神装聖剣ファフニール

なつめ猫

セントラル・シティ(12)




「良く分からないな」
「何をでしょうか?」

 セマは首を傾げるが、俺にはその仕草がどうも気にいらない。
 何かを隠しているようにすら思えてしまうからだろう。

「桂木神滅流の剣士が、すぐに死んだと言うなら、どうして俺が桂木神滅流を扱うことが出来るんだ? そもそも祖父が、どうして桂木神滅流を知っていた? 才能がある者は分からないが、少なくとも俺が使っている桂木神滅流は10年以上の歳月を修行しなければ満足に扱うことも出来ないはずだ。――すぐに没したと言うなら、技術を伝える時間さえも無かったんじゃないのか?」

 祖父が言っていた桂木神滅流は、才能が無い者が身を守る物だと――。
 そう俺に教えてくれた。
 それが、神をも滅ぼす剣術だとしたら。
 それは――。

「私達のプロジェクトリーダーである人物が、桂木神滅流を解析して技術を抽出したと言っていた以外、詳しいことは知りません。――もしかしたら、メルキオールが何かしらの情報をプロジェクトリーダーから受け取っていた可能性があります。そもそも桂木神滅流は、人間でしか使うことができませんし……」

 人間でしか使えないか……。
 俺は自分の手を強く握りしめる。
 
「その前に一つ聞きたい」
「何でしょうか?」
「さっきの言い方だと、まるで――、この世界に存在している人間が人間ではないような言い方に聞こえたんだが……」

 微笑みながら俺の話を聞いていたセマの表情が少しだけ陰る。
 まるで――、それは痛いところを突かれたような顔で――。

「和人さんは、この世界のことをどれだけ知っていますか?」
「どれだけって……」

 答えに窮してしまう。
 この世界のことを見て回るために終焉の森から外に出た。
 そしていくつもの国や町や村を見てきたが、自分が居る世界については良く分かっていないというのが率直な感想だ。
 だからこそ、答えをすぐに口にすることは出来ない。

「多種多様な種族が暮らす世界――」
「私が聞いているのはそういう物ではありません。この世界の在り方はおかしいと思いませんか? ということです」
「おかしい……と、言われてもな」

 何を比較にしているか分からない以上は正確な答えなんて分かるわけもなく。

「和人さんは、質量保存の法則というのを知っていますか?」
「――ん、ああ……。一応は……」

 質量保存の法則に関しては、祖父からは習っていた。
 だが、それが――、人間という答えとどう繋がるのか……。

「生物というのは、本来は炭素で作られています。そこに多種多様な元素が織り交ぜられ減数分裂を経て生物として成熟していくのです。それが本来の生物のあるべき姿であり、ヒトが人である所以なのです。ですが――、現在の地表に住まうメディデータは、交配をすることは出来ても、その体は惑星環境改善を行うために我々が作った存在である以上、体を構成しているのは、あくまでも精神感応細胞なのです。精神感応細胞というのは、アガルタの世界に存在する精神波を吸収することで成長していく物です。それは生物の定義から見れば人とは言えない存在なのです。そしてメディデータは、外界の――、アガルタ世界の精神波を体に取り込んで魔法を扱うことが出来ます。そのため、質量保存の法則からは外れているのです。ただし、どれだけの精神波を取りこんで魔力変化できるかは個体の能力によって異なってきますが……」
「つまり……、質量保存の法則に当てはまっている者を君は人間と見ているわけか?」
「はい。――メディデータは、この世界から出たら生きてはいけませんから」
「……生きていけない? この世界? それって――」
「世界に依存している存在が――、自己で自らの在り方を維持出来ないモノが正常な生物であるとは言えないでしょう?」
「だが、他の世界に行けば――」
「それは無理です。何故なら、この世界の外は――、別の惑星には精神波というのが満ち溢れてはいませんから。人間にとって空気のような物だと考えて頂ければ分かると思います。そして桂木神滅流は、人が人として神を倒すための剣術です」
「だが、俺の生徒は桂木神滅流を扱うことが――」
「それは、魔法を使い限りなく近い現象を起こしているだけです。本来の技と比べるまでもないと思いますが?」
「……」

 生徒達に教えた時に、普通に扱うことが出来たことから気にしてはいなかったが……。
 ――ん?  

「待て! どうして、そんなにハッキリと言い切ることが出来るんだ?」

 セマは、俺の生徒のことを知らないはずだ。
 それなのに、どうして断定的に話を進めている?
 まるで俺の行動をずっと見てきたかのように――。

「和人さん。貴方を――、和人さんが神衣を使った時からずっと見ていました」
「ずっと!?」
「はい。私達の計画には、どうしても必要だったのです」
「計画?」

 彼女が――、セマが周囲のポットを見渡す。
 そして笑顔を見せてくる。

「ここで目覚めの時を待つ大勢の人々を救うための計画です」




「神装聖剣ファフニール」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く