僕と最強幼女と狂った世界

土佐 牛乳

夜戦とイタズラ電話


 薄暗い暗闇の中、僕は家の固定電話によって起こされた。ベットにはスタフェリアも眠っており、『こんな時間に誰が』と少しだけ、嫌な気持ちになりながら居間を出た。
  扉を開けて玄関通路にある、固定電話まで歩くと、ジリジリと一昔前の音をかき乱すようにして鳴っている電話。
  ゆっくりと手を、受話器の方へと伸ばして、「もしもし」と電話で呼びかけた。
  玄関のガラスから見える外は、いまだ夜であり、この時間に電話を鳴らしてきたという事実が何とも薄気味悪いなと、そう思った矢先、僕の呼びかけに電話の相手が答えた。

「■■■■■■■■、■■■■■■■■、■■■■■■■■■■」

 どこか異国のそれは、何処にもどの国にも属さないような言葉で、僕に叫んでいた。それはまるで、異次元の意思を持った何かが、僕に訴えかけているようでもある。それは、この前の戦闘の神祖の連中が使っていた、呪文とは全く違った言語である。
 僕は、さすがにいたずら電話なのかと考えてみた。ちょっと頭にきた僕は、すぐさま安眠を奪ったお礼に罵倒をして電話を切ろうとしたその矢先。

「(ちょっと貸してごらん)やあ、天野路夜久君」

 小さな小言で、誰かに変わったかと、思うと、あいつが、アレが、あの元凶が、僕に話しかけてきた。
  そう、相座時之氏守刄であった。

「えっと特に僕からは無いんで、くたばってください」

 僕は彼の声を聴いた瞬間、神経反射的に、そのような罵倒が出ていたのであった。そして、それまた手が勝手に、電話を切ろうとしていた瞬間。

「ちょっと、ちょっと待って、天野路君! タンマタンマ!」

 と、彼はまるで、出前の注文を急いでいる客のように、僕の持っていた受話器から彼の声が聞こえてきた。

「なんですか?」

 いい加減にこいつを倒してみるかなと、スタフェリアに相談しようとそんなことを思いながら気前のいい僕は、彼がなぜ電話をしてきたのか聞いた。

「実はだね、ちょっとばかり君の声が聴きたくなっちゃってね」

 僕は、声を聞き取る部品にパンチを大きく音が鳴るようにパンチをして、電話を切ろうとした、これまた起用に彼は電話を切る直前に、重要なことを言ってのけた。

「ちょっと、ごめん。聞いて!(大声) 実はこれから名のある妖怪の総大将が君の家に向かうんだ!」

まるで直接見られているかのようにおちょくられている僕であったので、真実もなにもない、屑野郎の言うことなんて、まったくとして聞く意味はないなと、電話を切ろうとした刹那。
 玄関が爆風で吹っ飛んだ。張り裂けるような鋭い爆音が、僕の家を崩壊して、そして僕の肌を切るようにして騒音と、とんでもない量のがれきの山が上からも正面からも、襲ってきた。終いには、玄関にあったドアが僕の体に毛布のようにして乗っかる。
  すると、ドスーンと、僕の頭の上には、僕が3人分くらいある、翼の生えた大きなトカゲがギリギリに落ちて来た。
  僕は、しばらく眠気のおかげなのか、状況がまったくと飲み込めなんでいたんだけれど、スタフェリアが僕の顔を覗き込むようにして見ていたあたりから、意識が、いややっと状況を頭の中で整理することができた。

「スタフェリア、どうやらこれはできの悪い夢だったんだな、いい加減に僕は、気持ちのいい朝を迎えたいのだけれど、僕を起こしてきてくれよ」

「んッうー、何を言っておるんじゃ、これは現実じゃぞ」

 彼女は僕の安否を確認した後、それは、気持ちよく今まで寝ていたんだと大きく背伸びをして、僕の上に振ってきた翼の生えたトカゲを撫でて、そのドラゴンのようなトカゲはゆっくりとライトが消えるように実態も消滅していった。まるで僕は夢の中でとんでもないファンタジーの世界に紛れ込んでしまったのかと、考えてみたけれど、元からファンタジーのような世界にいたもんだと気づいたあたりで、スタフェリアが、僕を救出しようと手を伸ばしていた。

「大丈夫だよ」

 僕は、ドアの布団の中から手を出して、彼女にいいよと合図を送った。そしてできるだけ、この惨状を、つまりは家がこんなにもぶっ壊れてしまった悲劇を頭の中で処理をしないように大きな声で叫んだ。

「家があああああああああああああああああああああああああ!!」

「なんでもかんでも、気づくの遅すぎじゃわい!」

 彼女からツッコミが、入った。それはもう豪快に、だけれどいつものような手でたたくようなツッコミではなく、口からのツッコミであった。なんで今日は口なんだろうかと、僕はそう思いながら、彼女の目線の先を見るとその答えが分かった。
  それはその異質な体系は、おっさんを何倍にも大きくしたかのような体でもあり、イノシシでもあり、マリオがキノコを食べて体を何倍にも、それはグレートなキノコを食べたあとなんだろうなとそんな眠気が冷めた頭で、しょうもない推測が浮かぶようなそれほどまでにばかげている大きさの男が、僕の壊れた玄関に立っていたからであった。

「■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■!!」

 いやわかんねえよ、何言ってんだよ、唾飛んでるんだよ、すっげえ顔がファンタジーに出てきそうだなおい。それはイノシシと大きな男を融合召喚させたような見た目であった。

「■■■■■■■■ッ!!!!」

「いやいや、お前は、アー〇(自主規制)の…… あれじゃよ、アレ」

 スタフェリアと、彼はなぜか話ができるようであった。さすがに僕もこの場でじっとしているのにもダメだろうなと思ったので、扉を空へと蹴り上げて、僕は宙がえりの要領でその場から立って、大きな大きな、イノシシのおっさんをこの視界で捉えた。

「■■■■■■■■■■■■、■■■■■」

 視界をスタフェリアから、起き上がった僕を正面に変えると、おっさんは日本語でもないようなよくわからない言語で、僕に喋ってきた。
  僕には通訳者が必要なので、この場で通じているスタフェリアに、体の向きはそのままに、横にづらすようにして、彼女に小声で言葉の通訳を頼んでみた。

「(スタフェリア、あれはなんて言っているんだ?)」

「お前の眷属は、ヒョロガキがどうのこうの、ヒョロガキヒョロガキヒョロガキ……」

「って後半悪口しか言っていないな! まさかとは思うけれど、お前もわからないだなんて、いうなよ……」

「た、多分合っておるわい。言葉のあやといった小さなことで悩むものではないぞ」

「なんで焦ってるんだ! まあともかく……」

「あせっとらんわい! なんじゃ…… この余に言うてみい」

「なんであいつは、僕の家に来たんだよ。しかも玄関まで木っ端みじんにしやがって!」

「(多分わしと戦うことが目当てじゃろうけど……) まあ気にすることでもないわい」

「なんだ今の間は! 恰好を付けてないで、そのかっこの中を教えてみろ!」

「上手く言っているつもりじゃろうけど、ほら見てみろい」

「なんだ…… ってうわあ!!」

 僕の頭の横を、大きな大きなトンカチのような、拳が、僕の頭の横を瞬く間に通り過ぎた。まるで、その巨体は何も感じさせないように僕に近づいてきたのか、それとも人の力を越えたパンチで僕を狙ってきたのか…… とにかく運よく当たらなくてよかった。
  一息つこうと、その巨体から距離を取るべく、動こうとした瞬間、まだ壊れてはいない僕の家の屋根の上から、上機嫌で、誰か、それは僕にとってはとっても腹立たしい存在が、僕たちと、この大きな男でさえも戦闘中なのにも関わらず、全てを中断させて牛耳るかのような声で、発してきた。

「まったく君たちは揃いも揃ってお茶目さんなのかい?」

 相座時之氏守刄があぐらで、空をあおるようにして座って僕たちを眺めていたのであった。


























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