流れ星が落ちた場所で僕は君と出会った。

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

平和の鐘と灰かぶり姫



惑星軌道上で二機の戦闘用ロボットがチェイスを行っていた。
追われている方は舞踏会のドレスのような特徴のスカート型の脚部を持つ人型ロボット【シンデレラ】。
シンデレラはあちらこちらに損傷を受けて姿勢制御すらままならないようだ。


追いかけるのは頭部から後頭部へ反るような二本の角が特徴的な人型ロボット【ピースベル】、背中と腰に2対のビームキャノン砲を搭載し、撃墜しようと攻撃を繰り返す。


「っ…しつこいわねぇ……どこまで追いかけてくるつもりなのよ!」
「こちらを落とすまでは追いかけてくるつもりなのだろう? 迷惑な話だ。これも君の日ごろの行いが悪いからでは?」


シンデレラに搭乗しているパイロットがメインカメラモニターに映るピースベルを見て悪態をつく。
ロック警告音が聞こえればバーニアブーストを吹かしてランダム回避を行う。
コクピットからは電子音声でパイロットの呟きに皮肉を込めて返すサポートAIの回答が響く。


「そんなわけないでしょう! 第一、私は悪いことなんてしてないわよ!!」
「そうだといいのだがね……っと、また来るぞ」


警告音が響き、すぐ脇をビームが通り過ぎる。


「この程度の射撃、あたらないわよ!!」


合計4発のビームキャノンが追跡者であるピースベルから発射されるが回避に成功したシンデレラのパイロットはカメラに映るピースベルの機体に中指を立てる。


「……!?  まずい、今のは牽制のようだ! 本命が来るぞっ!!」
「ハァ!?」


ピースベルからまた発射されるビームキャノン。右へ左へと機体を揺らして回避するが……


「――――!!」


爆発音と同時にコクピット内に衝撃が走る。パイロットシートで体が固定されているが、衝撃が強かったのか声にならない呻き声を上げる。


「メインブースターにかすった…… 高度が維持できないだと!? このままでは……墜落するぞ!」


シンデレラのサポートAIが損傷を確認し、メインブースターに被害が出たことを警告。
コクピット内が緊急を知らせるレッドライトで照らされ、アラームが騒がしく鳴り響く。


「シンデレラ! 姿勢制御をっ!!」
「やっている! だが出力が足りん!! アナスタシア、衝撃に備えろ!!」


星の重力に捕らえられたシンデレラと呼ばれる機体が墜落していく。
大気圏に突入し機体が熱で赤く染まった。惑星の地上からそれを見上げれば流れ星が墜ちるように見えただろう。




「あ、流れ星!」


洞窟から出たマイトは空を見上げると流れ星を発見し、そして呟いた。


「あれ……こっちに落ちてくるような……うわっ!?」


流れ星はマイトの頭上を通り過ぎ、轟音を立てながら山の樹木達をなぎ倒し、地面を削りながら墜落していった。
墜落の衝撃で巻き上がった粉塵から逃げるように洞窟に戻り、収まるのを待つ。


「さっきの流れ星は一体……近くに落ちたみたいだけど……」


マイトは流れ星の正体を確かめようと墜落現場へ向かう。


「えっ……ロボッ……ト……? なんでこんな星に?」


マイトが流れ星の墜落現場にたどり着けば、地面を削ったような跡の終着点に全長10m級の戦闘用ロボットが横たわっていた。
あちらこちらに損傷を負い、装甲が割れた部分には断線したケーブルが紫電の火花を放っている。


ガコンっとロボットの胸部部分が音を立てて開くとパイロットと思しき人が這い出してきた。


「そこの人大丈夫!? って……血が……たくさん……」
「痛っ、最悪ね……なん、か、意識が、はっきり、しないし……さす、がに、もう、どうしようも、ない、かな……」


マイトが近づいてもパイロットはマイトの存在には気づいていなかった。
墜落の時にヘルメットは破損したのか、コクピットから這い出した時には装着していなかった。
元は銀色だったと思う髪は血で赤黒く汚れ、息をしようとすると血の混じった咳をしている。身体も怪我しているのかパイロットスーツも赤く染まっていた。


「ねえ! そこの人、大丈夫? 意識はある? 怪我はどう?」
「この辺の、子供!? ここは、危な、いから、早く、逃げな、さい!」


マイトが声をかけて初めてパイロットはマイトの存在に気づき、驚愕する。
シンデレラのパイロットは薄れ行く意識の中で必死にマイトに逃げるように説得する。


「いや、僕のことより、お姉さんのほうがやばいでしょ!? なんか、すごい血が出てるけど大丈夫なの!? 逃げるんならこの近くに洞窟あるから一緒に逃げよ!!」
「私の、ことは、いいから、急ぎなさい!! 急がないと、本当に……痛っ、ハァ、私は、大、丈夫、だから、にげ、な、さい……」


マイトは逃げる様子もなく涙を浮かべ心配そうな顔つきでパイロットに声をかける。
パイロットはマイトを逃がそうと気丈に振る舞い、起き上がろうとして気絶した。


「ああ、お姉さん!? と、とりあえず、いそいで安静に、だから、あの洞窟まで、でも、怪我があるから安全に運ばなきゃだし」
「おい、貴様」


気を失ったパイロットを抱きかかえようとしてオロオロするマイト。
そんなマイトに機械音声で声をかける存在が居た。


「聞こえていないのか、貴様だ、そこの少年!!」
「ろっ……ロボットが喋った!? ってサポートAI付きの機体!?」
「貴様に頼みたいことがある。そこで倒れた彼女を安全な場所に運んでくれ。時間稼ぎなら、私がしてやるから、なんとしてでも、彼女を安全な場所に運ぶんだ。できるな?」


墜落した戦闘用ロボットがマイトに話しかける。
マイトはオロオロした様子でパイロットと話しかけてきたロボットを交互に見る。


「も、もちろん、彼女を安全なところに連れてくのは構わないけど、怪我してるみたいだけど……そのまま連れて行っていいの?」
「構わない。とにかく急いでここから離れろ。もう少しで、奴が追いつく。奴は民間人がそばにいても気にせず撃ってくるぞ」


ロボットは頭部を頭上に向ける。マイトも釣られて見上げるが、特に代わった様子は見受けられなかった。


「わ、わかった! そ、それで、君は大丈夫なの? 時間を稼ぐって言っても、すごいボロボロだけど……」


マイトの言う通り墜落したロボット……シンデレラは人間で例えるなら満身創痍、大破寸前のダメージを受けていた。


「なに、飛ぶことができなくとも砲台としての役割ぐらい可能だ。私はお前たちから離れた場所まで行き、そこで牽制を続けて時間を稼ぐ。おそらく私を破壊すれば奴もいなくなるだろう……そうしたら彼女を医者に見せてやってくれ」
「そんな!? 自分を犠牲にして囮になるつもりなの!?」


淡々と感情の篭っていない機械音声で自分を犠牲にすることを告げるシンデレラ。
マイトは納得がいかないような顔でシンデレラを見上げていた。


「所詮私はただの機械だ。破損したところで修理すれば直るし、この身体を奴に破壊されても動力とAIさえあれば私の再現は可能だ。それに操縦者のいない以上、簡易的な行動しかとれない……故に破損は免れん」
「でもっ! でもっ!!」
「そう心配するな。私も無駄に破壊されるつもりはない。さあ急げ、少年!! 彼女を頼んだぞ!!」


マイトは唇を噛み締めながら涙を袖で拭うと、パイロットの女性を背負う。


「……僕の名前はマイト! このおねーさんは僕が絶対に何とかするから……するから……君も……君も頑張って!!」
「 ああ、彼女を頼んだぞ。マイト。私の名前はシンデレラ、もし再会することがあれば改めて礼を言わせてくれ」


マイトはふらつきながらパイロットの女性を背負ってシンデレラから離れていく。

「さて……それでは私は、彼らが無事逃げられるように、あれの足止めをするとしようか……あの子達が無事に逃げるまで相手をしてもらおうか、正義の味方テロリスト、ピースベルよ」


シンデレラはマイトの姿を見送ると、また頭上を向く。
シンデレラのカメラアイの望遠モードには大気圏を突破して一直線にこちらに向かってくるピースベルの姿が捉えられていた。



「ハァ……ハァ……」


【所詮私はただの機械だ。破損したところで修理すれば治るし、この身体を奴に破壊されても、動力とAIさえあれば私の再現は可能だ】


「違う……そういう事じゃない!!」


マイトはパイロットの女性を背負って山道を歩く。
シンデレラが言った言葉を思い出し、マイトは一人その言葉を否定した。


【壊れた機械に存在価値などない。AIと動力が動いているだけの廃棄品ジャンクだ】


「そうじゃない……そうじゃないんだよ!!」


マイトは泣いていた。シンデレラとホワイト・スノーに自分の気持ちが伝わらないことに。


【ああ、彼女を頼んだぞ、マイト】


「同じなんだ! そっくりなんだよ!  ホワイト・スノーも、シンデレラも……」


【気を付けて帰れよ、マイト】


「僕の友達と同じで、他人のことを心配できるくせに、自分は機械だからとか言って……機械だからって壊れていいわけじゃないんだ! 壊れちゃったらそれは、人間が死ぬこととどう違うっていうんだよ! 直せばいい? 直らないことだってあるはずだよ……」


マイトは足を止めて背負っているパイロットの方に顔を向ける。


「このパイロットさんだって……君が居なくなったらきっと悲しむよ……」


息も絶え絶えに洞窟へと戻ったマイト。慎重にパイロットを下ろし寝かせると洞窟の外に出る。
遠くの空では爆発音が聞こえ、空と地上を何度も交差するビームの放射線を目撃する。


「僕に何もできないことなんて、僕が一番よくわかってるよ! 僕がいたって何の役にも立たない、邪魔になるだけ、下手すりゃ死んじゃう……だけど……それでも……」


マイトは決意したように涙を拭くと、シンデレラが戦っているであろう方向を見つめて決心する。


「こんな僕にだって、見捨てることのできないことだってあるんだよおおおお!!」


マイトはそう叫ぶと戦場に向かって走り出した。


          

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