神装聖剣ファフニール

なつめ猫

ウィンデル城下町事件(12)




「そうです。これは至って普通のことかと思いますが――?」
「なるほどな」

 まぁ、旅に出る俺には関係の無いことだ。
 
「それでは、我々はこれで失礼します」

 アザルは一礼すると、俺達の前から立ち去っていく。
 リポート伯爵が、武力もやむなしと考えて編成した連中だと思っていたが――、そうではないようだな。

「カズト殿」
「ああ、すまない。俺は馬車を取りに戻るから、その間は中の人間の護衛を頼めるか?」
「分かりました!」

 最初にアリスと共に借りた宿に向かう前に、周辺の馬を取り扱っている店などを見ていくが――。

「馬は暑さには弱い生き物でして――」
「朝一番に馬をリポート伯爵様の騎士様がご所望されてしまいまして! ハイ!」
「先ほど、リポート伯爵様の騎士様が――」

 どこの馬屋も残念ながら売れる馬は取り扱っていないらしい――、と、言うか明らかに俺達の出立の邪魔をしているようにしか思えない。
 仕方なく宿屋まで戻る。

「迷惑をかけたな」
「いえいえ。それにしても一度も泊まられませんでしたが良かったのですか?」
「ああ、色々とあってな」

 殆ど、幌馬車の停泊の為だけに宿を借りる形になってしまったが、致し方ない。
 支払いを済ませたあと、宿の裏手に回ると、そこには幌馬車が停まっている。

「はぁ……、仕方ないな……、隣の町まで幌馬車は人力で引くことになるが仕方ないか」

 幌馬車のハーネス部分を両手で掴む。
 そして肉体の強度や、身体機能、反射神経を含む視神経を常人の数十倍まで強化する桂木神滅流:疾風雷神を発動したまま、掴んでいたハーネスを持ち上げる。
 今の幌馬車に積載されている飲料や食料、武器など総重量はトンデモない事になっていて本来ならば馬を最低4頭は必要な状態だが――、俺にとっては殆ど苦にはならない。

「――さて、いくか」

 オアシスの都市ウィンデル――、その街中を一人で幌馬車を引きながらアリス達が泊まっている建物へと向かう。
 殆どの人間は呆けた顔で見てくる。
 そして、中には信じられないと言った目を向けてくる人間も居るが、幸い絡んでくるような奴はいない。

「カズト殿……、これは――」

 アリス達が停まっている宿屋の建物前に到着したところで兵士が話かけてくる。

「ああ、俺達の幌馬車だな。世話になったな」
「――い、いえ……。一応、中を検めさせてもらってもよろしいですか?」
「構わないが――、余計な事はするなよ?」
「分かっています」

 まぁ、俺の場合は致死性の毒を盛られたところで死ぬことはないがな。
 通路を通り部屋に入る。

「カズトさん、ずいぶんと時間が掛かったんですね。馬の調達は出来たんですか?」
「いや――、しばらくは俺が引いていくことになりそうだ」
「ええー」

 すごく嫌そうな顔でアリスが答えてくる。
 
 
 

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