流れ星が落ちた場所で僕は君と出会った。

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

平和の鐘の逆襲



「ん? マリア大佐よ、敵にたいした損害を与えておらぬではないか。これはどういうことじゃ?」
「コウ・ジュンさんですか、連合軍の戦力は充実していますから、連戦続きで疲労の多いこちらが不利なのは仕方ありませんよ。一応、数の上では有利ですから、波状攻撃を仕掛けることで、敵の息切れを待っているところです」


オルブ連合チャウワン遠征軍司令である中国系の老人コウ・ジュンが戦況を見て側にいたミスラル傭兵部隊隊長マリア大佐に声をかける。
マリア大佐は現場を知らずに文句だけ言ってくる上司が来たと一瞬心底迷惑そうな顔をするが、すぐに表情を隠して現在の状況を説明する。


「んー? 何じゃそうなのか、じゃったらこの基地にある圧縮爆弾を投下すればよかろう。アレの殺傷力なら、敵を一網打尽できるじゃろ」
「いいんですか? あの規模の爆弾を投下すると地形が変化してしばらく人の住めない不毛の地になってしまいますよ?」


コウ・ジュンはマリア大佐の説明を聞いて圧縮爆弾の使用を命令する。
マリア大佐は一瞬顔をしかめるが無表情に戻すと圧縮爆弾を使用した際のデメリットを説明する。
圧縮爆弾とは核兵器並の破壊力に匹敵する大型爆弾で、核の汚染のないクリーンな破壊兵器であるが、その破壊力が強すぎて地形が変化し、惑星によっては条約で使用や所持、開発が禁止されている。


「構わん、構わん。どうせここはロルシア領の惑星じゃ。人が住めなくなっても、私には関係ないからの。それよりも連合軍を潰す方が先決じゃよ」
「そうですか……じゃあ、投下作戦を実行しますか? 将軍は、投下部隊に準備をするよう指示をお願いしますね。外にいるフレームアーム部隊には爆弾の護衛をお願いしてください」


コウ・ジュンは一切の躊躇なく圧縮爆弾の使用を進める。これから支配しようとする地域が荒廃しても自分には関係ないと発言する。
マリア大佐は心の中でコウ・ジュンという老人を侮蔑しながらも無表情のまま、後々圧縮爆弾の採用責任から逃れるようにマリア大佐自身はあくまでコウ・ジュンが作戦命令を出した形にする。


「うむ、命じておこう。ふー、早く終わってくれんかの?  私は国に帰ってゆっくりと過ごしたいものよ」
「この戦闘が終わるころにはきっと帰れますわ。さあ、もう少し頑張りましょうか(ふん、呑気なものね……)」


まるで対岸の火事のようにコウ・ジュンは愚痴を呟き、マリア大佐はコウ・ジュンをフォローする。心の中では侮蔑と失笑しながら。


「圧縮爆弾を投下するなど貴様たち、正気か!? この地を不毛の地にしたいのか!! あれは、核のような汚染こそないものの、地形を大幅に変形させる代物だぞ!!」
「ええ、それぐらいの威力ですから抵抗軍も一網打尽にできます。私は止めたのですが、司令官であるコウ・ジュンさんが、不利な戦況を覆すために投下を決意なされましたから、お願いしますね」


圧縮爆弾の投下命令を聞いたアブドバ大佐は激怒した。圧縮爆弾の投下が惑星にどれほど影響を与えるか怒鳴りつけるように説明し、再考を求めるが、マリア大佐は司令官であるコウ・ジュン単独で決めた命令であると伝え、作戦の実行を強行する。


「それと、大佐の部隊には護衛をお願いしますので投下部隊に被害が出ないようにお願いしますね」
「それは、命令か? マリア大佐?」


マリア大佐は怒鳴り散らすアブドバ大佐に淡々と護衛任務を命令する。アブドバ大佐は再確認するように命令を聞きなおす。


「はい、オルブ連合チャウワン司令部からの命令ですよ。それじゃあ、戦果を期待していますよ」
「了解……貴様らが地獄に落ちるのを待っているよ!!」


アブドバ大佐から一方的に通信を切られ苦笑するマリア大佐。いつもの癖で髪をいじりながらなにか考え事をする。


「んー、アブドバ大佐だけだと不安ですね。貴方たちにも向ってもらうわね。テレジアさんに、ニコライさん」
「了解、任しときなマリア!」
「任せてくれよ。ばっちり決めてきてやるよ!」


マリア大佐は背後にいたふたりの男女に命令する。二人はマリア大佐が率いるミスラル実働部隊に所属する傭兵で、髪を短く切りそろえた一見すると男性にも見えるアメリカンチャイナの女性テレジアと、長髪で色白、背の高い女性にも見えるドイツ人の男性のニコライの二人組だった。


「マリア大佐、僕達も出撃したいんだけど、いいかな?」
「せっかくこちらの援軍としてきたのに ただ見ているだけというわけにもいかないからな。吉良のストライクピースベルと俺のジャスティスピースベルが出れば、反抗軍を抑えられるはずだ」


マリア大佐に声をかけたのはオルブ連邦の郡服を着た20代の二人組の男性。
片方は日系人っぽい顔で吉良と呼ばれ、もう一人はヒスパニック系の顔立ちをした男性だった。


「オルブ連邦のエースである吉良大尉とネイザン大尉のお二人に出ていただけるなんて助かります。では、よろしくお願いしますね。(勝手に戦ってちょうだい。どうせ命令しても従ってくれないんだから)」


マリア大佐は営業スマイルを浮かべたまま心の中で毒づいて、ふたりの出撃許可を与える。
吉良とネイザン、二人はオルブ連邦から送られてきた援軍だが、独自の命令系統に所属しており、マリア大佐は二人を持て余していた。


「うん、任せておいてよ。さあ、行こうか、ネイザン」


吉良とネイザンはそう言うと手を繋いで出て行く。それを見てもマリア大佐は営業スマイルは崩さなかったが、実働部隊組のニコライとテレジアは思わずうわぁと呟いた。


惑星ロルシア激戦区で大規模な爆発が起こる。大きなキノコ雲が上がり、爆発の影響による地震と爆風で地上で戦っていた双方のフレームアーム部隊が転倒や吹き飛ばされたり甚大な被害を受けている。
戦闘機動で空中戦を繰り広げていたマイトも思わず戦闘の手を止めて、爆心地を探そうとする。


「な、なんだ? 今の爆発は……」
「マイト……あれを見ろ……」


ホワイト・スノーのカメラアイがズームされ、爆心地と思われる場所をコクピットモニターに映す。
モニターに映される爆心地は爆発する前はどんな地形だったか想像すら出来ない程ズタズタだった。


「地表が粉々に……地形が変わってるよ!?」
「ハアッ、ッ……それ、だけじゃないわよ。友軍機も結構やられたみたいよ……」


マイトはコクピットモニターに映し出される映像に唖然とし、言葉を失いかけた。
アナスタシアは青い顔で息も絶え絶えになりながらも司令部の通信を聞いていたのか、爆発の影響で友軍に甚大な被害が出たことをマイトに知らせる。


「周囲への配慮を無視した、威力重視の攻撃か……」
「どうやら、この土地がどうなろうとも構わんから 私達、連合軍を殲滅することにしたようだ……」


ホワイト・スノーとシンデレラも爆発の状況から相手側の意図を図る。


「むちゃくちゃだよ……これ以上落とさせるわけにもいかないよ! ホワイト・スノー、投下部隊がどこにいるかわかる?」
「北の方角に不自然に固まっている部隊がいる。恐らくはそれが投下部隊だと思われる」


ホワイト・スノーはコクピット内に搭載されたレーダーを使い探索を行う。マイトに知らせると同時にコクピット内のモニターに惑星ロルシアの地図を表記させて部隊の大まかな距離をマイトに知らせる。


「よし、その部隊へ攻撃を仕掛けるよ!」
「待ちなさい! いくらなんでも、補給してからじゃないと無茶よ」


マイトとホワイト・スノーが北の部隊に攻撃を仕掛けようとする。だがアナスタシアとシンデレラがふたりの進路を妨害し、立ち止まるように通信を送る。


「で、ですけど……投下部隊を放っておくわけにも……」
「前に、言ったでしょ? 自分の限界以上のことはしちゃダメだって、補給をしなきゃ、推進剤や弾薬が足りないのよ? このまま行っても、危険なだけよ!」


マイトはか細い声でアナスタシアに反論する。アナスタシアはワガママな子どもを諭すような優しい声で自分たちの状況を説明し、無茶と無謀を履き違えないように諭す。


「で、でも……」
「だったら、投下部隊は俺らに任せな! 遅くなって悪いな、補給から戻ったぜ!  お前らは補給をしてこい!」
「そういうことだ、こちらは任せてもらって構わない。二人ともすみやかに補給に向かってくれ」


マイトはそれでも投下部隊の迎撃に向かいたいとアナスタシアに伝えようとすると、割り込んでくる通信があった。
コクピットのモニターいっぱいに広がるヨシュアのニカっとした笑顔。そして一拍間をおいてセガールが通信に参加して、補給を終えて投下部隊の対処に向かうことを伝える。


「ヨシュアさんに、セガールさん……よろしくおねがいします!」
「任せとけ」
「安心して補給に向かってくれ」


マイトは投下部隊への対処をヨシュアとセガールに任せて、補給のために前線基地へ戻ることを決める。


「それじゃあ、僕たちは補給に戻りましょう、アナスタシアさん、僕を止めてくれてありがとうございます」
「ふふ、熱くなっちゃだめよ。冷静に対処しないとね」


マイトが補給のための帰還をアナスタシアに伝えるとアナスタシアはホッとした様子でマイトを注意する。


「あはは、了解です。ホワイト・スノー、急いで戻るよ!」
「ああ、わかっている。 一気に戻るぞ!」


マイトとアナスタシア、ホワイト・スノーとシンデレラが基地へ戻ろうとするとそれを妨害するようにどこからかビームが放たる。


「なんだと!?」
「攻撃だと!? どこからだ!?」


そのビームは寸分たがわずシンデレラとホワイト・スノーに命中する。パーソナルシールドが常時展開されていたおかげで致命傷にはならなかったが、二機は予想だにしなかった攻撃に驚愕する。


ビームが打たれた方向を向けば、ホワイト・スノーとシンデレラよりさらに上空に二機のピースベルが銃を構えていた。


「あれは!? ピースベルが……2体!?」
「一体は少し形が変わってるけど、ピースベルよね……ってことは、パイロットは間違いなく……テロリスト”平和の鐘”のエースパイロットの吉良は確定ね……」


マイトとアナスタシアもピースベルの姿を目視する。マイトはアナスタシアと出会うきっかけとなったピースベルに似た機体に警戒し、アナスタシアは平和の鐘のエースパイロットクラスが二人も来たことに臍を噛んだ。


「何にせよ……補給が心もとないこの状況では厄介だぞ……」
「ええい、いつもいつも面倒なタイミングで現れる!」


ホワイト・スノーとシンデレラは二機のピースベルを見上げて忌々しげな口調でぼやく。


「ネイザン、シンデレラのほうは任せてもいいかな? 白いほうのパイロットには借りがあるからさ……」
「情報通りなら、油断していたとはいえ、お前を大破寸前のシンデレラで堕としたんだったか? あまり私情にとらわれるなよ」


ピースベルのパイロットである吉良はホワイト・スノーを見つめながら、僚機であるネイザンに通信を送る。
通信を聞いたネイザンは仕方がないといった仕草でシンデレラの方に機体を向ける。


「大丈夫だよ。 それじゃあ、シンデレラは任せたよ」
「わかった、すぐに片を付けてやるよ。それじゃあ、シンデレラ、お前は俺が相手してやるよ!!」


ネイザンが搭乗するジャスティスピースベルがビームサーベルを抜いてシンデレラに急降下する。


「それじゃあ、たしかマイトくん、だっけ? あの時の借りを返させてもらうよ!」


吉良が搭乗するストライクピースベルが背中に搭載していた兵器を次々と射出していく。
射出した兵器は自律型のAIが搭載されているのかバーニアを吹かせながら変則的な軌道を描き、ホワイト・スノーに群がるとコの字の先端から次々とビームを射出していく。


ホワイト・スノーはビームを避けようとするが上下左右無数に群がる自立兵器に取り囲まれ、次々と被弾していく。


「ぐおっ!! っ……ホワイト・スノー、大丈夫!?」
「パーソナルシールドは減衰したが、なんとか無事だ。 だが、アナスタシアたちと分断されてしまった。 私たちは、どうやらあのピースベルが相手のようだ……」


自立兵器から逃れようとしているうちにアナスタシア達と離れてしまったマイトとホワイト・スノー。シンデレラたちに合流しようにも吉良が操るストライクピースベルと自立兵器が妨害する。


「しょうがない、ホワイト・スノー、なんとしてでもこいつを倒すよ!」
「わかっている。こいつを倒さねば戻ることもできそうにないしな……」


マイトは牽制するようにビームライフルでストライクピースベルを攻撃する。
ストライクピースベルは戦闘機動で回避を試みるが、マイトの射撃の腕の方が上なのか数発命中する。だが、ストライクピースベルの装甲には傷一つ付いた感じはしない。


「ホワイト・スノー、ピースベルのパーソナルシールドが強すぎてビームがきかない、実弾攻撃に切り替えて!」
「わかっている! すでに切り替えてある!」


実弾モードに切り替えたホワイト・スノーはストライクピースベルに攻撃を繰り返す。
ピースベル本体に命中しそうな攻撃は自立兵器を盾にして塞ぎ、逆に反撃として自立兵器による四方八方からのビーム攻撃を食らう。


「はは、相変わらず良い腕をしているみたいだけど、このストライク・ピースベルには当たらないよ! さあ、あの時の借りを返させてもらう。そして、平和のためにも君はここで落ちてもらう!!」


ストライクピースベルは両手に持ったビームライフルと両肩のビームカノンを展開する。自立兵器もストライクピースベルの攻撃に合わせるようにホワイト・スノーを牽制しながら射線へと追い込んでいく。


「ターゲット・ロック、フルバースト・セット!!」


ストライクピースベル、自立兵器から同時に四方八方へとビームが乱射される。ホワイト・スノーは戦闘機動で回避しようとするが徐々に追い詰められ、被弾率が増えていく。


「まわりに浮いている砲台からの攻撃が避けきれない……なんなんの、あれ?」
「 分離式統合制御高速機動兵装群ネットワーク・システムだ。 空中に設置した飛行砲台に、量子通信を利用して指令をだし、全方位に対して任意の攻撃を仕掛ける兵器のようだ……」
「この戦闘で忙しい中で難しい言葉で言われてもわかんないよ! 3行で説明して!」


自立兵器の攻撃は一発一発は弱いが、複数方向から撃たれる為、パーソナルシールドの出力がガリガリと削られていく。
マイトは未確認兵器の正体をホワイト・スノーに聞く。ホワイト・スノーは律儀に答えるが、専門用語が多過ぎることと戦闘中でじっくりと話が聞いてられないので、マイトは怒鳴る。

「 一人で複数の砲台を制御、こっちは実質、複数機対1機! 攻撃を避けても、避けた先から攻撃が来る、こんなところだ!!」
「んなっ!? なんてずるい兵器だよ! 対抗手段は無いの? っ、また当たっちった……」
「砲台を破壊してしまえばいいだけのことだが……」


ホワイト・スノーは自立兵器の一つに照準を向けて攻撃を試みるが、こきざみに動き回る自立兵器はかすりはするが迎撃には至らない。


「見てのとおり、的が小さいうえに動きが速い。なかなか容易には、壊せないだろうな……」
「クソ……手も足も出ないっていうの……パーソナルシールドがあるうちはダメージはないけど……このままじゃジリ貧だよ」
「さあ、このままストライクに堕とされるといい」


マイトは手も足も出せずに徐々に追い詰められていく。コクピットに表示されるパーソナルシールドの出力数値が自立兵器の攻撃が命中するたび減っていく。
吉良は勝利を確信し、ターゲットレンジにホワイト・スノーを定めてていた。

          

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品