流れ星が落ちた場所で僕は君と出会った。

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

手を伸ばせば届く命



「さて、さすがに弾薬や推進剤が厳しくなってきたな。総撃墜数は54機か……これだけやっても半分とは、嫌になるな。しかも、増援が向かってきているようだし、どうしたものか……」


アルチョム大尉が檄を飛ばしてから1時間後、アルチョム大尉の部隊は一機もかけること無く奮戦している。
だが数はチャウワン軍の方が遥かに上で、敵の通信を傍受して造園が来ていることもわかった。
一機もかけてはいないとは言え、被弾は0ではなく、アルチョム大尉の部隊のフレームアーマー達は被弾し、装甲が剥げ、徐々に追い詰められていっていた。


「……大尉たちはそろそろ撤退してください。O・C・Uの救援部隊がロルシアに来ているそうです。そちらに向かえば運が良ければ助かるでしょう。ここは、俺が食い止めます」
「サーシャ!! 貴様、どういうつもりだ! 私に貴様を犠牲にして逃げ出せというのか!」


サーシャから入った通信内容にアルチョム大尉はスピーカーを叩きつけて怒鳴る。


「大尉、俺が残るのが一番効率のいい作戦です。この中でまともな武装が残ってるのは俺のケッペンだけです。大尉たちは弾薬も少ない、近接武装も折れてるでしょう?」


サーシャの指摘通り、他の部隊メンバーの機体は武器の弾薬も少なく、被弾や酷使で近接武器も消耗しきっている。
サーシャが搭乗するフレームアーマー【ケッペンクラード】は重装甲、重火器による正体支援を目的とした機体で、まだまだ使用できる武装は残っている。


「もしかしたら、大尉たちが逃げた先で連合軍と合流できるかも知れません。その時は助けに来てください。それまで、俺がここを引き受けます」
「……サーシャ、絶対に……絶対に死ぬな、いいか、これは命令だ! 我々はこれより連合軍の援護を求めに行く。援軍をつれ必ず戻る、死ぬなよ」


サーシャの覚悟を汲み取ったアルチョム大尉は絞り出すような声でサーシャに死ぬなと命令する。
他のメンバーには見えないが、アルチョム大尉は悔しさと自分の不甲斐なさに唇を噛み締め、血を流していた。


「はは、了解しました、何とか生き残って見せましょう。セガール、カーン、ゲイ……キャサリン、短い付き合いだったが楽しかったぜ。大尉殿は任せた、俺たちの依頼を達成してくれ」
「サーシャ、大尉殿は任せろ。お前も無茶はするなよ」


セガールが別れの挨拶をするとアルチョム大尉を連れて戦線を離脱していく。
サーシャはセガール達の背中を見送るとスキットルに残った液体を飲み干し、レバーを握り直す。


「おう、それじゃあな。じゃあ、お前たち後は任せたぜ!! ケンプ、敵を食い止めるぞ!」
「了解! 私たちは仲間のために路を開きましょう」


ケッペンクラードは両方に搭載したシュツルムファーストを手にして、敵軍に撃ち放つ。
爆煙が巻き上がる中に突っ込むと両腕に搭載されたアームガトリンクを乱射し、敵をひきつけた。


セガール達は振り返ること無く連合軍がいると思われる地点へと向かう。
サーシャが生きている間に援軍を連れてこれるようにとフルバーストで飛び立った。


「オラオラ! 絶対に俺の後ろには行かせねーぞ!!」
「アームガトリンク残弾500……300……100……サーシャ、弾切れです」
「チッ、次の武器を……」


アームガトリンクの弾幕が弾切れで途切れた瞬間、チャウワン軍のフレームアーマー【フォッカー】が殺到する。


「ここまでか……大尉どうかご無事で」


死を覚悟したサーシャ。だが、次の瞬間殺到したフォッカー達の頭部に次々と穴が空いて一拍置いて爆発する。


「まーったく一人でカッコいいことしてるんじゃないわよ。大尉殿はセガールに任せたから、アタシはサーシャを手伝うわん」


ケッペンクラードの後方上空に浮遊するフレームアーマー【ヴァイス】が長身の銃を敵に向けて撃ち続けていた。


「おいおい……大尉殿の護衛が減ったらダメじゃねえかよ」
「は、俺らが敵を通さなきゃいいだけの話だ。つうわけで、俺もこっちに残るぞ」
「さて、これでステイクの残弾も最後だぞ、カーン」


サーシャがキャサリンに文句を言おうとすると、積雪を舞い上げて突貫してくるダイングラード。
フォッカーの一機に肉薄したかと思うと、腕に搭載されたパイルバンカーでコクピットごと貫く。


「お前もか、カーン。まったく、協調性のないメンバーだな。まあいい、大尉殿とセガールが逃げれるよう敵を食い止めるぞ」
「あいよ、まあ任せとけ」
「援護はしっかりしてやるよ~ん」


ミーシャ、カーン、キャサリンの三人と、ケッペンクラード、ダイングラード、ヴァイスは未だ大多数残るフォッカーの大軍の中へと突っ込んでいった。





「惑星ロルシアって一面雪景色ってやつだね~。ホワイト・スノーは、この雪の中だったら見つかりにくいんじゃないかな?」
「たしかに、ちょうどいい保護色になっているな。奇襲を仕掛けたりするにはいいのかもしれん」


惑星ロルシアへとたどり着いたマイト達は編隊を組み、哨戒任務に当たっていた。
チーム編成は傭兵組がマイトとホワイト・スノー、アナスタシアとシンデレラ、ヨシュアとブラックドッグ。
正規兵としてO・C・U軍のマックス中尉とゼニアスP8、アンジェラ少尉とブラックドッグ、そしてアルメリア帝国からウザク・ウズキ少尉と右腕に装備されるランスと左腕に装着された大盾が特徴の白と青の塗装がされたフレームアーマー【アグニ】
合計6名と6機が編隊を組んで惑星ロルシアの空を飛んでいた。


「お、なんだ、マイト、単独で敵陣に突っ込むのか?」
「いやいや、そんなことしませんよ。いくらなんでも無茶です」


マイトとホワイト・スノーの会話を聞いていたヨシュアがチャチャを入れ、マイトが本気にとって必死に否定する。


「はは、そりゃそうだわな。まあ、軽い冗談だよ、冗談。しっかし、そろそろ敵さんに出くわしてもいい頃合いな気がするんだがね」
「出て来ないなら、それにこしたことはないんだけどね~」


必死な様子のマイトの返事を聞いてヨシュアは笑いながら話題を変える。
マイト達の現在地はオルブ連邦に味方したチャウワンの勢力圏内、ヨシュアの言うう通りいつ遭遇してもおかしくない状況だった。


「確かに出て来ないにこしたことはないんだが……そう上手くもいかないだろうな」
「ご歓談中申し訳ないのですが、先行している正規軍からの連絡です。ロルシア軍の生存者と接触したようです」


ヨシュアが搭乗するブラックドッグのサポートAIが正規軍からの通信を受け取り、マイト達に伝える。


「助けることができたの? 間に合ってよかった」
「そうでもないみたいよ。保護できたのは正規兵士官一人と傭兵一人だけ。それと、士官の人が、傭兵が3人残っているから助けてほしいって言ってるわね」


ブラックドッグからの通信を聞いてマイトはほっと一息つく。だが、アナスタシアが正規軍の通信の続きを聞くと、助かったのは傭兵と正規兵士官の二名のみで、戦場で孤立している傭兵が三名いると繰り返し伝えている。


「こっちの正規兵のほうじゃあ、傭兵は無視することになりそうだな。ロリックの士官を助けただけで十分だからな。好き好んで危地に向かうことはしないだろうよ」
「そんなっ! 見殺しにするんですか!?」


同じく連合軍の通信を聞いていたヨシュアが戦場に残った傭兵が見捨てられることをマイトに伝える。マイトは見捨てる行動を取ろうとする連合軍に怒りを覚えた。


「連合軍の正規兵は、傭兵を見殺しにするでしょうね」
「そんな、今からでも急いで迎えば助けられるかもしれないのに……」


マイトは悔しそうに歯を食いしばり、操縦桿を握る力が増す。ホワイト・スノーは何も言わず、ただマイトの行動を見守っていた。


「まあ、連合軍の正規軍としては傭兵のために、わざわざ危ない事したくはないだろうよ。ただ……」
「同じ傭兵としては、助けてあげてもいいわよね。いつ自分たちが同じ目に合うともわからないし。情報通りなら、そこまでキツイわけでもなさそうだしね」
「そ、それじゃあ!」


ヨシュアとアナスタシアの言葉にマイトの表情は輝く。正規軍は助けに行かなくても、マイト達傭兵が助けに行ってはいけないわけではない。


「おう、俺らは援護に向かってやろうぜ。敵さんの戦力はフォッカーが5~60体。 楽勝とは言えないが、弾薬さえもってりゃ、いけなくもねえ」
「危なくなったら、孤立してる傭兵たちつれて正規軍のところまで引っ張ればいいのよ。自分たちの近くに敵が来たら嫌でも戦うでしょ?」
「はい、了解です! じゃあ、孤立してる傭兵さんたちを助けに行きましょう!!」


アナスタシアはただ助けに向かうだけでなく、劣勢の場合は敵を正規軍がいるエリアにおびき寄せる方法もマイトに伝える。
周囲の環境も利用する傭兵の強かさをアナスタシアは実地でマイトに教えようとしていた。



「やれやれ、お人よしな奴らだ。まあ、私ならばフォッカー程度たすく堕とせるのだから、その自信もわかるがな」
「珍しいな、私も貴様と同意見だ。さて、私達も全力を持って救出に向かってやろう」


今まで口を挟まず沈黙を保っていたホワイト・スノーとシンデレラもお互いに軽口を叩いて救出の準備をする。


「なかなか、面白いことを計画しているようじゃないか。私もその作戦に参加させてもらおう!」
「お前ら、アタイも混ぜろよ! エースがいなきゃ話になんねえだろ?」
「マックスさんに、アンジェラさん?  お二人は正規軍ですよね? 僕達と救出に向かったら、命令無視になってしまいますよ?」


マイト達傭兵組の通信内容を聞いていたO・C・U正規兵であるマックス中尉とアンジェラ少尉が救出作戦に参加しようとする。
マイトは二人の参加に驚き、命令違反になると必死に止めようとする。


「命令違反など、この私は気にはしない!  それに、独立行動をとった傭兵を監視することも我々、正規兵の務めだ! こうすれば十分についていく理由にもなる! 司令部、傭兵部隊が独自行動をとったのでその監視に向かう、以上だ!!」
「え、ちょっと大尉、どういうことですか!? もしもし? もし……」


だが、マックス中尉はマイトの説得など聞く耳持たず、司令部に通信をつなぐと傭兵の監視に向かうと一方的に告げて通信を切る。
司令部は寝耳に水といった感じで聞き返そうとコールを繰り返すがマックス中尉は無視する。


「アンジェラ少尉、マックス中尉に随伴することで傭兵たちの監視をいたします! これで、アタイも問題はないぜ!」
「ふふ、いいじゃない。これで5人、一人頭10体ほどのフォッカーを撃破すれば終わりよ」


マックス中尉の通信に追従するようにアンジェラ少尉も司令部に傭兵についていくことを一方的に告げて、司令部からのコールをわざと無視する。
二人の行動にアナスタシアは心底嬉しそうに笑いながら、撃破のノルマを計算して全員に告げた。


「では、自分も参加すればさらに早く殲滅できますね。アルメリア帝国宰相シュナイザー殿下の命令を受け、ウザク・ウズキ少尉、救出作戦に参加いたします」
「ハハ、アルメリアの兵隊さんもご参加してくれるなら心強え。まあいい、おーっし手前ら、孤立してる傭兵助けに行くぞ!」


ずっと沈黙を保っていたアルメリア兵のウズキ少尉が通信に参加したかと思うと、同じく救出に向かうと明言した。
ヨシュアは何も接点のないアルメリア兵に疑問をいだいたが、数が多いことには越したことはないと疑問を飲み込み、アルメリア兵の参加を歓迎した。


「了解です! さあ、ホワイト・スノー! 手を伸ばせば救える命、僕達で救ってみせるよ!」
「言われるまでもない! 先陣は私達が務めるぞ、一気に駆け抜ける!!」


マイトがそう宣言するとホワイト・スノーも答えるようにブースターを全開ににして一気に最高加速へと持っていく。


「青いな……だが良い! なんてまっすぐで、良い蒼さだ!」
「ふふ、それがマイト君の良いところよ」


一気に目視エリアから消えるように加速して先行していったホワイト・スノーの背中を見てマックス中尉は呟く。そのつぶやきが聞こえたのか、コクピット内で胸を張って鼻高々に自慢の弟を褒めるアナスタシアの姿があった。


「いた! 良かった、被弾はしてるけど、皆生きてる!!」


先行したマイトとホワイト・スノーはアルチョム大尉を逃がすために殿を務めた傭兵達が戦っている地点へと到着した。
フォッカー達に取り囲まれ、必死に逃げ回り反撃を繰り返している傭兵達の姿を見て間に合ったことに安堵するマイト。
パネルを操作し、ホワイト・スノーの両肩に搭載された分裂ミサイルの安全装置を解除し、モニターに映るフォッカー達に照準を定めた。


「マルチロック完了!! ホワイト・スノー、分裂ミサイルを撃ちこんで、安全地帯をつくるよ!」
「了解した、安全装置解除確認、発射する!!」


バカン!とホワイト・スノーの両肩に搭載された分裂ミサイルの発射口が開かれると、両肩から発射される無数の小型ミサイルが上空へと真っすぐ飛び、小円を描いて雨霰とフォッカー達が群がるエリアに降り注ぎ爆発していく。
量産型フレームアーマーであるフォッカーはホワイト・スノーの分裂ミサイルに耐えれる装甲ではないのか、直撃を受けたフォッカーは爆発四散し、近距離で爆撃を受けたものは機体が半壊したり、戦闘行動が困難な損傷を受ける。


「マイト君が、路を開いてくれたから、次は私たちの番よね」
「まずは、一機目だ!」


後方からアナスタシアが超長距離射撃でフォッカーを狙撃する。
殿を務めていた傭兵達の機体に攻撃をくわえようとしていたフォッカーの一体がシンデレラの攻撃を受けて爆発四散した。


「オラオラァァァッ!! モタモタしてっと喰い殺しちまうぞ!!」
「エースのアタイから逃げられると思うなよ!!」


マイトが作った安全地帯にアナスタシアの狙撃の援護を受けてヨシュアとアンジェラ少尉と二機のブラックドックという黒い猟犬が戦場を縦横無尽に暴れまわり、フォッカー達を食い殺していく。


「この程度では、私をとらえることはできんぞ!」
「敵中央へ突撃する!」


マックス中尉が搭乗するゼニアスP8はお得意の変形攻撃、マックス・スペシャルを駆使して一撃離脱の攻撃でフォッカー達を惑わす。
戸惑い、陣形を崩したフォッカー達の集団にウズキ少尉が操るアグニが突貫し、その盾で突き飛ばし、ランスで突き刺していく。


「そろそろ、一気に決めるっ! アサルト・アタック展開準備!! 皆離れていてください!!」
「巻き込まれたらただでは済まんぞ!! アサルト・アタック発動する!!」


アサルトアタック、それはマイトが半壊寸前のシンデレラに搭乗していた時にピースベルを倒した必殺兵器。
コンバットシェルの周囲に展開してるパーソナルシールドのエネルギーを過負荷させて半透明のフィールドが膨張し、大爆発を起こす大破壊兵器。
弱点として発動後はパーソナルシールドが一時的に使用不可になり、著しく防御が低下することだ。


「これで、終わりだよ」
「敵残数0、増援の様子なしひとまずは安全を確保できたな」


使い所を間違えなければ戦況を一気にひっくり返す一撃必殺兵器となる。
事実、マイトのアサルトアタックによって殿に残ったフォッカー達は文字通り絶滅した。
そこにあるのは爆発によってできたクレーターと、クレーターの上空を浮遊するホワイト・スノーだけだった。


「はは、こちら、傭兵のサーシャだ。あんたたちのおかげで助かった、感謝するぜ」
「困ったときは、お互い様です。さあ、今のうちに本隊に合流しましょう」


シンデレラの手によって後方へと避難していた傭兵の一人、サーシャが礼を言う。アナスタシアは傭兵の流儀に従っただけだと返事を返した。


「了解した。カーン、キャサリン、行こうぜ」
「わかったぜ」
「はーい、はいっと、んー生きてるって素晴らしい」


殿に残った傭兵三人組は生き延び、生を実感して本体がいる場所へと向かう。


「何とか救えて、よかったです」
「そうね。でも、油断や慢心をしちゃだめよ。次もうまくいくとは限らないんだからね」


誰一人かけることなく全員を救出できたことにマイトは心底ホッとした。だが、油断大敵とばかりにアナスタシアが釘を刺す。


「さて、戻ってヴァネッサに整備をしてもらおう。だいぶ激しい機動を繰り返したからな」
「同感だ、私も整備を頼まねば関節パーツが危険だ」


ホワイト・スノーもシンデレラも戦闘が終了したことを確認するとセルフメンテナンスプログラムを走らせて自身のコンディションを調べる。
セルフメンテナンスプログラムで異常箇所を見つけると整備担当であるヴァネッサに見てもらおうとホワイト・スノーとシンデレラは呟く。


「私が先だぞ」
「私が先に決まってるだろう……」
「なんだと?」
「なんだ、やるのか?」


お互いの呟きが聞こえたのか、今度はどちらが先に診てもらうか言い争い始める。

「もう、ふたりとも喧嘩しない!」
「本当にあなた達って仲良しよねえ」


「「こいつと仲良しなど御免こうむる!!」」


アナスタシアとマイトが仲裁に入り、ホワイト・スノーとシンデレラが異口同音で抗議をする。
最後までホワイト・スノーとシンデレラはどちらが先に診てもらうか言い争いを続けていた。

          

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