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ラッキーナンバー

根宮光拓

第3話 デート

8月15日。
俺は某駅前にて三田茅乃と待ち合わせをしている。
それもこれも、あのクラス委員長の言葉のせいだ。


只今15時13分。
待ち合わせは、15時15分。
中途半端なのは、みんな・・・の都合に合わせたというただそれだけの理由だ。


「お、気合入ってんな」


現れたのは景也。


「セーフ!」


次に現れたのは、結城和ゆうきあい


彼女の正体と共にこのデートもどきに呼ばれたわけを言っておこう。
それは景也のデート発言の次の日まで遡る。


まだその日まで、三田さんはそのデート企画を渋っていた。
そりゃあ、いきなり知り合った男子と二人きりで出かけるなんて常軌を逸している。
当然俺も無理だ。


そしてその説得は昼食時間にまで及び、


「ごめんなさい、私三組にいかなきゃ」


と三田さんがちゃんと断って教室から出て行った。
しかしそこで事態は終わらなかったのだ。
景也はこう言った。


「俺たちも行くぞ」


と。
もちろん流石に迷惑だろと、俺は止めた。
だがこの男は止まらない。止まれない。止まってくれない。
俺は景也に連れられるがまま、三組へと来て、そこで三田さんと一緒にいた女子生徒が、俺たちの幼馴染である結城和であることが判明したのだ。


それからあのデートの話になり、やはり急には無理となって、夏休みにしようという案が出て、今に至る。


もちろん和には、俺が三田さんを好きであるということは言っていないし、このデートもデートだとは言っていない。
ただ皆で遊ぼうぜ的なノリで誘ってある。
故に恋愛事情を知るのは景也と俺だけだった。


「茅乃遅いなぁ」


和の呟きが一つ漏れた。
確かに三田さんはしっかりしているイメージで、待ち合わせに遅れてくるようには思えない。
また何かを落としてしまって、足止めを喰らっているのではないだろうか、等と不安を募っていると、


「ごめんなさい!」


駅の方から天使――じゃなくて、三田茅乃が走ってきた。
何事も内容で良かった。
しかし制服姿もいいが、私服も素晴らしい。
比喩ではなく本当に天使が来たかと思ってしまった。


「ギリギリセーフ!」


和が大げさに腕を広げて声を上げる。
こいつは相変わらずうるさい。
もう少し三田さんを見習って欲しいものだ。


「ごめんね、和ちゃん」
「オッケー、許した」


俺も許した。


「皆集まったことだし、早速行こうか」


先導するのはもちろん景也。
俺? 俺は当然最後尾でソワソワしてるだけだよ。


「そういえばどこに行くんだ?」


俺の発言。
デートと言うビッグイベントに気を取られすぎて、肝心のデート内容を聞いていなかったのだ。
そんな俺に景也は声を張り上げた。


「休日に行く場所なんて決まってんだろ!」


え……決まってんの?
じゃあ行かないほうが良くない? 絶対混んでるだろうし。


「遊園地だ!」


うん、予想ついてた。
だってこの駅、某遊園地の最寄だし。


「女子達の入場料は俺たちが払おう!」
「は?」


初耳なんですけど。


「え! 本当に!」


案の定、和は乗っかるし。


「わ、悪いよ」


三田さんは遠慮するし。


「任せとけ!」


景也は無駄に威勢が良いし。


「聞いてない」


俺は文句を垂れ流すし。
すかさず俺は景也を呼び寄せた。


「お前、このためにお金を多めに持ってこいって言ったのか?」
「もちろん」
「この野郎……」


全ては景也の掌の上。
俺以上にお前、やる気あり過ぎだろ。


「じゃ、行こう」


景也の号令によって俺はもう何も言えなくなった。


「本当に大丈夫?」


三田さんが、上目遣いでそう言ってくる。


「大丈夫!」


そう言われちゃ男としてこう言うしかなくなる。
俺のお金はこの時のために貯めてきたのだ。
次に和が俺に、

「私の分もお願いね!」


と、傲慢にもこう言ってきた。


「お前は景也にでも払ってもらえ!」


なんで俺が二人分も負担しないといけないんだ。
今日一日で俺が破産してしまうではないか。


「いじわるー!」
「結構」


和の駄々をいなし、離れる。
和はあれだ……騒がしい、以上。

「仲、良いんだね」
「え?」


すっかり油断しきっていたところに三田さんからのお言葉。
突然すぎて肝心の内容が全く頭に入ってこなかった。


「和ちゃんと」
「あ、ああ、幼馴染で長い付き合いだから」
「そうなんだ」


優しい口調。
それから伺える。
三田さんが和のことを相当好いていることが。
正直言えば羨ましいし、幼馴染としては嬉しかった。


「そうだよね」


二度目の呟き。
しかしこれにはさっきのような意味合いとは違う気がした。
上手くいえないが、なんだか切ないような……気のせいかもしれないが。


「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」


ただその直ぐ後に、彼女は可愛らしい笑みを俺に向けた。
その笑顔だけで俺の杞憂は吹き飛んで、彼方まで消えた。
そして着いた遊園地。
景也の宣言通り、女子の入場料は俺たちが払った。


それから俺たちは思い切り遊園地を楽しんだ。


初めにジェットコースター。
全然乗り気じゃなかった俺と三田さんを無理やり乗せた景也を許すことは出来ない。


次にお化け屋敷。
全然乗り気じゃなかった景也と和を無理やり入らせたのは良い思い出だ。


続いて何を血迷ったのかバンジージャンプに乗ることになった。


「……誰が行くんだ?」


もちろんそう言ったのは俺だ。
しかし景也の顔は「なに言ってんの?」とばかりに俺を見る。
いや、なに見てんの?


「いやいやいや」


ジェットコースターでも十分怖いと感じる俺が、こんなぶっ飛んだもの出来るわけがない。


「いやいけ――」
「――絶対に無理」


景也が余計なことを言う前に言った。


「ぷぷ、五島ってばビビッてるの?」


和からの分かりやすい挑発がやってきた。


「なら和が行けば?」


和よそう言うのなら貴様はいけるのだろう?


「い、いや、私はお化け屋敷で疲れちゃったから……」


俺もジェットコースターで精神力をゴリゴリに削られたんですが。


「調子の良い奴……」


しかし世は残酷である。
景也は俺に乗れと視線を飛ばしてきて、和はおふざけで俺に乗らせたがっている。そして三田さんはオロオロと戸惑っていた。
故に民主主義に乗っ取ってしまうと多数決で俺が乗ることになってしまうのだ。
それだけは避けなければなるまい。


「じゃあ多数――」
「皆でやろうか!」


言わせるわけがなかった。
こういう時は皆一緒。一人はみんなのためにみんなは一人のためにだ。
俺は満面の笑みを景也に向けた。


「え!」


しかし思いも寄らないところから声があがった。
三田さんだ。
そういえば三田さんも俺と同じでジェットコースターが苦手だった。
つまり三田さんも絶叫系はダメなのだ。


「なあ五島よぉ、あんなに怖がっている女の子も強制参加させんのか?」
「お、お前なぁ……」


卑怯だ。
そんなの頷けるわけがないじゃないか。


「……わ、分かった、俺が代表で行けばいいんだろ!」


もうどうとでもなれと。
これで三田さんが救われるのなら俺は天に召されてやる。


「よし、決まりだな!」


こいつ……!


「大丈夫なの?」
「う……だいじょうぶ」


無意識に尻すぼみになる声。


「もしもの時は私が助けるからね!」


そう言う和。
お前がどうやって俺を助けるというのか。


「遠慮しとく」


返って悪化しそうである。


「なっ!」


不服そうな顔をしても知らんぞ。
今の俺は人の心配をしている暇などないのだから。


「逝ってくる!」


きっと俺の目は死んでいることだろう。
さっきまで笑っていた景也も苦笑いを浮かべている。そして拗ねたままの和に両手を胸の前で握り締めて祈る三田さん。
女神の祝福を受けた。
これを受ければもう怖いものなし――


――なワケがなかった。


「ぎゃあああああああああ!」


醜い叫び声だと罵るが良い。
良いんだ別に。
俺は帰ってきたのだから。
この母なる大地へと。


「だ、大丈夫?」


無理、いくら三田さんのお言葉でも返事が出来ない。
正直何で今、俺は生きているんだろう。と思うくらいにショッキングな出来事だった。
もう二度とやりたくはない。
そんな俺に寄って来る男。
もちろん景也である。


「少しトイレ言ってくる」


と俺も巻き込みながら景也はそう言った。
え、いくらきつくても吐き気はないから別に用ないんだが。
だが流れるままにトイレ前。
景也が申し訳なさそうな顔で口を開く。


「悪かった、あそこまで本格的なやつだとは」
「見て分かるだろ」


ぶっきらぼうに告げる。
今更なにをいわれても過去は変わらない。


「お詫びに良いことを教えてやるから」
「なんだよ?」
「もう日が暮れてるだろ? それで次のアトラクションが最後にしようと思っていて」


そこで一呼吸おき、


「二人ペアで観覧車に乗ろうと思ってるんだ」
「……なんだって?」


と言った。
聞き間違いじゃないよな。
観覧車、そして男女ペア。
この方程式の解は、まさか……!


「お前、三田と乗ってこい!」
「……景也!」


お前、最後の最後でそんな良い提案をしてくるとは。
今日一日の道化っぷりはこれの伏線だったというのか……!


「あ、一つだけ言っておくぞ」
「なんだ?」
「これはウィンウィンの関係だ」
「は?」


景也から告げられた言葉。
まるで意味が分からなかった
どっちも得するってどういう……?


「俺は和が好きだ」


そして唐突の告白。


「そうかそうか……は?」


もちろん驚かないわけがない。
え、こいつが、あの和を?
意外すぎて言葉が出ない。
こいつの恋愛事情を知っている俺だが、もっとレベルの高い女子を狙っているとばかり思ってたからだ。
だってこいつ、結構な数の告白振ってんだぜ?


「お前だけに言わせるのはフェアじゃないだろ? そう思ってさ、俺も言ってみた」
「そうか……以外だな」
「そうか? 俺、結構昔から好きだったんだぜ? あいつのこと」
「そうだったのか?」


全く気が付かなかった。
だから今まで受けた数多の告白を受けなかったのか。
その一途さに、少しだけ、ほんの少しだけ見直した。少しだけな。


「でもあいつの方は……」


景也は少し寂しげな顔をして俺の顔を見た。


「な、なんだよ」


と問いかけると、景也の暗い表情は一転して笑顔に変わり、俺の背中を思いきりひっぱ叩いた。


「いってぇ!」
「はは、お互い頑張ろうな」


そう笑顔で言って景也は女子達のいる場所へ戻っていった。
はぁ、何だかプレッシャーをかけられた気分だ。

景也は多分、観覧車内で和に告白する。
そして俺にも告白しろと暗に言ってきたのだ。
これは逃げられない勝負だ。
向こうが人生かけるのに、こっちは何もしないなんて出来るわけがない。


「はぁ……」


三田さんと話すようになって約一ヶ月。
せっかく仲良くなったっていうのに、それを捨てる覚悟で告白する勇気は、本当のところなかった。
俺は今日はただ三田さんと楽しく過ごせれば良いと思っていただけなのだ。
なのにあいつのせいで、こういう事態になっている。

考えれば考えるほど、マイナス思考が加速した。


もう考えていても仕方ない。
俺はバンジージャンプさえも乗り越えたのだ。
これくらい……嘘だ。


「おそーい!」


和からお叱りを受けた。
仕方ないだろ、こっちは心臓が痛いんだから。


「バンジーの後遺症がまだ残ってるんだろ、これ以上言ってやるな」
「あ、そうだった」


しかしこう見ると、確かにお似合いかもしれない。
うん、幼馴染として応援したいな。


「そういえばそろそろ時間だな」


景也の話題転換。
辺りはもう夕暮れ。
日が暮れ、お月様も輝き始めている時刻だ。


「えー、もっと遊びたい」
「なら一人で遊べばいいじゃねえか」


駄々をこねる和につい憎まれ口を叩いた。


「えーそれだと詰まらないでしょ、ね、茅乃!」
「う、うん、そうだね」


三田さんの苦笑い。
おい、三田さんに振るな。
俺が悪いんじゃないかと思っちゃうだろ。


「喧嘩はそこまでにして、ここで提案がある」
「なに?」


来た、この流れは……


「最後はやっぱり観覧車、そこで二人のペアを作って乗りたいんだけど、どう?」


沈黙。
あの景也だって顔が引き攣っていた。


「い、いいんじゃねえか?」


上ずった声で俺は同意した。


「う、うん、いいと思う」


続いて和が同意した。
これで多数決でこちらが勝った。


「そ、そうだね」


もちろん三田さんもこの流れに逆らう事は出来ず、困惑した様子で頷いた。


「じゃあ、ペアはくじでどう?」


まだ緊張している様子の景也が、カバンの中からくじを出した。
おいおい、用意周到すぎるだろ。


「よく準備してたな」


あえてそれを口にする。
この空気に耐えられないからだ。


「もしものためだ」


その時景也と目が合った。
何か言いたげの目だ。


「よし、じゃあまず和、お前から引いてくれ」
「う、うん」


あの和も恐る恐るといった感じでくじを引く。


「次は三田さん」
「は、はい」


三田さんも緊張の面持ちでくじを引く。
おい、これで女子二人のペアになったら洒落にならないんだが。


俺は景也の顔を見た。
彼は頷く。
大丈夫だと言わんばかりに。

「じゃ、俺が引くわ」
「は? 俺は!?」
「お前は余りもんだよ」
「ひっど!」


そう口では言いながらも、俺は景也に感心していた。
確かにこれなら怪しまれずに不正が出来る。


結果発表。


「俺1番」
「……私も1番」


早速、景也と和のペアが出来上がった。
残りは言わずとも分かるよな。


「俺……2番」
「わ、私も2番」


はいお見事です。



俺たちは今日最後のアトラクションもとい、人生最大の分岐点、観覧車へと向かった。

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