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ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし

ノベルバユーザー173744

11……Shall We Dance?

 リティは基本運動神経もいい方らしく、その上、育ちが育ちだった為、リナやレナのいない隙に身の回りのことをしたり、他の侍女たちとも仲良くなり、繕い物や洗濯、掃除の仕方なども熱心に聞いていた。

「お嬢様?」

 今日も、隙をぬい繕い物の手伝いをしに行っていたリティを、静養しつつ様子を窺っていた、育ての親であるサーシアスとイーフェが見つけ、

「お嬢様!」
「こちらだったのですか?リナさんとレナさんが探してましたよ。それに」
「お嬢様?」

母アリア付きのメイド長サーシェが、にっこりと微笑む。

「こちらにいらしたのですね?今日はダンスのレッスンです。お兄様のデュアンさまが心配されてましたよ」
「あっ!え、えっと……」
「さぁ、お嬢様?今日はこれで終わりです。今度、奥様が刺繍をお教え下さいますわ。ティフィリエル殿下に差し上げましょうね」

 ニコニコと笑いつつ、さぁさぁと連れ出す。
 その手腕に、サーシアスとイーフェは感心する。
 昔はマリアと呼ばれていた少女は、お転婆と言うより責任感が強く手先も器用、乗馬も趣味という賢い少女のだが、苦手なことも存在する。
 逃げちゃいけないと解っていても、逃げて来たらしい。

「じいや〜、ばあや〜」
「ラミー伯爵と夫人はまたお茶をしましょうとおっしゃられておられますよ?さぁ、参りましょうね?」

 引っ張っていかれると言うよりも、ドナドナされていく感じである。
 見送るメイドたちは可愛いお嬢様を見送り、

「お嬢様はダンスが苦手なの〜って、言われていたけれど、本当に可愛らしい方ですわ」
「本当に。私どもに気軽にお声をかけて下さって……でも、繕いはダメですよって言っても」
「お手伝いします〜って、本当に可愛いですわ〜」

一番年の若いメイドがリナ、レナの為、少々年齢の高いメイドたちは娘を見送るようである。

「本当に。ラミー伯爵さま、奥方さま。ご案内致しますわ」
「どうぞ、こちらです」
「ありがとうございます。本当にお嬢様に、それに私どもにも親切にして戴きありがとうございます」

 サーシアスは頭を下げる。
 先日、内々に伯爵にと国王陛下に申し渡されたとはいえ、元々貧乏子爵の人間である。
 そして、筆頭公爵家のラルディーン家に支えているのなら、自分とさほど身分の変わらない家の女性たちである。

「いいえ、噂でお聞きしましたわ。旦那さまや奥様がおっしゃられておられます。お身体が良くなるまでこちらにおいで下さいませ」
「ご迷惑では……それにお嬢様も……」
「いいえ、確か旦那さまが、ラミー伯爵のお屋敷が、手入れされていないので、改修させるとか」
「そうですわ。それに、伯爵さまが当主なのです。メイドや侍従、執事、庭師をお雇いになられたり、領地について、詳しいお嬢様に聞いておくべきだとおっしゃられてましたわ」
「……そうだった。私は、ラミー子爵のようにはならない。陛下や公爵閣下、それにお嬢様の為にも、これからは領主として努力をしなければ……」

 サーシアスは呟く。

「ありがとうございます。では、私に出来ることを、イーフェ。行こうか」
「えぇ。皆さまありがとうございます。失礼します」

 夫婦は去っていく。

「上品なご夫婦だわ〜。お嬢様の可愛らしさはご夫婦が大事にされていたからよね」
「そうね〜。さぁ。お嬢様の部屋着よ〜」
「まぁ!可愛い!」
「デュアンさまが喜びそうね」
「ミカさまのイメージですもの」

 一人のメイドが作ったのは、パイル生地の着ぐるみである。
 フードには垂れ耳、そして尻尾が付いている。

「今日にでも着て頂きましょう!」
「待って!これはどうかしら?」

 今度は、ふわふわのレースとギャザーのミニ丈ドレスにエプロンドレスである。
 ドレスは淡いピンク、隣の女性は色違いでレモン色と空色を掲げている。

「まぁ!でも、お嬢様は14よ?ミニ丈はどうかしら?」
「だって、あんなに可愛いお嬢様には、似合う服を着て戴きたいんですもの!」
「そうよそうよ!今のうちよ?背が伸び始めたら、着られなくなるわ!」
「それもそうね!じゃぁ、お嬢様の普段着は私たちが選びましょう」

 公爵家は平和だが奥様位しか着飾ることがなく、そしてデュアンの結婚はまだまだで、残念に思っていたのだが、リティが来たことで、メイドたちは楽しみが増えたらしい。
 そのことを知らないリティは、この日から着せ替え責めにあうことになるのだった。



「リティ、来たね?」
「ご、ごめんなさい。お兄様」
「ん?何が」
「……わ、私、ダンスレッスン受けていなくて……恥ずかしくて逃げちゃったのです」

 俯く妹を抱きしめる。

「そんなこと、気にしなくていいのに。お兄ちゃんが教えてあげるからと言うか、ダンスっていうのは、リードする男性が下手だとダメなんだ。女性はね、基本のステップさえ覚えておけば、相手に任せておけばいいんだよ。それに、リティはお兄ちゃんとティフィと踊る位で、後は疲れましたって、パパやママのいるところに連れて行って貰っていいの。逆に踊れますって踊りすぎても、疲れちゃうでしょ?」

 と言うが、実際はデビュタントで多くの男性、もしくは何曲も踊り続けることはマナー違反である。
 デビュタントは国王陛下主催で行われる、一種の少年少女が成長したことを報告する挨拶のようなものであり、デビュタントを迎えて結婚や婚約者を公に紹介できる場である。
 そのような場で、一応国王陛下の親族や高位の貴族の令息、令嬢から順番に踊り始める。
 招待された人数も多い、次に譲るマナーも必要なのだ。

「あ、そうですね。お兄様、凄いです!パパやママのところに行っても大丈夫なんですね。でも、パパやママ、皆さんとお話とか……」
「リティのことを心配してるから、お兄ちゃんと二曲とティフィと二曲位だよ。その後は、ジュースを飲んだりお菓子をつまんだりでいいの。お兄ちゃんとお話ししようね」
「はい!」
「じゃぁ、簡単に練習しようね」

 控えていたサーシェは音楽を流す。

「じゃぁ、お兄ちゃんの声に従って、ゆっくり踊ろうね。まずは、お兄ちゃんの背に左手を回す……あ、そっか」

 必死に手を伸ばし、兄の背に手を伸ばすリティは、平均身長よりも低い。

「はい、無理はしないで、ここで良いから。で、右手はお兄ちゃんの手の上に置いて」
「はい」

 しかし、手足の長さも合わず、リティは落ち込む。

「ごめんなさい。お兄様。とても不恰好になっちゃう……」
「大丈夫。変じゃないよ。それよりも思い出したんだけど、お兄ちゃんに昔、ダンスを教えてくれた人が、教えてくれたんだけど、ちょっとごめんね?」

 片腕に抱き上げ、目線を合わせると、

「お兄ちゃんの背中に手を回して?そして、1、2、3……1、2、3」

デュアンは音楽に合わせて踊り始める。

「これはね?慣れないレディにレッスンする時と、もう1つ公式の場では意味があるんだ。それは今度。今はお兄ちゃんの動きを覚えてみて。お兄ちゃんが下がる時は、リティが前に出る、その逆だと下がる。で、ここでクルッと回る」
「えっと、1、2、3……」
「そうそう。テンポは基本、デビュタントはこのダンスだから、大丈夫だよ。今日は曲のイメージを覚えようね」
「はい」

 何回か踊った後、最後に一回踊ってみると、まだぎこちないものの、それなりに初々しいと言えるレベルのダンスを披露する。
 勘と運動神経の良さと賢さのおかげだろう。

「凄いじゃないか。リティ。上手だよ。もう少し練習したら、ティフィにも来て貰って練習しようね」
「はい。頑張ります」

 褒められたことが嬉しかったらしく、頬を染めて喜ぶ姿に、

「デビュタントにはきっと、リティのダンスをパパとママがびっくりするだろうね。上手すぎるって」

デュアンは妹の頭を撫でたのだった。

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