僕と最強幼女と狂った世界

土佐 牛乳

ハンバーガー


 起床。
 目の周りに、何かボンドのような固形物がくっついているのではないかというほどに、僕の瞼には、目ヤニがぎっしりと、目全体をコーティングさせる、アイプチのようにあった。それを猫の手を作るようにして手の裏で目ヤニを擦りながら取り、辺りを一望し、やけに涼しくなっていた自身の服装を確認した。

 ここは…… そういえば僕はあのあとどうなったんだろうか。

 黒一色の学ランは、何かに突き破られたようにみぞおちの中央だけが、ぶち抜かれていて、中の長袖のボタンTシャツまでもが、はだけたように首辺りの一番上のボタンを除いて、一つ下のボタンから、ボタンを閉めたまま無理矢理に、引っ張り明けたようにボタンだけが穴をあけられたところ以外が飛んでいた。

 疑問と共に、視界のその先、周りに広がっていたのは、白い部屋であった。それは、綺麗な正方形の部屋で、内装は、ここに住んでいるのは奇抜な人間なのか、視野の壁紙と一緒である真っ白。なんとも不気味で、どこかの研究室を思わせるようなこの部屋に、俺は怖気付きながら、ここに来るまでの記憶を思い出そうと、回想に入る。

 二〇一三年四月一四日午前七時ごろ。俺は、いまだ雪がある寒い早朝に、学校指定のバス停へと向かうべく、路地裏を歩いていた。入学したての高校一年生だった俺は、これから始まる新高校生活にワクワクをしながらも、徹夜明けのテンションで歩いていた俺は、どんな奇行をしていたのか、自身ではわからないのだが、たぶんそれはもう酷いものだろうな。とにかく、普通に何かが始まるようなそんな前触れもなく、通学路を歩いていたわけだが、何かあったのか……。

 数秒ほどして、一連の流れを思い出した。そういえばあのつるペタ幼女と出会い…… エッチいことになって腹をわけのわからないような怪力のキックで、めちゃくちゃにされたんだった!

 すぐさま背中に流れる冷や汗を感じながら、すうすうに通気性が抜群となった、穴を広げ、腹の中央辺りを撫でる。割れた腹筋、中学までバレーという運動部をしていたため筋肉はある程度あるのだ。いやそれよりも、クラッカーのように内臓が吹き飛んだ、痛みすらも感じなかったあの映像に俺の腹の中のものたちは、画面いっぱいに、視界いっぱいに彼女を地と肉片のシャワーを浴びせて、吹き飛んだあの映像を思い出した。たしかに痛覚が無くなるほどのオーバーキルのような攻撃であったが、彼女は、何かやばいような奴から、俺を助けたように見えたのたが、勢い余って俺の腹をぶち抜いたかもしれない。いやもしそうだとすると、力の加減をするだろうし…… ってなんで俺、あの攻撃を食らって生きてるんだ。爬虫類のうろこを触るようにして、腹を擦ると、きれいさっぱり傷はなくなっており元の腹筋のままであった。あの時の、攻撃全てがその事象だけを冷厳に拭いさったかのような不思議な感覚に陥っていた。

「畜生よ、体の調子はどうじゃ?」

 下を向いたまま、腹を触っていた俺は、ゆっくりと真正面にある、いままで誰もいないと思っていた声の主のところまで、視界をあげた。

 あ、あのときの、糞強い幼女!?

 小さな土ふまずが地についていない都会っ子特有のきれいな足、そして足首はお人形のように関節のくぼみがはっきりとわかるような整った形、ふとももは小さくスラッとしておりながら、けだるそうに片方の足だけで体重を乗せているのか斜めとなっていた。そして、その体の年に似合ったそういうファッションなのかは、オシャレに乏しい俺だからわからないが、両足のジーパンの長さは少しだけアンバランスで、かなり無造作に切られていた。右足は、膝と腰との中央の位置まで、左足は、そこら辺の若い子が着ているような短パンの腰に近い位置まであった。上のシャツは白と黒の横にしましまの模様で幼くも愛らしい体のラインを作り、肩の方で、黒い紐、いや紐よりは、それなりに背面まで破れないような肩紐である。そして腕は、ロボットアニメで有名なガオナ立ちを連想させるかのような華奢な腕組であり、顔は、碧眼の鋭く、凍てつくような目つきと、鼻、口、顔の造形は、完璧なお人形のようであり、髪の毛は、綺羅やかな銀色をして、目のあたりまで綺麗なジグザクでありながら、女性らしさもある髪型で、顔の前以外の髪は、腰の後ろ辺りまで伸びていた。

「わ、わかったから! 殺さないでくださいいいいい!!」

 記憶がフラッシュバックしたかのように、彼女に蹴られた映像が鮮明によみがえった。

「畜生よ、なにッを…… なにをビビっておるのじゃ! ぷはははははははははh」

 限界まで降り終えた炭酸入りの管ジュウスを勢いよく開けたように彼女は笑った。

「へッ……」

 あっけに、呆気に取られてしまった僕は、しばらく数秒ほどぼおっとしていた。全力で非日常を走っている今の僕は、気持ちの切り替えさえも早くなっていて、目を閉じた後、質問をしようとした。

「次にお前は『そんなことよりここはどこなんじゃ?』と聞く」

「そんなことよりここはどこなんだよロリババア幼女?」

 おっと感情が。ロリババア幼女なんて言ってみたが、ハンバーガーのように、ロりと幼女の間に、ババアを挟んだことにより、絶品になっているだろうと俺はそう考えている。

「だれがババアじゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 どうやらその絶品のハンバーガーは、口に召さなかったようだ。















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