神装聖剣ファフニール

なつめ猫

大陸の異変(12)




「ハァハァハァ。カズト様は何ともないのですか?」

 ダンジョンに入ってから一時間ほど彷徨ったあと、休憩していると彼女が語りかけてきた。

「何とも無いというか、いつもよりも体調がいいくらいだな」

 話している途中に近寄ってきた甲殻類の虫を手刀で真っ二つに切り裂きながら俺は答える。
 魔物の姿からアンガスの町を襲ってきた魔物と同じ魔物だというのが分かった。
 ただ、鉄よりも硬いと思っていた魔物の体を木刀ではなく手刀だけで切り裂けたのは、さすがの俺も驚いていた。

「そ、そうなのですか……」
「ああ。それと様付けはいらないからカズトでいいぞ?」
「それでは……、カズトさんでいいですか?」
「構わない。それとダンジョンでの活動が辛いようなら一度、ダンジョンを出てアンガスの町まで送り届けるがどうする? 俺としては、町に戻ったほうがいいと思うんだが……」
「いえ、それでは余計な手間を掛けてしまいますので……」

 彼女の言葉に俺は小さく溜息をつきながら、その場に腰を下ろす。
 幸い昆虫類は近づいてくる前に音を発してくれているから近寄ってくればすぐに分かるから、ずっと立っている必要はない。

「アリス、一つ気になったんだが……」
「はい、何でしょうか?」
「以前にも侵食型ダンジョンを攻略したことがあったんだが……」
「侵食型ダンジョンが他にも存在しているのですか?」

 彼女の言葉に俺は頷きつつもアイテムボックスから水筒を二つ取り出して一つをアリスへと渡す。

「アイテムボックスですか? カズトさんは空間魔法を扱うことが出来るのですか?」

 俺は頷きつつも先に水筒に入っていた水を飲む。
 アリスも俺が水を飲んだのを確認すると竹で作られた水筒に口を付けていた。
「さっき話をした侵食型のダンジョンだが、俺が攻略した以前のやつは冒険者が総出で攻略に当たったんだが、その時にはアリスのような体調不良を訴えた冒険者は居なかったんだ」
「そうなのですか? 侵食型ダンジョンは入り込んだ人間に多少なりとも影響を与えると言うのが常識なのですが……」
「そうなのか?」

 そんな話を貿易都市ロマネで一切、聞いたことがないな。
 もしかしたら、カイゼル帝国だけの常識なのかも知れないが……。
 だが、アリスの体調不良に侵食型ダンジョンが関与しているのは間違いない。
 何故なら、アンガスの町から侵食型ダンジョンが存在する場所までは休憩はほぼ必要なかったのに、ダンジョンに入ってから何度も休憩をするようになったからだ。
 どちらにしても、推測しようにもサンプルが足りないこともあって結果を導き出すことは出来ないだろう。
 ――それなら、アリスから情報を仕入れると共に休憩をした方が効率がいい。

「休憩の合間だから、いくつか聞いておきたい事があるんだが……」
「何でしょうか?」
「町長が俺に提示してきた魔力が込められた石のことを何か知っているなら教えて欲しい。エルフが妖精から貰い受けた石ということはヘリバインに教えてもらったが、俺は妖精やエルフと言った物に詳しくはないからな」

 俺から受け取った水筒に入っていた水を飲んでいたアリスは、水筒から口を離すと「なるほど」と、言った表情をした。

「私も詳しくは知りませんが、妖精族であるブラウニーから先祖のエルフが白色魔宝石を貰い受けたのは何か取引があったからと聞いています」
「白色魔宝石?」
「はい。ローレンシア大陸というのはご存知でしょうか?」
「たしか、この大陸から東に存在する巨大な大陸だったか?」

 アリスは、俺の答えに頷く。

「そのローレンシア大陸から、妖精がエルリア大陸に渡ってきたのですが、その際にエルフが住まうエルフガーデンに齎されたのが白色魔宝石と言われています。それ以上のことは、私も知りませんけど……」
「なるほど――」

 彼女の言葉を聞いた後、俺は通路の壁に背中を預ける。
 強大な魔力を内包する石の入手が容易に出来るのなら【雷切】と【水刃の太刀】の力を何度も利用できると考えていたが、そう簡単にはいかなそうだな。

「カズトさん、そろそろ――」
「もう大丈夫なのか?」
「はい。ゆっくりしていれば体調が良くなりますので」
「そうか」

 俺は立ち上がりながら【神眼】を発動し下の階層へ向かう最短のルートを調べる。

 


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