僕と最強幼女と狂った世界
御剣家の事情
「おい畜生……」
「なんだよスタフェリア」
「今は何月なのじゃ?」
「四月だよ」
「なんじゃこの熱さは!!」
「俺が知りたいわ!!」
「これがちゅきゅう温暖炉化現象というやつじゃろ?」
「暖炉って、そりゃめっちゃ熱いわな!」
「地球暖房化現象じゃな!」
「その機能は真冬にほしいね!」
御剣の家に向かう大きな大きな坂を二人は歩いていた。あいつはいつも舎弟のような男たちが乗っている黒のベンツで学校に来るからな。まあこんな坂歩いてるようなあほな人間はいないだろう。それほどまでにこの坂は長く、長く、長かった。
  いくら彼女から肉体を強化してもらったとはいえ、さすがにこの坂を登るのは少しばかり骨が折れるような、労力を伴い、四苦八苦して歩いてきた。
「キャッスルのような坂じゃ!」
「ああ違いない」
俺はうんうんと全力で同意すると、彼女の御剣の屋敷のインターフォンを鳴らした。
  木造の門は、車用のゲートに、すぐ横には人が出入りするためのドアがある。
「すいません、未来さんはいますか?」
ドアの横にはテレフォン装置のある、四角い機会に話しかけた。
「お嬢の……、少々おまちくだせえ」
するとドアが、開いていった。
「こんにちわ」
ドアの中から出てきたのは、少しいかついおじさんであった。
「こんにちわ。お嬢の友達の…… えっと、夜久くんでしたね。こちらは妹さんかい」
「はい、今日は未来に用があって。そうです僕の妹です」
「お嬢にですか、今はこことは違う屋敷で稽古中ですたい」
「稽古中だったんですか、しっかりと連絡をするべきでしたね。お忙しい中すいません」
「いえいえ、せっかくなのでお茶だけでも、どうぞ中へ」
こうも親しくなったのは、一度この屋敷にお邪魔したことがあるからだ。その時の用事はたしか…… 未来の忘れ物を届けにここまで来たのだった。
  前回、中にまではいれてもらえなかったが、今回は、おkとなっていてそれほど僕のことを覚えていたとなると少しばかりうれしい気分になった。
「さあさ、ここで待っておいてください」
屋敷の中に入ると、透き通るような透明な空気をしているこの空間は、客人をもてなすような部屋であるのかなと推測してみる。一昔前の造形でありながら、それはとても新しいような、時代を感じる和風のつくりとなっている。彼女の家は、代々伝わる、何かものすごい家計らしくて、なんというか、こんな俺が本当にかかわっていいのかという考えに陥ってしまうくらいだ。
「あ、そういえば、お嬢から渡されていたものがありました!」
お盆にお茶を入れて持ってきていたのか、今ソファーに座っている目の前の机に置いた。
「少々お待ちを」そう言い、あのおじさんは、どこかへ駆けて行った。
「しかしスタフェリア、おまえどうして突然と、糸が着られた糸電話のように喋らなくなったんだよ」横に座っていた彼女に俺は話しかけた。
「なぜかのう…… 何か見覚えがあるんじゃここは……」
彼女は何か顔の面影が濃くなっていた。
「気のせいじゃないのか?」
目の前の机の上の前にあった、お茶を飲み、一息をついた。
「畜生、御剣という人物の情報を知っている限りでいいから教えてくれんか?」
「うーん、俺はかのじょについて知ってること…… 肩までのショートカット、目は、少し垂れてる。体は、誰よりも美しくて、ぼけっとしていそうに見えるけれど、根はかなりしっかりしていて、性格も剣道をしているだけあって、誰よりも真っすぐで優しい人さ。僕の自慢の友人だよ。剣道も日本トップクラスの腕だし。なんで牧羊のような人間の相手をしているのか。ちょっと、いやちょっとどころかかなり気になることだね」
スタフェリアを見ると、あきれたようにこちらを見ていた。
「ほんとうに気づいていないのかのう?」
「ああ…… そうだけど、どうしたんだよスタフェリア」
「なんでもないわい」
ちょっとふてくされたように彼女もお茶を飲んだ。何か気に障るようなことでも言ったのか。いやそんなことは、無いはずだ。
「おまちしました! お嬢の預かりものです」
と、居間の察しが開き、先ほどの舎弟のおじさんは、紙野づつみ袋を持ってきた。
「じぇじぇ、ですね」
「はいそうです。御剣さんにもよろしく言っといてください」
「はい、いつもお嬢のお話の相手になっていただいてありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ、いつもかまってくれてありがたいんですよ」
なんせ僕はぼっちですから、と自虐を織り交ぜた笑いで彼も笑った。
「夜久さん、お嬢が帰ってくるまで、ここにいたらどうです?」
「いやいいですよ、みなさんおいそがしいのに図太く待っているだなんてできませんよ」
「そうですか、私たちは大丈夫なんですけどね」
「へへh…… 御剣さん…… は、今日は休みだと言っていたんですけどね。家の用事があったなんて思いもしませんでした」
「実は、今日は一カ月一度の休み、お嬢にとっては天国のような日だったんですけど……」
「どうしたんですか?」
「ここでの話ですけど、遠く異国の地からとてつもないような剣技を持っている人間がこちらまで観光に来ているということで、ついでに稽古を取ろうと頭首が……」
「なるほど、異国の地からも。へえ」
何か嫌な予感と、これからおこる事件のことに何か寒気のような悪寒が走った。
「あやつだったか…… 通りで、何も感じなく、何もないはずじゃ」
ここにいるのにも、いい加減にあれなので、俺は帰ることにした。
「じゃあこれで僕は帰ります」
一度頭を下げて、玄関までの廊下を歩いた。
「今日は暑いでしょうから、送りましょうか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
靴を履き、ドアを開いて「ありがとうございました。ほらスタフェリアも」
「またくるのう。今度は冷たい飲み物を準備するのじゃぞ」
「失礼だろう…… ほんとにこの子がすいません」
「あはは」
玄関まで来ていた舎弟のおじさんは、後ろの髪を触りながら、困っているようだった。
ということで、僕らは、この城のような屋敷を後にした。
「畜生よ……」
「どうしたんだスタフェリア?」
「混沌というものを知っておるかのう?」
「カオスってことか? どうしたんだまた曖昧的な概念の話か?」
「まあそうじゃのう、余とお前を足したよな存在のことじゃ」
「ようするに、そこら辺にいるような一般人ということか?」
「まあだいたいはそんな感じじゃ、何処にも属せることのない人間」
「それがどうしたんだ?」
「それらの振れ幅がのう、大きすぎる人間もおるのじゃ?」
「それがどうしたんだ?」
「次はそのような人間が、相手かもしれん」
「それはどのくらいのつよさなんだよ?」
「そうじゃのう……」
「まあ何がともあれ、今を楽しもうぜ」
「おうな、じゃが、常に警戒はしておくのじゃぞ」
「わかったよ」
そうして俺たちは家へと帰った。
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