神装聖剣ファフニール

なつめ猫

夜の隣に月を(7)




 俺は振り向きざまに右手に握りしめていたコピスを横凪に振るう。
 それだけで、成人男性の5倍近くある筋肉粒々の魔物の体が上下に分かたれる。
 
 ――そして、それと同時に身体能力を極限まで引き上げていた剣速に耐えきれなかったのか、振り終わったコピスの刀身が粉々に砕け散った。

「やはり、脆いな――」

 桂木神滅流:疾風雷神を維持したまま、後方へと跳躍すると――、どれと同時にゴブリンが放ったであろう百を超える矢が先ほどまで立っていた場所の地面に刺さる。
 地面に突き刺していたソードブレイカーとディフェンダーを、それぞれ持ったあと、生体電流を刀身へと流す。

「桂木神滅流:雷光陣!」

 2本の刀身を交差させ十字に切り払う。
 刀身から発せられた巨大な青い雷光が周囲に竜巻を作り出し数百の魔物を消し炭にしていく。
 以前なら――、貿易都市ロマネで使用した時は、【雷切】と【水刃の太刀】の魔力を発動させた時でも百近い魔物を倒すだけで殆どの力を使い果たしてしまったが――、今は発動しても余力がある事に、自らながらも驚く。

 ――否! 何となくだが自分自身の体が以前とは違っていることは理解していた。
 それは、理性でもなく本当で……だ。

 そして桂木神滅流の【陣系】の技を使っても問題ないと、無意識下で判断したからこそ使ったに過ぎない。

「コイツは化け物! サンドワームを先行サセロ!」

 ――声が聞こえてくる。
 それと同時に、桂木神滅流:神眼で周囲を確認していく。

 後方に数十もの魔物が集まっている個所を確認。
 そこから何匹もの魔物らしき存在が散っていくと同時に、周囲の魔物が一斉に俺へと攻撃を仕掛けてくる。

「あそこが指揮官の居る場所か――」

 それにしても、魔物が徒党を組むとか考えられなかった。
 だが、いまは気にしている余裕はない。
  
「まずは敵本体を叩かせてもらう」

 生体電流の抵抗により黒く劣化したソードブレイカーとディフェンダーを前方へと投げつける。
 常人よりも遥かに強化された肉体から放たれた2本の剣は、指揮官であろう魔物を護衛していた魔物に突き刺さり絶命させた。
 その様子を確認すると同時に、地面からグラディウスを2本引き抜く。
 そして生体電流を纏わせて投擲。
 さらに2本を地面から引き抜き投げる。

 合わせて4本の青き雷を纏ったグラディウスが、指揮官までの道を塞いでいた魔物に次々と刺さり爆散。
 さらに2本のコピスを地面から抜いたあと、指揮官に向けて走る。

「ナニをしている! 奴を! 化け物をコロセ!」

 途中で邪魔をしてきた魔物を、生体電流を纏った剣で薙ぎ払っていく。
 ようやく遮っていた魔物を駆逐した所で、赤黒い肌をした3メートルを超えるゴブリンの姿が目に映る。

「ゴブリンキングか」

 ゴブリンキングは、人間なみの知性を持った他種族の――、本能で生きる魔物を纏め上げて兵士として使う能力を持っている。
 以前に、王都ファフニールで読んだ本には、そう書かれていた。

 ――あと、少しでゴブリンキングの本陣に辿りつくところで地面が盛り上がる。

「――ッ!」

 咄嗟に横へと跳躍する。
 すると砂漠の中から巨大なサンドワームが出現し――、先ほどまで俺た立っていた場所を――、周囲に居た魔物ごと呑みこむ。

「オノレ! コレも避けるというノカ!」

 仲間ごと俺を倒すつもりだったようだが……。
 先ほど、サンドワームを使うと言っておいて何を驚いているのか。

「それにしても……」
「コノ、サンドワームのカベをどうにか出来ると思っているノカ?」

 次から次へとサンドワームが、足元の砂の中から出現してくる。
 その数は100を超える。

「ココラ一帯のサンドワームを集めた。使うつもりはナカッタガ――」
「追い詰められて出したってことか……」

 それにしても愚かなことだな。
 100匹纏めて砂の中から一直線で出して壁を作るなど――、攻撃を仕掛けてくれと言っているようなものだ。

 2本のコピスを砂に突き刺したあと、腰から木刀を抜き出す。
 それは大量の精神波――、魔力を吸収して育った木から削り出して作った木刀。
 
 木刀に生体電流を通わせると同時に精密に刻み込まれた魔力文字――、ルーン文字が青く光り輝き生体電流を増幅。
 体内を経由し、身体能力を爆発的に引き上げると同時に刀身には、先ほどまで使用していた鋳造剣などとは比べ物にならないほどの青い雷光が纏わりつく。

「ナ……ナンナノダ……。ソ、ソレハ……」

 サンドワームの壁の隙間から、ゴブリンキングの戸惑いを含む声が聞こえてくるが――、俺は腰を落とし――。

「桂木神滅流:神衣一閃!」

 極度に強化された身体能力にて横凪に振るった木刀は、空間を切り裂き数億ボルトまで増幅された電圧が通る道筋を作りだす。
 そして――、100匹ものサンドワームは一瞬で灰と化した。

 細胞一片まで灰と化したサンドワームは自重を支えきれず崩れ落ちる。

「バ……、バカな……、こんなバカなことが……。キサマ! 一体! ナニモノナノダ――、へ?」

 ゴブリンキングの頭が空を舞う。

「戦闘中に、無駄話をする余裕があるなら戦闘に思考を回すんだな」

 あとは――、と……。

 俺は大将を取られて撤退していく魔物の群れの追撃を開始する。 
 そして――、オアシスの都市ウィンデル周辺の魔物の群れと魔物の集落を壊滅させた頃には――。

「もう朝か……」

 溜息交じりに視線を町の中心部へと向ける。
そこには湖があり、オアシスの町ウィンデルは、オアシスである湖を囲うように作られたのが分かった。
 
 
 
 

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