ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし
17……リティの立場の自覚
二台の馬車を迎えに出たラルディーン公爵一家とクレスールの前に、リスティルと第二王子のラディエル、正妃のティアラーティアと、何故か四人の美女。
リティはキョトンとするが、両親と兄のデュアンとクレスールが微妙な顔をする。
リティは、ダンスのレッスンをする筈のティフィを探す。
「えっと……お兄ちゃん。ティフィ様お忙しかったのですか?やっぱり無理言って……」
言いながらデュアンを見上げると、その反対にいたクレスールが噴き出した。
「ティフィ、全く違和感なしで良かったなぁ」
「クレス、それは言っちゃダメだよ」
「だって、デュアン先輩。あははは!似合う似合う」
「……クレスお兄ちゃん?お兄ちゃん?」
二人の袖を握りキョロキョロするリティは、今日はダンスのレッスンをしっかりとする為にコルセットなどを付けているらしい。
しかし、元々痩せているので締めてもほとんど変化はない。
が、髪飾りは清楚で、可愛らしい淡いピンクのレースを重ねたドレス姿である。
デュアンは、妹に顔を寄せる。
「リティ、はい、あの紅の髪のお姉さんは?」
「ティアラーティアさま……えっと、お姉さまです」
「そうだね。じゃぁ、あの3人は?」
「マシェリナお姉さまとミシェリアお姉さま、ナディアラお姉さまです」
可愛がってくれる3人は時々顔を見せてくれるのである。
「それと、伯父様とラディくんと……あれ?」
見知らぬ無表情の美女……にキョトンとする。
「えと、伯父様やパパの妹様ですか?隣国にいらっしゃる……」
「違う違う」
「パパの妹は、折角リティのおじいちゃんの待望の一人娘だったのに、パパは兎も角、リー兄貴やフェル兄さんを女装させるわ、愚兄をぶん殴るわで、おばあちゃんがドレスはビリビリに破くって、お転婆娘はって嘆いてたんだぞ」
「伯父さんやミューに似てなかったから、うん。母上は金髪に緑だけど、あの子は金髪に栗色の瞳だったから」
ミューゼリックとリスティルが手を振る。
ではどう言うことだろう?
首を傾げたリティに、美女が優雅にお辞儀をする。
「今日はお招き頂きありがとうございます。私は、ティフィと申します」
「……ティフィ、お兄ちゃん……?」
唖然とするティフィは苦笑する。
「私たちは騎士の勉強をする為に留学した時、潜入捜査やダンスパーティに潜り込む時などの為に、メイクにダンス、ドレスのセンスもとことんまで叩き込まれるんだ。で、今回はシェリナたちがいると言うのに、四人がかりで……まぁ、そこで笑っているクレス先輩には、ウェイト師匠に教わった最高に難しいダンスのレッスンをして頂きましょうね?」
「げっ!」
「それに、先輩のお子さんはいらっしゃるのですか?」
「ノエルとリラとベルは奥にいるぞ。リズや両親と。後で挨拶をと思ったんだが……」
「そうだ、クレス。うちのこのラディエルと年が変わらないでしょ?遊ばせて貰えない?本当にやんちゃでおませなんだよ」
リスティルは息子を引っ張り出す。
「マシェリナたちもよろしくね」
「お久しぶりですわ。クレスール様」
「うっわぁ……お変わりなく、お美しい」
「当然ですわ。お世辞でも何でもないわね〜」
「いやぁ、ティフィの女装には負け……ぐふっ!」
デュアンが、リティが見えないところで肘鉄を入れる。
「さぁ、リティ?今度のデビュタントでは踊らないけど、クレスールとティフィがシェールドで習ったダンスを踊ってくれるんだって。今は踊らなくていいけれど、もう少し慣れたら踊ろうね。ティフィは女性パートも踊れるから、今日はドレス姿なんだよ」
「ふわぁ……とてもお似合いです。素敵です。で、でも私は……」
痩せている自分を見下ろすリティに、ティフィは微笑む。
「とても似合っていると思うわ。それに、もっと堂々となさるといいと思うわ。失敗しても慌てるよりも、失敗なんてしてませんって、逆に堂々としているといいと思うのよ」
ハスキーだが甘い声でゆっくりと告げる。
「貴女は本当に頑張っていると思うもの。自分の失敗を責めるよりも、今日は一つ良いことがあった。今日はダンスが一回うまく踊れた。お父様やお母様に褒めて貰った。お兄様が頭を撫でてくれた。それだけでも嬉しいでしょう?無理をすると本当にまた倒れてしまうわ。それよりも、自分を褒めるとか嬉しかったことを思い出しながら寝ると幸せでしょう?」
「……はい、ティフィお兄様」
「今日のドレスは本当にとても可愛らしくて、貴女に似合っているわ。いつも思うけれど、この屋敷のお針子さんたちは素晴らしい腕前だわ。貴女が本当に似合うドレスを仕立てて着付けて、こんなに素敵に仕上げるのですものね」
「はい。すごく、嬉しいです!」
「でしょう?なら、もっと、ドレスを選んだ人にも、ありがとうって言えるように自信を持ちましょうね」
言葉の少ないティフィが、喋るのを周囲は愕然とする。
両親であるリスティルとティアラーティアもここまで喋る息子を余り見たことがなかった……ドレスのせいで女性の言葉遣いだが。
「はい。ティフィお兄様、ありがとうございます。それに、お兄様が初め、あの屋敷に来て下さってから私は人生が変わりました。お兄様のお陰です。パパやママ、お兄ちゃんとクレスお兄ちゃん、それに、伯父様やお姉さまたちがいて下さって、一杯一杯幸せです。いつかお兄様にご恩返しができたらと思います。あ、私も騎士の勉強をする為に留学して……」
「それはダメ!パパは許さないぞ。ママもデュアンも反対だ、な?」
「リティ。お願いだから遠くに行かないでね?ママは悲しいわ」
「そうだよ。シェールドには時々行く時には一緒だけど、留学はダメ。お兄ちゃんはリティが傍にいて欲しいんだ」
デュアンに抱きしめられる。
「約束してね?リティがお嫁さんになるまでは家族一緒だよ。いなくなったらお兄ちゃんは悲しくて泣いちゃうかも……」
「言うか、お兄ちゃん。リティはお兄ちゃんやママやお姉さまみたいに綺麗じゃないから、お嫁さん行けないかも」
「それでも良い!パパは逆にその方が嬉しい!」
「親馬鹿も大概にしろっての」
スッパーンと弟の背中を叩く。
リスティルは自分の顔も歳をとらないのも嫌だが、最も嫌だったのは兄弟の中で一番背が低かったこと。
すぐ下の弟のリオに、足の不自由で、車椅子と杖で過ごしていたフェルですら高かったのに、一人だけ背が余り伸びなかった。
一番の巨漢はミューゼリックである。
良く頭を撫でられることも不満の一因である。
「ここで言うのも何だけど、リティ。伯父様のところに、リティのお見合い話が舞い込んで来ました」
「お見合いですか?私は余り社交に出ることもなかったですし、いつ知ったんでしょう?」
「言うか、伯父様が、今のラミー伯爵の縁戚から、ミューが養女を貰ったことだけは公表していたんだよ。ラミー伯爵はリティのおじいちゃんのルイスの親友で、執事として表向きは動いていても、本当はルイスが私の近衛隊長であった時から、様々な情報を特にギルドのメンバーだったから、ある程度仕分けしてくれて、私たちに送ってくれていたんだ。だから、結構財産があるんだよ。それに、クレスにも送ったでしょ?あれ、長年の辺境での仕事に、隣国を探ってくれていた分も纏めているからね」
「えっ?あの金貨って、貸してくれたのかと思ってました」
「アホ〜!自分の功績を過小評価しない!お前もリティも自分自身の価値を低く見過ぎ。全く、何を考えてるの?」
リスティルは溜息をつくと、
「リティ。お前はね?筆頭公爵家のラルディーン公爵の末っ子。それに、ミューは私の弟で、アリアは琥珀ちゃんの叔母。つまり、本当に王族の姫とほぼ同等の令嬢なんだよ。この国の貴族だけでなく、他国の者もリティを得たいと思っている。だからね?いいかい?今度のデビュタントで人が集まってくる。だから、ティフィかデュアンにくっついていること。離れたり声をかけられても……」
「こんな風にしておくと良いわ」
ティフィは扇を広げ口を隠すと、目を伏せるようにしてお辞儀をし去って行く仕草をする。
「なるべく離れないようにするけれど、もし何かあったらどこかに行くよりも、叔父上や叔母上、それか私の両親の所に行くのよ。それが一番安全」
「は、はい。頑張ります」
「口は開かずにすっと去ること。それに、私たちがエスコートしているから、リティは口を開かなくて良いのよ」
「そ、そうなのですか?」
「そう。私たちは騎士だけど位は高いからね。低い者から声をかけるのは無礼なんだ。だから私やティフィが声をかけるまではリティに誰も声はかけられない。かけて来ても無視して良いよ」
デュアンが妹の頭を撫でる。
「それが一番正しいからね」
「まぁ、その見合い話は伯父様が全て抹殺しておきました」
「抹殺?」
首をかしげるリティに、リスティルはにっこりと言ったのだった。
「証拠隠滅の為に、炎の魔術で燃やして灰にしたり、風の術でカマイタチで切り刻んでゴミ箱にポイとか、今日も来てたから、宛名を入れ替えてそれぞれの家に送り返しておいたよ。多分これで何組かは見合い話が成立したんじゃない?ティフィ宛のをリティ宛の家に送りつけといたよ。その逆もしておいたからねぇ。私は見合いの仲人する気はないんだけどねぇ」
「父上……何遊んでるんですか!」
「えー?何で怒るの?ティフィのことを、散々バカにしてたあのブッサイクなリオの息子だよ。自分の実力も考えずに、私の甥だからって政治に口を挟むから、ぶっ潰してやろうと思って。その上、リティ宛の手紙には『この俺様が娶ってやるんだから』って書いてたよ?『それに、この屋敷は元々はうちの屋敷だったんだ。それをミューゼリック叔父が取り上げやがって。お前を嫁に貰ったら、デュアンを追い出して取り戻してやる』だって。元々ここは私が継承する筈だった家で、居座ってたのはリオたちで、私が王位についたからミューに管理を頼んだのにね〜?それに、私は1棟だけ使うだけで、後はミューに頼むと父上にも伝えて了承を得てたのに」
「……ぶっ潰す」
ミューゼリックは低い声で告げる。
「やっぱり馬鹿の子は馬鹿か?徹底的に潰しておくか」
「フェルの息子のクシュナは、本当に謙虚でおっとりなのにねぇ。今回来るかなぁ?」
「リティに会いに来て下さいって伝えたら、他の交流は面倒とは言ってましたが来るそうですよ」
デュアンは嬉しそうに答える。
「可愛い従兄妹に会いたいからって」
「じゃぁ、リティは、ちょっと練習をしましょうね。クレス先輩はダンスを思い出して頂きますね」
優しい声でティフィはいったが、クレスは徹底的にダンスのエスコートの仕方を直されたのだった。
リティはキョトンとするが、両親と兄のデュアンとクレスールが微妙な顔をする。
リティは、ダンスのレッスンをする筈のティフィを探す。
「えっと……お兄ちゃん。ティフィ様お忙しかったのですか?やっぱり無理言って……」
言いながらデュアンを見上げると、その反対にいたクレスールが噴き出した。
「ティフィ、全く違和感なしで良かったなぁ」
「クレス、それは言っちゃダメだよ」
「だって、デュアン先輩。あははは!似合う似合う」
「……クレスお兄ちゃん?お兄ちゃん?」
二人の袖を握りキョロキョロするリティは、今日はダンスのレッスンをしっかりとする為にコルセットなどを付けているらしい。
しかし、元々痩せているので締めてもほとんど変化はない。
が、髪飾りは清楚で、可愛らしい淡いピンクのレースを重ねたドレス姿である。
デュアンは、妹に顔を寄せる。
「リティ、はい、あの紅の髪のお姉さんは?」
「ティアラーティアさま……えっと、お姉さまです」
「そうだね。じゃぁ、あの3人は?」
「マシェリナお姉さまとミシェリアお姉さま、ナディアラお姉さまです」
可愛がってくれる3人は時々顔を見せてくれるのである。
「それと、伯父様とラディくんと……あれ?」
見知らぬ無表情の美女……にキョトンとする。
「えと、伯父様やパパの妹様ですか?隣国にいらっしゃる……」
「違う違う」
「パパの妹は、折角リティのおじいちゃんの待望の一人娘だったのに、パパは兎も角、リー兄貴やフェル兄さんを女装させるわ、愚兄をぶん殴るわで、おばあちゃんがドレスはビリビリに破くって、お転婆娘はって嘆いてたんだぞ」
「伯父さんやミューに似てなかったから、うん。母上は金髪に緑だけど、あの子は金髪に栗色の瞳だったから」
ミューゼリックとリスティルが手を振る。
ではどう言うことだろう?
首を傾げたリティに、美女が優雅にお辞儀をする。
「今日はお招き頂きありがとうございます。私は、ティフィと申します」
「……ティフィ、お兄ちゃん……?」
唖然とするティフィは苦笑する。
「私たちは騎士の勉強をする為に留学した時、潜入捜査やダンスパーティに潜り込む時などの為に、メイクにダンス、ドレスのセンスもとことんまで叩き込まれるんだ。で、今回はシェリナたちがいると言うのに、四人がかりで……まぁ、そこで笑っているクレス先輩には、ウェイト師匠に教わった最高に難しいダンスのレッスンをして頂きましょうね?」
「げっ!」
「それに、先輩のお子さんはいらっしゃるのですか?」
「ノエルとリラとベルは奥にいるぞ。リズや両親と。後で挨拶をと思ったんだが……」
「そうだ、クレス。うちのこのラディエルと年が変わらないでしょ?遊ばせて貰えない?本当にやんちゃでおませなんだよ」
リスティルは息子を引っ張り出す。
「マシェリナたちもよろしくね」
「お久しぶりですわ。クレスール様」
「うっわぁ……お変わりなく、お美しい」
「当然ですわ。お世辞でも何でもないわね〜」
「いやぁ、ティフィの女装には負け……ぐふっ!」
デュアンが、リティが見えないところで肘鉄を入れる。
「さぁ、リティ?今度のデビュタントでは踊らないけど、クレスールとティフィがシェールドで習ったダンスを踊ってくれるんだって。今は踊らなくていいけれど、もう少し慣れたら踊ろうね。ティフィは女性パートも踊れるから、今日はドレス姿なんだよ」
「ふわぁ……とてもお似合いです。素敵です。で、でも私は……」
痩せている自分を見下ろすリティに、ティフィは微笑む。
「とても似合っていると思うわ。それに、もっと堂々となさるといいと思うわ。失敗しても慌てるよりも、失敗なんてしてませんって、逆に堂々としているといいと思うのよ」
ハスキーだが甘い声でゆっくりと告げる。
「貴女は本当に頑張っていると思うもの。自分の失敗を責めるよりも、今日は一つ良いことがあった。今日はダンスが一回うまく踊れた。お父様やお母様に褒めて貰った。お兄様が頭を撫でてくれた。それだけでも嬉しいでしょう?無理をすると本当にまた倒れてしまうわ。それよりも、自分を褒めるとか嬉しかったことを思い出しながら寝ると幸せでしょう?」
「……はい、ティフィお兄様」
「今日のドレスは本当にとても可愛らしくて、貴女に似合っているわ。いつも思うけれど、この屋敷のお針子さんたちは素晴らしい腕前だわ。貴女が本当に似合うドレスを仕立てて着付けて、こんなに素敵に仕上げるのですものね」
「はい。すごく、嬉しいです!」
「でしょう?なら、もっと、ドレスを選んだ人にも、ありがとうって言えるように自信を持ちましょうね」
言葉の少ないティフィが、喋るのを周囲は愕然とする。
両親であるリスティルとティアラーティアもここまで喋る息子を余り見たことがなかった……ドレスのせいで女性の言葉遣いだが。
「はい。ティフィお兄様、ありがとうございます。それに、お兄様が初め、あの屋敷に来て下さってから私は人生が変わりました。お兄様のお陰です。パパやママ、お兄ちゃんとクレスお兄ちゃん、それに、伯父様やお姉さまたちがいて下さって、一杯一杯幸せです。いつかお兄様にご恩返しができたらと思います。あ、私も騎士の勉強をする為に留学して……」
「それはダメ!パパは許さないぞ。ママもデュアンも反対だ、な?」
「リティ。お願いだから遠くに行かないでね?ママは悲しいわ」
「そうだよ。シェールドには時々行く時には一緒だけど、留学はダメ。お兄ちゃんはリティが傍にいて欲しいんだ」
デュアンに抱きしめられる。
「約束してね?リティがお嫁さんになるまでは家族一緒だよ。いなくなったらお兄ちゃんは悲しくて泣いちゃうかも……」
「言うか、お兄ちゃん。リティはお兄ちゃんやママやお姉さまみたいに綺麗じゃないから、お嫁さん行けないかも」
「それでも良い!パパは逆にその方が嬉しい!」
「親馬鹿も大概にしろっての」
スッパーンと弟の背中を叩く。
リスティルは自分の顔も歳をとらないのも嫌だが、最も嫌だったのは兄弟の中で一番背が低かったこと。
すぐ下の弟のリオに、足の不自由で、車椅子と杖で過ごしていたフェルですら高かったのに、一人だけ背が余り伸びなかった。
一番の巨漢はミューゼリックである。
良く頭を撫でられることも不満の一因である。
「ここで言うのも何だけど、リティ。伯父様のところに、リティのお見合い話が舞い込んで来ました」
「お見合いですか?私は余り社交に出ることもなかったですし、いつ知ったんでしょう?」
「言うか、伯父様が、今のラミー伯爵の縁戚から、ミューが養女を貰ったことだけは公表していたんだよ。ラミー伯爵はリティのおじいちゃんのルイスの親友で、執事として表向きは動いていても、本当はルイスが私の近衛隊長であった時から、様々な情報を特にギルドのメンバーだったから、ある程度仕分けしてくれて、私たちに送ってくれていたんだ。だから、結構財産があるんだよ。それに、クレスにも送ったでしょ?あれ、長年の辺境での仕事に、隣国を探ってくれていた分も纏めているからね」
「えっ?あの金貨って、貸してくれたのかと思ってました」
「アホ〜!自分の功績を過小評価しない!お前もリティも自分自身の価値を低く見過ぎ。全く、何を考えてるの?」
リスティルは溜息をつくと、
「リティ。お前はね?筆頭公爵家のラルディーン公爵の末っ子。それに、ミューは私の弟で、アリアは琥珀ちゃんの叔母。つまり、本当に王族の姫とほぼ同等の令嬢なんだよ。この国の貴族だけでなく、他国の者もリティを得たいと思っている。だからね?いいかい?今度のデビュタントで人が集まってくる。だから、ティフィかデュアンにくっついていること。離れたり声をかけられても……」
「こんな風にしておくと良いわ」
ティフィは扇を広げ口を隠すと、目を伏せるようにしてお辞儀をし去って行く仕草をする。
「なるべく離れないようにするけれど、もし何かあったらどこかに行くよりも、叔父上や叔母上、それか私の両親の所に行くのよ。それが一番安全」
「は、はい。頑張ります」
「口は開かずにすっと去ること。それに、私たちがエスコートしているから、リティは口を開かなくて良いのよ」
「そ、そうなのですか?」
「そう。私たちは騎士だけど位は高いからね。低い者から声をかけるのは無礼なんだ。だから私やティフィが声をかけるまではリティに誰も声はかけられない。かけて来ても無視して良いよ」
デュアンが妹の頭を撫でる。
「それが一番正しいからね」
「まぁ、その見合い話は伯父様が全て抹殺しておきました」
「抹殺?」
首をかしげるリティに、リスティルはにっこりと言ったのだった。
「証拠隠滅の為に、炎の魔術で燃やして灰にしたり、風の術でカマイタチで切り刻んでゴミ箱にポイとか、今日も来てたから、宛名を入れ替えてそれぞれの家に送り返しておいたよ。多分これで何組かは見合い話が成立したんじゃない?ティフィ宛のをリティ宛の家に送りつけといたよ。その逆もしておいたからねぇ。私は見合いの仲人する気はないんだけどねぇ」
「父上……何遊んでるんですか!」
「えー?何で怒るの?ティフィのことを、散々バカにしてたあのブッサイクなリオの息子だよ。自分の実力も考えずに、私の甥だからって政治に口を挟むから、ぶっ潰してやろうと思って。その上、リティ宛の手紙には『この俺様が娶ってやるんだから』って書いてたよ?『それに、この屋敷は元々はうちの屋敷だったんだ。それをミューゼリック叔父が取り上げやがって。お前を嫁に貰ったら、デュアンを追い出して取り戻してやる』だって。元々ここは私が継承する筈だった家で、居座ってたのはリオたちで、私が王位についたからミューに管理を頼んだのにね〜?それに、私は1棟だけ使うだけで、後はミューに頼むと父上にも伝えて了承を得てたのに」
「……ぶっ潰す」
ミューゼリックは低い声で告げる。
「やっぱり馬鹿の子は馬鹿か?徹底的に潰しておくか」
「フェルの息子のクシュナは、本当に謙虚でおっとりなのにねぇ。今回来るかなぁ?」
「リティに会いに来て下さいって伝えたら、他の交流は面倒とは言ってましたが来るそうですよ」
デュアンは嬉しそうに答える。
「可愛い従兄妹に会いたいからって」
「じゃぁ、リティは、ちょっと練習をしましょうね。クレス先輩はダンスを思い出して頂きますね」
優しい声でティフィはいったが、クレスは徹底的にダンスのエスコートの仕方を直されたのだった。
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