流れ星が落ちた場所で僕は君と出会った。

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

式典第1試合



O・C・U主催:新型起動兵器発表展覧会記念式典会場。そこは地平線全てを埋め尽くすような人と人型戦闘用ロボットが展示されている。


「すごく大きな式典なんですねー」
「一応、世界中の企業が新型を発表するわけだからね。緊張してきた?」


マイトは特注で作ってもらったマイト用男性パイロットスーツを着て脇にヘルメットを抱えて式典会場をキョロキョロと見回している。
付き添いで一緒に歩いているアナスタシアはマイトの背を叩いて声をかける。


「緊張もしますけど……こんなに大きな式典に自分が出るという実感がわきません」
「まあ、緊張しようが、実感がなかろうがお前のやることに変わりはねーよ」


ニカッと笑ったヨシュアがガシガシとマイトの頭を強引になでながらフォローになってないようなフォローをする。


「ヨシュアの言うとおりだ。マイト君は訓練通りにしてくれればいい」


式典用の軍服を着て気持ちを引き締めたアナベル少佐が硬い口調で話す。


「他企業との模擬戦っていうのは不安なんですけどね。本当に負けちゃったりしてもいいんですか?」
「もちろん勝てるなら勝ってくれていいぞ。そのほうがうちの機体の評価が上がるからね。まあ、さすがに相手もエースばかりだ、いくらなんでも、勝てなんて無茶を言うつもりはない」
「むしろ勝てたら驚きだわ。ちょうどいいから、ボコボコにされて敗北を学んどけ、敗北を学ぶのは早いほうがいいからな」


マイトは自分の頭を撫でるヨシュアの手から逃げながら、アナベル少佐に声をかける。
アナベル少佐はマイトが気負わないように負けてもいいと答え、ヨシュアも最初に負けを知れと言う。


「それじゃあ、マイト君は機体のところで最終調整を頼むよ。自分達は客席で見てるんでね」
「はい、頑張ってきます!!」


マイトは元気よく返事をするとアナベル少佐達3人と別れて割り当てられた格納庫へと向かった。


「座席の調整よし、計器のチェックっと……うん、整備の人は流石ですね。パイロットが全力を出せるように完璧に整備してくれてる」
「システムオールグリーン。モンダイアリマセン」


マイトはブラックドッグのコクピットで最終調整をする。細かい場所は専属の整備士が調整しており、マイトがやってるのは項目確認とパイロットシートの位置調整ぐらいだ。
最終調整を終えればあとは試合時間まで待機するだけ。マイトは格納庫に併設された保養室で休憩していた。


「なあ、おい。お前がブラックドッグのテストパイロットになった傭兵か?」
「あ、はい、そうです」


保養室で休憩していると一人の女性パイロットに声をかけられる。
パイロットスーツにはO・C・U軍の軍旗ロゴがプリントされてることからマイトはO・C・U軍の正規兵と認識し、返事した。


女性パイロットは金色の長い髪が邪魔にならないようにポニーテールに纏め、化粧気のない素顔でマイトを睨んでいた。
マイトは女性の睨み顔よりもその豊満な胸に視線が向いていた。


「ふ~ん、お前がか……いいか、そのブラックドッグは元々、アタイが操縦するはずだったんだ」


女性の方はマイトの視線に気づいてないのか、気にならないのか、マイトの顔をじっと睨みながら文句を述べる。


「アタイはお前の実力とやらを知らねえが、お前よりもアタイのほうが新型にふさわしいってことを証明してやる。覚悟しとけよ?」


女性パイロットはそれだけ告げると立ち去っていく。
マイトは呆然と見送るだけだった。


「行っちゃった……やっぱり正規のパイロットの人にとっては腹ただしいことなんだね……」


依頼契約時にヨシュアが訓練官を名乗り出たときに述べたトラブル回避の意味をマイトは今理解した。
彼女からすれば厳しい訓練や選考を耐え抜けて手に入れたかも知れないテストパイロットの地位を横入りで取られたような感覚なのだろうか。
立場を自分に置き換えれば彼女の怒りも理解できたマイトだった。


「あの人の気持ちもわかるけど、これは僕に任された仕事だから譲ることも負けることもだめだと思う……」


改めてマイトは決意すると会場全体のスピーカーから第一試合を開始するお知らせが一斉放送された。



「さあ、一緒に頑張ろう、ブラックドッグ。君と僕、両方の初陣だよ」
「リョウカイシマシタ」


マイトはブラックドッグのコクピットに搭乗してパイロットヘットを装着する。
コクピット内のパネルをいじり、ブラックドッグのサポートAIに指示して試合に備える。


「さあ、各国、各企業の誇る最新鋭機が続々とその姿と性能を披露する今回の式典、続いては主催地O・C・Uの国営企業であるO・C・U軍事産業体の新型機 ブラックドッグの登場です」


会場上空に巨大なスクリーン・モニターが現れ、祭典の司会進行役が各国各企業の機体を紹介し、模擬戦を実況する。


「ブラックドッグはどのような性能を見せてくれるのでしょうか。それではみなさん、試合のほうをご覧ください!!」


進行役の解説と同時に巨大モニターはマイトの試合会場を映す。
そこにはブラックドッグとブラックドッグの前身機と言われるアーミーグリーンに塗装されたフレームアーマー【リオス】が対峙していた。


2機のフレームアーマーがモニターに映し出されて、それぞれの機体性能が表示される。それを見て祭典の観客は大いに盛り上がり歓声が響き渡る。


「ブラックドッグに搭乗するのはなんと傭兵になってまだ一ヶ月の新米パイロット。O・C・U軍事産業体はブラックドッグの操縦性をアピールするために新米パイロットを採用したそうです」


スクリーン・モニターにはマイトの簡易経歴と写真が表示される。
それを見て観客たちは転倒するな、無様な真似をするなと野次を飛ばす。少数だがマイトの写真を見てかわいいと言った黄色い声援も混じっていた。


「対するリオスに搭乗するのはO・C・U軍の女性エースパイロット、アンジェラ・シーカー少尉!!」


司会進行がアンジェラ少尉を紹介すればマイトの時よりも大きな拍手と歓声が沸き起こる。O・C・U軍内外に人気があるようだ。


「それでは試合開始です!!」


試合開始の合図と同時に双方の機体が戦闘モードを起動したことを知らせるようにカメラアイが光った。


「手加減抜きの全力で行かせてもらうぜ。新型機にふさわしいのは、O・C・U軍エースのアタイなんだよ!」
「ブラックドッグの性能を世界中に見せるために、こちらも全力でお相手します」
「フルブースト サイダイソクドニテ チャージシマス」

ドウっとブラックドッグの背中に搭載されたブースターが点火され、数秒でフルブーストされる。音速の壁を突き破る衝撃と加速Gがコクピットを揺らした。


「いきますよ!!」


ブラックドッグの右手に装備された突撃銃でアンジェラが操縦するリオスに攻撃する。


「チッ! いきなり突撃たあ、思い切りいいじゃねえか!!」


リオスもブーストを展開して上昇し、空に逃げる。マイトが撃った弾は先程までリオスがいた地面に命中し、塗料が撒き散らされる。
模擬戦用に弾薬にはペイント弾が使用されており、ペイント弾には微弱な電流が流れ、機体に命中すると電流を感知して機体の損傷を計算する仕組みになっている。


「確かに腕は良いみたいだけど……その程度じゃアタイは落とせねえぞ!! オラ、お返しだ!!」


アンジェラは機体を上昇させながら、マイトが操縦するブラックドッグめがけて突撃銃を乱射する。
マイトは巧みにサイドブースターを利用して、右へ左へ蛇行飛行して巧みに回避していく。


「カイヒリツ95% ソンショウナシ セントウニモンダイナシ」


ブラックドッグのサポートAIが戦闘状況をリポートする。
マイトは蛇行飛行しながらアンジェラ機へと距離を詰める。
アンジェラ機は近づけさせまいと銃弾の雨を降らせるが、飛行速度はブラックドッグの方が優れているのか徐々に距離を詰められていく。

「くそっ! なんで当たらねえ!?」
「わずかでも隙間があるなら、そこを通れば! 僕は避けることができる!!」


お互いが近接戦闘可能領域まで接近すると左腕部に搭載された模擬戦用のブレードを展開する。


「本気で近接戦闘しかける気か!? 面白い子ね、乗ってやるわ!!」
「いまだっ!!」
上昇をやめたアンジェラ機は姿勢制御してマイト機に向かって急降下する。
マイト機は蛇行飛行をやめて迎え撃つように上昇飛行する。
お互いの機体が交差し、離れていく。


「ダメージカクニン……ウワンブソンショウハンテイ……ケイビ、ドウサシュツリョク69%ニテイカ……セントウゾッコウカノウデス」


ブラックドックのサポートAIが機体損傷のリポートをする。
マイトが試しにブラックドックの右腕部を動かすと若干のタイムラグを感じる動作をした。


一方、アンジェラが操作するリオスは戦闘機動を解いてゆっくりと地上へ下降していく。
試合結果を告げる巨大モニタースクリーンにはリオスが大破判定を受けたことを表示する文字が映し出されていた。



「僕の……勝ち?」
「イエス、テキタイタイショウハ、フクブカラキョウブニカケテダメージ、タイハハンテイデス」


会場の巨大モニターにはリプレイ映像が流れ、リオスの攻撃をブラックドッグの右腕で受けて、カウンターを決めるようにリオスの腹部から胸部へと逆袈裟に斬られている映像が流れていた。


「試合終了!! いやはや、なんという高速戦闘でしょうか。開幕早々の激しい銃撃戦からの、一対一の空中高速近接戦闘と素晴らしい試合でした」


司会進行の解説と同時に試合を見ていた観客からはマイトに向けて惜しみない賛辞と拍手が送られる。


「おお、おお、大成功じゃねえか! 相手のパイロットさんもやる気だったってのに」
「まったくだ。成功してもらえると効果がでかい」


ビールにホットドックと完全に観客モードのヨシュアがマイトの試合結果を見て呟く。
アナベル少佐も両手を握りしめて興奮が隠せないようだ。


「ふふ、依頼は成功と認識してよろしいですか? 報酬のほうよろしくお願いしますわね」
「ええ、わかっていますよ」


アナスタシアは試合結果とアナベル少佐の興奮具合から依頼が完了したか再確認する。
アナベル少佐は満貫の笑みで報酬を約束した。


「さてと、んじゃあ、俺はマイトの奴を拾いに行ってくるわ。他の企業の機体の動きも見せておけば、勉強になるだろうよ」
「ああ、ヨシュア、マイト君は私が迎えに行くわよ。これでも上司なんですからね」


ヨシュアはビールを飲み干して、紙コップをゴミ箱に投げ捨てるとマイトを迎えに行こうと席を立つとアナスタシアが声をかけて自分が迎えに行くとヨシュアに告げる。


「ん? そうかい、んじゃあ、まかせるわ。ついでにビールのおかわり買ってきてくれね?」
「いいわよ。私ものどが渇いたし、アナベル少佐は何か飲みます?」
「勤務中になるので、自分はミネラルウォーターで」


アナスタシアは二人の飲み物を聞いてからマイトを迎えに行った。


          

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