ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし
13……シャル ウィー ダンス?
今日は、この後出勤する忙しい兄の代わりに、こちらも忙しい筈の王太子ティフィリエルがレッスンをしてくれることになり、カチカチである。
「リティ?緊張しなくて大丈夫だよ」
デュアンは笑うものの、心配でウロウロしようとすると、
「お嬢様。ダメですよ。座っていて下さい」
「そうですよ。折角お似合いのドレスですのに」
とリナとレナも微笑む。
伯父の娘である王女殿下の古着を着ているとはいえ、普段着は毎日勉強や私室にいる時は、メイド達の仕立ててくれた服が多く、そして兄とのレッスンではワンピースにローヒールが多かった。
今日はしかし、略式のドレスとハイヒールである。
「転んじゃったり、足踏んじゃったらどうしましょう。お兄様。土下座した方が……」
「リティは初心者だし、練習だから大丈夫。わざと踏む訳じゃないしね?」
「でも、下手なのが分かっちゃいます」
眉をハの字にして、心底困った顔をする妹に、デュアンは抱き上げ微笑む。
「大丈夫だよ。この前パパと一緒に一回ダンスを踊ったでしょ?とてもびっくりしてたよ。上手で可愛いって」
ミューゼリックは幼い頃から公爵家の子供としてきちんとしたレッスンを受けている。
その父ですら、
「可愛すぎる、その上短期間でここまで可愛く踊れるなんて、さすがは私の子〜!」
とリティを抱き上げてクルクル回った。
父は一応、兄ほど変ではないと言い張るが、嫁ラブに子煩悩の度合いが激しいとデュアンは思う。
「上手だぞ?リティ。パパが言うんだから大丈夫」
と、ニコニコしていた。
「大丈夫だよ。いつも通り踊ってご覧?ティフィも怒ったりしないよ」
「私が怒るですか?」
執事に案内され姿を見せたティフィに、妹を抱き上げていたデュアンは微笑む。
「ティフィ。ようこそ。リティがね?ティフィと練習して、足を踏んじゃったらどうしようって緊張してるんだよ」
「そんなに気にすることないと思うけどね?女の子に踏まれた位で……特にリティ位の子なんか大丈夫だよ」
「なんかって何?」
「違う違う。兄さん。リティ位の華奢な子に踏まれた位じゃ、私は痛くもかゆくもないよってこと。前に、もっとふくよかなある異国の王女殿下に、何回だったかなぁ……足を踏まれて、その時は骨折したなぁ〜」
「げっ!あの時のあぶら汗、そのせいだったの!伯父上怒ってたと思った」
踏んでしまったら骨折……真っ青になったリティに、ティフィは微笑む。
「大丈夫。普通の女性とかなら大丈夫なんだよ?その王女は失礼だけど、本当にふくよかでね?失礼だけどリティは多分五人位……」
「えっと、私は30キロないです……」
「リティは華奢だから。そう言えばね?ティフィ。この間リティはナムグの着ぐるみを着てて、可愛かったんだよ」
「ナムグの着ぐるみ……それは可愛いでしょうね。叔父上が、そう言えば可愛いワンピース姿の写真を見せてくれましたね」
落ち着いた印象のティフィが、リティを見る。
「リティはとても可愛いから、今日の清楚なドレスもよく似合うよ。それに、真珠の髪飾りが素敵だね。真珠は女性を守る石なんだって」
「そうなんですか?ママ……お、お母様が選んでくれました。それに、当日のドレスはお父様とお母様、お兄様が選んで下さったのです。とっても嬉しいです」
「あ、そうだ。リティはピアスつけてるよね?」
「はい。でも、外せないのです。魔術がかかっているっておじいちゃんが……」
「ちょっと見せて貰っても良いかな?」
近づいてきたティフィは耳を確認すると、唖然とする。
「……ちょっと待って。これ、シルバーはシルバーでも、シェールディア・ブルーだ!それに、この石って……確か、最高級のリール王国のダイヤモンド!シェールドの国王陛下に戴いて付けて貰ったんだね。じゃないと、シェールディア・ブルーは王族以外は身につけてはいけないから」
「シェールディア・ブルーですか?」
「シェールドの三大宝物。1つが蒼水晶、1つがエンナ・ムーグ……兄さんのミカはナムグの原種の血を引いているんだけど、ちょっと待ってて」
窓を開けて、声をかける。
「十六夜?イザ?」
バサっと翼の音がして、漆黒の生き物がベランダにおすわりをする。
「漆黒の毛並みと瞳が金色だとエンナだけど、この十六夜は、瞳が青いでしょ?シェールドの国王陛下のレイ・ロ・ウの子供でね?瞳は父親似。レイ・ロ・ウはエンナなんだよ。ナムグでも滅多に生まれなくて、シェールドの歴史でも、3頭目だったと思うよ」
「イジャ……十六夜さんは、違うんですか?」
「完全なエンナじゃないからね。でも、本当に珍しいんだ。イザ?挨拶して。私の従姉妹のリティだよ」
大きな瞳がくるっとしたナムグは、
『初めまして。十六夜です。お姫様』
「わぁぁ、初めまして。十六夜さん。ファティ・リティです」
「リティ?十六夜の言葉解るのかい?」
「はい。お兄様のミカともお友達です」
「そうそう。イザは女の子だよ。ミカより小柄でしょう?でも俊敏で、賢いからね」
デュアンは十六夜の頭を撫でる。
「そして、もう1つが、シェールディア・ブルーと言う銀。でも、シェールドにしか取れない、ミスリル銀よりも硬い鉱石だよ。それも、この鉱石が取れる鉱山は国王所有で、滅多に出回らないんだ。それに他国に贈る事もほぼない。リティが身につけているのは珍しいんだよね」
「し、知りませんでした……」
「それは、ただ、陛下がプレゼントしてくれたんでしょう。気にすることはないよ?じゃぁ、ティフィ、リティを頼むね?」
妹の頭を撫で、頰にキスをすると、出て行ったのだった。
「兄さんはリティが可愛いんだねぇ?リティは兄さん好き?」
「はい!お兄様大好きです!」
「それは良かった。兄さんも最近職場でも楽しそうだよ」
「そう言えば、お兄様は、どこにお勤めですか?」
「あれ?そっか、知らない人多いからね。兄さんは私の父、国王陛下の近衛隊長で、生物植物学者。兄さんの領地は、色々な生き物で一杯だよ。この屋敷も普通の貴族の家以上に生き物ばかりだし、温室も多いでしょ?」
そうなのだ。
元気になって驚いたのは、屋敷にはペットが一杯で、温室も多く、デュアンは部屋や居間にいない時には、メイドや侍従が総出でデュアンを捜索している。
「兄さん、時々長期休暇で色々な国に行っては種子とか持ち帰るんだ。でも、持ち込んだ種子が、この国に繁殖したらいけないでしょ?だから、鉢植えして、出入りする時も花粉とかも持ち出さないように気をつけているんだって。特に珍しいのは、シェールドの国王陛下のお祖父様から戴いた、グランディアの動植物。大事にしているんだって。あぁ、確か、もう少ししたら綺麗な花が咲くよ。兄さんがきっとお花見しようって言ってくれると思うよ」
「お花!そうなのですか!嬉しいです。でも、お兄様お忙しいのに、私のダンスの練習とか……ティフィお兄様も……」
「大丈夫。私の方は本当に逆に息抜き出来てありがたい位だよ。それにね?ダンスの練習の後で、渡したいものがあるんだ。だから、ね?」
ティフィは微笑む。
「お姫様、私と踊って頂けますか?」
一瞬もじもじしたものの、頰を赤くして、
「はい、よろしくお願いします」
と小さい手を乗せた。
最初は荒れていた手が、綺麗に爪を整えられ、指のささくれもなくなっている。
可愛らしい初々しい仕草にティフィは作り笑いではなく、優しくもう一度微笑み、部屋の中央部にエスコートをしたのだった。
ちなみにティフィの足は一回も踏まれなかったものの、リティが何回かハイヒールのせいでよろけ、その度にすくい上げるように抱き上げたのだった。
「リティ?緊張しなくて大丈夫だよ」
デュアンは笑うものの、心配でウロウロしようとすると、
「お嬢様。ダメですよ。座っていて下さい」
「そうですよ。折角お似合いのドレスですのに」
とリナとレナも微笑む。
伯父の娘である王女殿下の古着を着ているとはいえ、普段着は毎日勉強や私室にいる時は、メイド達の仕立ててくれた服が多く、そして兄とのレッスンではワンピースにローヒールが多かった。
今日はしかし、略式のドレスとハイヒールである。
「転んじゃったり、足踏んじゃったらどうしましょう。お兄様。土下座した方が……」
「リティは初心者だし、練習だから大丈夫。わざと踏む訳じゃないしね?」
「でも、下手なのが分かっちゃいます」
眉をハの字にして、心底困った顔をする妹に、デュアンは抱き上げ微笑む。
「大丈夫だよ。この前パパと一緒に一回ダンスを踊ったでしょ?とてもびっくりしてたよ。上手で可愛いって」
ミューゼリックは幼い頃から公爵家の子供としてきちんとしたレッスンを受けている。
その父ですら、
「可愛すぎる、その上短期間でここまで可愛く踊れるなんて、さすがは私の子〜!」
とリティを抱き上げてクルクル回った。
父は一応、兄ほど変ではないと言い張るが、嫁ラブに子煩悩の度合いが激しいとデュアンは思う。
「上手だぞ?リティ。パパが言うんだから大丈夫」
と、ニコニコしていた。
「大丈夫だよ。いつも通り踊ってご覧?ティフィも怒ったりしないよ」
「私が怒るですか?」
執事に案内され姿を見せたティフィに、妹を抱き上げていたデュアンは微笑む。
「ティフィ。ようこそ。リティがね?ティフィと練習して、足を踏んじゃったらどうしようって緊張してるんだよ」
「そんなに気にすることないと思うけどね?女の子に踏まれた位で……特にリティ位の子なんか大丈夫だよ」
「なんかって何?」
「違う違う。兄さん。リティ位の華奢な子に踏まれた位じゃ、私は痛くもかゆくもないよってこと。前に、もっとふくよかなある異国の王女殿下に、何回だったかなぁ……足を踏まれて、その時は骨折したなぁ〜」
「げっ!あの時のあぶら汗、そのせいだったの!伯父上怒ってたと思った」
踏んでしまったら骨折……真っ青になったリティに、ティフィは微笑む。
「大丈夫。普通の女性とかなら大丈夫なんだよ?その王女は失礼だけど、本当にふくよかでね?失礼だけどリティは多分五人位……」
「えっと、私は30キロないです……」
「リティは華奢だから。そう言えばね?ティフィ。この間リティはナムグの着ぐるみを着てて、可愛かったんだよ」
「ナムグの着ぐるみ……それは可愛いでしょうね。叔父上が、そう言えば可愛いワンピース姿の写真を見せてくれましたね」
落ち着いた印象のティフィが、リティを見る。
「リティはとても可愛いから、今日の清楚なドレスもよく似合うよ。それに、真珠の髪飾りが素敵だね。真珠は女性を守る石なんだって」
「そうなんですか?ママ……お、お母様が選んでくれました。それに、当日のドレスはお父様とお母様、お兄様が選んで下さったのです。とっても嬉しいです」
「あ、そうだ。リティはピアスつけてるよね?」
「はい。でも、外せないのです。魔術がかかっているっておじいちゃんが……」
「ちょっと見せて貰っても良いかな?」
近づいてきたティフィは耳を確認すると、唖然とする。
「……ちょっと待って。これ、シルバーはシルバーでも、シェールディア・ブルーだ!それに、この石って……確か、最高級のリール王国のダイヤモンド!シェールドの国王陛下に戴いて付けて貰ったんだね。じゃないと、シェールディア・ブルーは王族以外は身につけてはいけないから」
「シェールディア・ブルーですか?」
「シェールドの三大宝物。1つが蒼水晶、1つがエンナ・ムーグ……兄さんのミカはナムグの原種の血を引いているんだけど、ちょっと待ってて」
窓を開けて、声をかける。
「十六夜?イザ?」
バサっと翼の音がして、漆黒の生き物がベランダにおすわりをする。
「漆黒の毛並みと瞳が金色だとエンナだけど、この十六夜は、瞳が青いでしょ?シェールドの国王陛下のレイ・ロ・ウの子供でね?瞳は父親似。レイ・ロ・ウはエンナなんだよ。ナムグでも滅多に生まれなくて、シェールドの歴史でも、3頭目だったと思うよ」
「イジャ……十六夜さんは、違うんですか?」
「完全なエンナじゃないからね。でも、本当に珍しいんだ。イザ?挨拶して。私の従姉妹のリティだよ」
大きな瞳がくるっとしたナムグは、
『初めまして。十六夜です。お姫様』
「わぁぁ、初めまして。十六夜さん。ファティ・リティです」
「リティ?十六夜の言葉解るのかい?」
「はい。お兄様のミカともお友達です」
「そうそう。イザは女の子だよ。ミカより小柄でしょう?でも俊敏で、賢いからね」
デュアンは十六夜の頭を撫でる。
「そして、もう1つが、シェールディア・ブルーと言う銀。でも、シェールドにしか取れない、ミスリル銀よりも硬い鉱石だよ。それも、この鉱石が取れる鉱山は国王所有で、滅多に出回らないんだ。それに他国に贈る事もほぼない。リティが身につけているのは珍しいんだよね」
「し、知りませんでした……」
「それは、ただ、陛下がプレゼントしてくれたんでしょう。気にすることはないよ?じゃぁ、ティフィ、リティを頼むね?」
妹の頭を撫で、頰にキスをすると、出て行ったのだった。
「兄さんはリティが可愛いんだねぇ?リティは兄さん好き?」
「はい!お兄様大好きです!」
「それは良かった。兄さんも最近職場でも楽しそうだよ」
「そう言えば、お兄様は、どこにお勤めですか?」
「あれ?そっか、知らない人多いからね。兄さんは私の父、国王陛下の近衛隊長で、生物植物学者。兄さんの領地は、色々な生き物で一杯だよ。この屋敷も普通の貴族の家以上に生き物ばかりだし、温室も多いでしょ?」
そうなのだ。
元気になって驚いたのは、屋敷にはペットが一杯で、温室も多く、デュアンは部屋や居間にいない時には、メイドや侍従が総出でデュアンを捜索している。
「兄さん、時々長期休暇で色々な国に行っては種子とか持ち帰るんだ。でも、持ち込んだ種子が、この国に繁殖したらいけないでしょ?だから、鉢植えして、出入りする時も花粉とかも持ち出さないように気をつけているんだって。特に珍しいのは、シェールドの国王陛下のお祖父様から戴いた、グランディアの動植物。大事にしているんだって。あぁ、確か、もう少ししたら綺麗な花が咲くよ。兄さんがきっとお花見しようって言ってくれると思うよ」
「お花!そうなのですか!嬉しいです。でも、お兄様お忙しいのに、私のダンスの練習とか……ティフィお兄様も……」
「大丈夫。私の方は本当に逆に息抜き出来てありがたい位だよ。それにね?ダンスの練習の後で、渡したいものがあるんだ。だから、ね?」
ティフィは微笑む。
「お姫様、私と踊って頂けますか?」
一瞬もじもじしたものの、頰を赤くして、
「はい、よろしくお願いします」
と小さい手を乗せた。
最初は荒れていた手が、綺麗に爪を整えられ、指のささくれもなくなっている。
可愛らしい初々しい仕草にティフィは作り笑いではなく、優しくもう一度微笑み、部屋の中央部にエスコートをしたのだった。
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