神装聖剣ファフニール

なつめ猫

姫君と剣士の出会い(15)ルメリアside




 人間族の平均寿命は40歳から60歳ほど。
 私達、魔神族よりも寿命はずっと短い。
 だけど、それよりもずっと短い寿命に私は一瞬、何を――、と……、お父様の言葉の真意が分からない。

「まぁいい。馬車に乗りなさい」
「はい」

 私は、どんな表情をしていたのだろう?
 自分自身では、分からない。
 だけど、お父様が――、一度連れていかないと決めたお父様が私を連れれていくことを決めたのだから、きっと――、酷い顔をしていたと思う。



 ――それから一週間後。

 終焉の森の中を移動中に、一瞬――、何かしらの結界に干渉したのを感じたあと――、カズト君が暮らしている山小屋が視線の先に見えてきた。

「ずいぶんと時間が掛かったな」

 唐突に声が辺りに響き渡る。
 私とお父様は咄嗟に足を止めると――、それと同時に一人の老人が姿を現す。

「――く、空間転移……」
「お久しぶりです。厳那殿」
「久しいな。それよりも空間転移を見るのは初めてかの?」

 私は首を振る。
 時間をかければ長距離・短距離を含む空間転移を行うことが可能。
 ただ――、それは時間を掛ければという制約の元で――。

 私達の移動に合わせ尚且つ正確な場所を把握しつつ短時間で空間転移を一人で行うなんて、そんなのは私達、魔神族でも不可能な事。

「いえ。人間族が、空間転移を気軽に使えることに驚いてしまっただけです」
「なるほどのう」

 厳那という人物が顎髭に手を当てながら私を見てくる。

「グランザード」
「はい。何でしょうか?」
「今回、此処まで出向いたのは雨を降らせなくていいという願いであるか?」
「そうなります」
「分かった」

 老人は、お父様からの願いを快諾すると姿を消す。
 
「人間なのに魔法陣も詠唱も使わずに空間転移できるなんて……」

 正直、人間とは? という哲学的疑問が浮かんでくるが――、頭を左右に振って愚かしい考えを排除する。

「お父様」
「どうした?」
「厳那という人物は大丈夫なのでしょうか?」
「ふむ……。私の祖父の時代から付き合っている老人だからな。問題は無いと思うが――。そもそもアルト公国の建国――、そして魔神族を人間の迫害から守るシステムを作ったのが厳那殿だ。彼は魔神族にとって恩人でもある」
「そんな話、初めて聞きました」
「とりたてて言うことでもないからな」 
「そうですか……」

 アルト公国は、王族を筆頭に辺境伯から公爵家に至ってまで重鎮を魔神族が掌握している。
 たしかに人間族が貴族な例も無くは無いが――、その大半は侯爵、伯爵、男爵、騎士爵に限定されている。
 以前から、少しばかりおかしいと思っていたけれど、魔神族の為の国ならば納得も出来るし説明もつく。




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