僕と最強幼女と狂った世界

土佐 牛乳

それぞれの思い2





 一撃、タスクのわき腹に夜久の攻撃が掠る。右腕を左の方へと大胆に振り回すようにして振り切った攻撃は、右わき腹に当たり、服すらも紙のように破いて、タスクの肋骨を数本ばかりか、2本ほどが掠っていながらも、致命的なダメージを負わせていた。
  痛みで唇を?みしめて、体全体をサイドステップをする要領で、ダメージを受け流すように右へと移動したタスク。再度、夜久は指すような足技でタスクの腹へと攻撃を加えようとしたが、軽い身のこなしで避けていた。そして、間合いを詰められないような距離に移動したタスク。タスクは絶体絶命のピンチであるにも関わらず、口は上がる。

「ほんとバケモノだな、さらにお前よりも強い奴がいるなんて思うと、気が気でならねえ」

「君に同感するよ、しかしまあ君も潔く負けを認めたらどうだい?」

 タスクの言葉に答えた夜久。それは、窘めるように聞いていた。

「それはダメだわ。俺はやらなきゃならねえんだよ。俺の運命を変えるためにも」その男は、その言葉から強固なる決意がこもっている言葉であった。そしてこう続ける「ただ一つの大きな後悔のために、ここまで来れたんだ。ダメだとしても俺はやらなきゃならない。未来をあの子を救うために。そのためならどんな泥水を啜ってでも這いずり進むさ」

 その年にしては妙に達観した言葉と、何かを背負っていると思わせる言葉を彼は語っていた。言葉一つ一つに、これまで歩んできた壮絶な人生を分からせるかのような声音である。その重みを背負って立っているその同じ十五歳の背中に、体に、人生に、行動に、言動に、ありように、振る舞いに、仕草に、目線に、考え方に、拳の握る強さに、僕は、カッコいいとさえ思った。それが彼のすべてというまさに物語の主人公そのものである。
  だけれど、僕は彼女とこの世界に佇むという目標、いいやこれは僕の有り様が、僕の歩むべくして歩む人生を彼女に貰った。この終わらない戦いの日々、非日常な全てを僕は愛している。もちろん彼女、スタフェリア・アブソリュータ・ウロボロウスのこともだ。
  それが僕であった。僕が目の前にいる主人公のような器を持っていると言えば、それは寸分狂わず、口を何度も口酸っぱくして、唾が枯れるほどにいうだろう。僕は主人公の器を持ってはいない。それはこのちゃらんぽらんな人生から推測できる。軸もなく、目標もなく、生きる価値が無い人間だろうと、自覚している。

  だけれど、僕は彼女のそばにいたい。それは僕たる最後の所以であり、この骨が抜けたような人間の最後に残った、いいやいままでの体験した非日常で生まれた他の人には小さくても、僕には大きな大きな骨だ。だから彼が、彼女を倒すと言うのなら、僕は何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも、

  彼を倒そう。

 それが彼女と居続けたいと思っている僕の有り様だ。
  誰かのために生きるわけでもなく、ましてや誰かを助けるような人間でもなく、自分すらも何を思っているかもわからない人間で、惰性に人生をむさぼり歩いてきた人間が、突然な彼女と出会った出来事でここまでも、こうして変われたと思えたのだ。
  挫折続きの人生にこんな変革が、ただ一つの希望のようなものがあっただろうか。
  いやそれは否だ。あのまま、彼女と会うことが無かった人生は、多分だけれど自殺をしていた。自分の空っぽさに、他人と比べて何かが欠落しているという人生に、自分に呆れかえり、世界にあきれ返り、自殺をしていた。
  まさに彼女は暗闇に包まれた海に照らし続ける一つの灯台であった。彼女と出会わなければ、いまのような一つの道先を見つけた人生はない。だから僕はそのために彼女のそばに居続けたいと願っている自分のために彼女のそばにいよう。彼女を狙う全てのモノを倒そう。
  高貴なるただ一つの灯を、荒波から守る壁となるんだ。
  天邪鬼の僕ではなく、それは表裏もないだた一つの強骨であった。

「どうやら決意が決まったみたいだな、顔つきが全然違うぜ」

「そうかい、まあ君のような人格がコロコロ変わる人格ような顔ではないけれどね」

「だからあれは、未来の俺だって言ってんだろう…… まあ同一人物なんだけどな」

 一本取られたと驚いたのか、それとも呆れているのか僕にはわからない。だけれど顔が変わった頃には、彼が僕をしっかりと見据えていると、そう感じる顔であった。
  彼を倒すべきだと、改めて考えさせたられた。


 時同じくして、スタフェリアと大きな体格の男が大きな山場を始めようと、その体を互いに、それは鉄球の振り子のようにぶつかり合っていた。
  スタフェリアの攻撃は、華奢な体の影響なのか何度か攻撃を当てるも、全くと彼の全てを潰すような攻撃を避けることしかできないため、隙を見ては攻撃を仕掛けつつも、戦略という、獲物を狙って大空で翼を仰ぎ泳いでいる竜のようでもある。
  男は、できるだけ彼女に攻撃をさせないようにと、大きな体格に身を任せて、無数に飛び付く槍のような攻撃、そして大斧のような腕回しを彼女に浴びせていた。
  二人の常軌を逸している攻撃の数々に、岩石のようながれきの山は砂に変わり、夜久の家である今の部屋は、同様にチリとホコリとなっている。
 何か突破口があるはずだと考えているスタフェリアは、避けに専念をしながら戦闘を行ってもいた。













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