね。こーやって……」

 デュアンとカイ、ローズ様とミューゼリックが唖然とする。
 膝をつき、ドレスの裾のリボンを解いたセリはドレスの裾を伸ばしていく。

「はい。これが公でのドレスで、さっきのリボンでミニスカートにしておくと、普段着と言うかちょっとよそ行きとか出来るでしょう?」
「ふわぁ……可愛いです」
「でしょう?でねでね?はい。手首に何もないのは寂しいでしょう?姫様の瞳の色のリボン。とても可愛いと思うなぁ……」
「リボンがですか?」
「リボンをつけてる姫様が可愛いんだよ?とっても似合うなぁ」

 ニコニコと笑う。

「本当に可愛い。良いなぁ。こんな可愛いお姫様」
「セリ……戻っておいで」
「父上。ねっ?可愛いでしょ?似合うでしょう?」
「はいはい。セリ。一応騎士団長としてきちんとしなさい」
「……野郎どもは暑苦しいし、お姉さまは僕をおもちゃにする……」

 遠い目をする。

「……自分がもっと父上に似ていたら……」
「えっと、お兄様はかっこいいですよ?とってもよくお似合いです」

 リティと共に揃えられた一式を着たセリに、リティは微笑む。

「……どうしよう……もの凄く可愛すぎるんだけど……」
「セリ。リティを連れてこっちに来い」

 ミューゼリックは、リティの周りで可愛い可愛いと身悶えているセリに釘をさす。

「はーい、お姫様どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 セリは、慣れた様子で手を差し出す。
 しかし、今までの父やティフィ、若返る前のデュアンに比べ、背は低く、それに細かいところに気がつく。

「姫様。ゆっくりでいいですよ。本来のエスコートというのは、男がレディを強引に引っ張るのではなくて、レディのペースに僕たちが合わせるのが本来なんです。ゆっくり歩いてみますか?」

と、ゆっくりと歩いてくれ、

「はい。とてもお上手です。それに、ローズ様に教わったのでしょう?扇子の扱い方がとても綺麗ですよ。それに、手先まで集中していますね。本当に短期間でここまで……素晴らしいです。お上手です。それにこんなに可愛い……エスコートできて本当に嬉しいです」

リティは恥ずかしがるが、セリはニコニコと微笑む。
 リティの父のミューゼリックの隣のソファにエスコートすると、空いていた斜め横の1人がけソファに座る。
 そうして、テーブルに幾つも置かれているデザインのイラストを覗き込む。

「豪華ですね……」
「だろう?前回散々だったから、今度はと思ってな?」
「と言うか、デビュタントですよ?ケバくないですか?どうして紫とか、濃い系の色なんです?淡い系で、薄いレースを重ねるなり、ギャザーやレースを入れるなりしましょうよ。濃い色でもピンク、ブルーで、薄いレースを重ねたら淡く見えて可愛いですから」
「と言うか、14に見えないと言われてな……」
「14なんですから、いいでしょう?それに、似合う間に可愛いドレス着ないと損ですよ?うちの長兄と次兄の嫁……姉さんは男装が楽とずっとそれで通していたら、結婚式や正式な行事の際にドレスを着ることになったら、何を合わせるか、ドレスコード1つも分からない上に、最後に逆ギレで『俺は普段通りで行く!お前が女装しろ!』って……父さんが叱りつけて、何とかなりましたけど、姫はまだ僕よりも10歳も若いんです。可愛いドレス、十分じゃないですか。リボンだって、レースだって似合うんです。うちの姉達が20歳過ぎで、フリフリドレスを兄貴たちが選ぼうとして、ぶっ飛ばしましたよ。年齢と見た目に応じたドレス、最高ですよ!」

言いながら、幾つかのデザインをポイポイ放置し、3枚のイラストを並べる。

「このデザインならいいと思います。それに、もう1つのこのワンピースは、ピクニック用に如何です?」「……お前の趣味だな」

 ローズ様の一言に、にっこりと、

「ローズ様の息子のラファ兄さんの影響です。僕、顔だけ兄貴よりも、ラファ兄さんが良かったです」
「がーん!私の顔が嫌い?」
「いや、父さんは強いし優しいし、手先も器用だし、性格も可愛いし、悪いところは運だけ。でも、兄貴たちは顔だけで腹黒、根性悪、女好き、タラシ。弟2人が本当にまともに育って良かった」
「……運悪い……」

息子の一言にカイは衝撃を受けたらしい。

「大丈夫。父さんはかっこいいからね」

 慰める。

「それと、うーん……姫様に似合う……あっ、そうだ!シンプルイズベスト!昔流行したドレスイメージで、淡い生成りの生地で、この裾の長いドレス!外側はこんな感じだけど、ここで、スカートの裾を止めたら、今年流行の、前と後ろの長さの違うドレスに!上品でしょ?髪飾りもヴィンテージっぽく。手袋は、手甲を覆うのは布で、指先や手の甲、肘までは手編みのレース!これは本当に淑女っぽいと思います!」
「ノリノリだな。セリ……」
「ローズ様。どうですか?ね?ね?清楚ですよ!」
「と言うか、ウェディングドレスみたいじゃない?」

 デュアンが後輩を見る。

「えっ?そうだったかなぁ?でも絶対似合いそうですもん!」
「だから嫁には出しません!リティは」
「じゃぁ、僕、婿に来ます!あ、姫様はまだ14ですもんね。それに二年あったら僕もこっちで色々出来そうですもん」
「ちょっと待て!いつの間に婿に決まってるんだ?」

 ミューゼリックは口を挟むが、

「僕、仕事も真面目にしますし、今もしています。それに履歴書とか職務経歴書とか出しますよ?騎士の館での成績とか……」
「そう言う問題じゃない!」
「じゃぁ、こっちの陛下にお願いして来ます……」
「そこまで出すか!」
「だって、可愛いし、一目惚れだから。それに、この背の低い僕に最初の一言が、低いとかじゃなく、『髪の毛がつやつやしてる。王子さまみたい』ですよ〜!兄弟並んだら、僕だけ低い!コンプレックスだったんです!それを姫様言わなかったんです!」

拳を握り締める。

「姫様本当に可愛いし、一所懸命だし、真面目で、素直で……と言うことで、コウヤ小父さんにお願いして来ます!誰かに取られたらやだ!」

と、立ち上がると、部屋を出て行った。

「パパ。しょくむけいれきしょって何ですか?」

 リティは首を傾げる。
 硬直していたミューゼリックは、何とか笑顔を作り、

「職務経歴書とかは、自分が何歳からどんな仕事をして来たとか、仕事についていなくても、上司について仕事をしたとか……自分を証明する書類だな。兄貴だけじゃなく、向こうのアルドリーにもって……うわぁ……嵐になったらどうしよう……」

頭を抱え呻いたのだった。

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