僕と最強幼女と狂った世界
選択
「だそうだ」
彼女の一言によって長く沈黙していた空気に、彼女のお父さんが、一つ一石を投じた。娘がここまでに悲しくなっているのにも関わらず、のらりくらりとヘラヘラしている僕に腹が立ってしまったのだろうと、僕はそのような考察が浮かんだ。
  世界にはどうしようもないことがある。それは過去を変えることと、決まりきった他人から自分への印象を変えることだ。後者は何か大きなことを成し遂げない限り、彼らはいくら僕が性格を変えたからと言って、その全貌が、印象が覆るこは無いだろう。
  だけれど僕はここで誤っておくべきだと考えて、頭を下げた。
「勘違いをさせてしまったことであなたに謝ります。ごめんなさい」
「そんなこと言ってほんとうは、この私にも、自分でも何も思うことがないんでしょう?」
彼女は皮肉気に僕に言いかけた。
「許せるものだとは思っていません。だけれど僕の半端な態度が責任がありました」
僕はそれでも頭を下げた。
「やっくんってさあ、何も感じていない人間なのに、なんで誰かを分かったような口ぶりができるの? それも傷つけた相手に、どういう神経しているのか理解できない」
「……」
「あなたそうやって、怒っている相手には謝ればいいと思っていままで生きてきたんでしょう? 誰かに必要とされるわけでもなく、ただのうのうと生きてきた。そしてただ彼女と出会ったというだけで、あなたはこの非現実に頭を突っ込んでいる。そうでしょ?」
「……。語弊があります。僕は自分の意志でスタフェリアと今のような関係になりました」
「それも自分の意思じゃない。だってあなたいつか言ったように空っぽなんでしょ」
「……」
僕はそれは答えることができなかった。ましてや何か感情が沸くのでもないのである。
「そのくせ、無感情な自分が悲しくて悲しくてしょうがない。誰かのようにはなりたいと思っているけど、誰にも馴れないのが悔しくて悲しいんでしょう。こうして私があなたを責めているにも関わらず”何も感じていない”という自分が悲しくて悲しくてしょうがないんでしょう? 苦しいんでしょう? 辛いんでしょう?」
「……」
三度の沈黙の後、僕は彼女の言っていることに途中で理解が出来ないようになっていた。彼女がなんでこれほどまでに僕を責めているのかが僕には分からなかったけれど、しかし、彼女の言っている通り、僕は相当な自分大好き人間でありながら、自分のことについては滅法なほど知らないような人間であるということはどうしようもない事実であった。
  特に感想は無かった。
  それにも関わらず僕は言葉に詰まってしまい、僕と彼女の間には沈黙があった。
  次の瞬間、彼女はとんでもないようなことを言い出した。
「でもそういうあなたが…… 気に入っていた。その何もないような子供から無邪気さを取り除いたような、透明な瞳をしているあなたが好きだった。なにも感じさせない、人ではないようなあなたが大好きになっていた。私もあなたと同様おかしいような人間なの」
  彼女は、堂々と淡々と、飄々と、さらっと何も感じさせないように、できるだけ僕に、これからの全てを思い出させないかのように、それは僕には一切の感情を無くして話していた。まるで物と話すようなそんな口ぶりでもあったのだ。
  その言葉と態度が真逆なことを言っている彼女。それが一二華憐であった。僕は彼女が話しかけてくるのは、なぜなのだろうかと考える。
  そうか、僕がスタフェリアと話がしたいように彼女もまた僕と話したかったのかもしれない。ただそれだけの話であったことも、僕は彼女の言っていることで推測していた。
  僕はどうしようもない人間ではあるけれど、まだ同情を考えるようなことができるよな器用な人間であるということが、僕にはわかった。
  それだけで、僕はなんだか救われたような気がしていた。
「華憐よ、もういいか?」
大柄な男は彼女にそう言って、彼女を抱きしめた。
「あんな男は、やめてしまえ」
そう一言、彼女はその大柄な男に身をゆだねていた。
「なんでこういうときにだけ父親ぶるの?」
彼女は今にも震えそうな声で彼に聞いていた。
「それはお前の父親であるからだ。それに理由はいらん」
大きく厳格でありそうな男のやさしさの一端を垣間見たような気がした。僕には家族というものが、いないのであまりあのような光景は理解ができないと同時に、僕の不始末でこのような事態になってしまったという事実が僕にとって、償いきれない罰なんだろうかと考えた。どちらにしろ僕にはどうすることもできない。
「おい夜久よ」
「なんだよスタフェリア」
彼女が、僕に話しかけていた。彼女の顔は銀髪を光らせて僕の顔を見ないようにそっぽを向いていた。
「お前は、この余についてきて、このようなバケモノたちと戦ってよかったのか?」
「何を言っているんだい? 前にも言っただろう。僕は後悔はしていない。この状況が、この非日常が大好きだよ」
僕は彼女にそう告げた。それは彼女といることが僕にとっては、それが天国でもあり、命を懸けるような状況も大好きだったりする。だから後悔はしていないと言った方が、僕にとってはそれは僕が僕故にそのようなことなんだろうとそう感じている。
「そうか…… ありがt……」
最後の方は、言葉がしぼむように小さく聞こえたため何を言っているのか僕の耳には入っては来なかった。
  僕は今日で先輩との関係が無くなった。それは多分僕にとっては友情だったと思うのだけれど、それは僕の主観であり、彼女にとってはつまりは一二先輩にとっては、僕のこととは違う関係であってほしかったとの事だった。
  そんなことを言われても、僕は多分ノーとどんなパラレルワールドに言っても言うのだろう。それは絶対にして最強であり、最恐であり、最凶であり、最狂である彼女に僕がどうしようもなく、どんな修正を用いても修正不可能なことであると僕はそう思っているからであった。それが僕であって僕である。
  さてこれから彼女達と一山戦闘がある。どうか最後まで僕の物語を見ていてほしい。
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