神装聖剣ファフニール

なつめ猫

嵐呼ぶ剣魔大会(8)スピカside(後編)

 両手で構えていた紫電を纏う私の木刀と、マーケットが手に持つ青白い焔を纏う槍が激突した瞬間、私は後方に吹き飛ばされていた。

 空中で体制を立て直しつつ、地面に木刀を着き差し吹き飛ばされた勢いを緩めるために力を込める。
 視線を前方に向けた瞬間、青い焔の閃光が私の方へ向かってくる。
 とっさに木刀から両手を離し地面を蹴り横へと転げ避けると、私の手から離れた木刀は主から離れたことで普通の木刀に戻り――青い焔に焼き尽くされた。

「くっ――」

 私は、唇を噛みしめる。
 戦闘中に、獲物から手を離すなど剣士としてはあるまじき行為。
 気配で、殺気で分かる。
 あの男が近づいてきていることに。
 ただ、私は疑問に思う。
 どうして、マーケットという男だけが戦って他の20人近くのローブを着た者たちが戦わないのかと。

「よく今のを躱した。だが……もう戦う力も残ってはいないだろう?」

 マーケットは私を見ながら、青白い焔を纏う槍を――神代兵器を向けてくる。
 私はゆっくりと立ち上がりながら四肢を確認していく。

 一撃――たった一撃の攻撃を受けただけで、戦う力が殆ど残っていない。
 力も魔力も尽きかけている。
 四肢に至っては、風の防壁と【桂木神滅流】の生体電流操作により致命傷を受けてはいないが、動かすと激痛が走る。

「戦う力ですか……」

 私は、ふらつく身体に力を入れながら残りの魔力を生体電流に変換し増幅していく。
 そして、それを細胞増殖に使い肉体の修復をはかる。

「そうだ! カイゼル帝国の奴は、俺を倒した奴と戦わせてやると言っていたが……」

 目の前の男、マーケットは、そこで肩を竦め「俺の前に姿を現したのは、見習いってところか? 正直ガッカリしたぞ?」と、私に独白してきた。

「私と、貴方が戦ったカズト先生を同じにされても困ります」

 私は、吹き飛ばされたときに脱臼した肩を入れながらマーケットの言葉に答える。

「だが……まぁ――戦士としての気概がローレンス王国のどの騎士よりもあるな。だから……手加減をせずにひと思いに殺してやろう!」

 マーケットは、口角を上げると私に向けて青い焔の壁を発してきた。
 私とマーケットの間に存在する全ての木々や草は一瞬で蒸発し、私に迫ってくる。

 その焔を見ながら私はため息をつく。 
 私、単独の力じゃ目の前の男には勝てない。
 そのことを理解する。
、一か月も死ぬ気で修業してきても足元にも及ばないことに歯噛みしながら腰から龍短刀を抜いて私は自分の右腕に刺した。

「なんだと!? 血迷ったのか?」

 私がとった行動にマーケットは驚きの声を上げてくる。
 でも血迷ったわけじゃない。
 本当は力を温存しておきたかった。
 だって、今から使う力は私の力だけじゃないから。
 でも、ここでこの男を止めないと皆が危険に晒される。
 それだったら――。
 私の自分の力だけで戦うなんていう下らないプライドなんて捨てて見せる。

「黒龍神光臨!」

 まだ意識がハッキリとしていない、自我が芽生えたばかりの黒龍神族の雛とのリンクが、契約法具である龍短刀を通して直接繋がる。
 体内の魔力が、細胞が、黒龍神族の膨大な魔力により強化された。
 私は右手を振るう。
 それだけで巨大な魔力の奔流が周囲の魔力の根こそぎ消滅させ、魔力を根源としていた青白い焔すら喰らい尽くす。

「ば、ばかな……そ、その姿……その姿は一体なんなのだ!」

 マーケットは、私の黒龍神化した姿を見て酷く驚いている。
 私も初めて、行ったときはびっくりしたけど……。

 今の私の姿は、背中から2対の黒い翼を、額から2本の角を生やしており身体中至るところを黒龍神族の鱗により覆われている。

「私は負けるわけにはいかないんです!」
「くくくくっー……。アーハハハハハハ」
 私の言葉にマーケットは、額に手を当てると先ほどとは打って変わって上機嫌になり「よいぞ! それでこそ、私を倒した奴の弟子なだけはあるな!」

 マーケットは、神代兵器である槍を私に向けて突撃してくる。
 ただ――。

 私に触れた瞬間、神代兵器は粉々に砕け散ってしまう。

「ば、ばかな……こんな、こんなバカなことが――」
「申し訳ありません。だから……使いたくなかったんです!」

 私は左軸足を地面に突き刺すと、腰を上半身を回転させ右拳でマーケットの鎧――腹の部分を殴りつける。
 それだけで、マーケットの鎧は粉々に砕け散り、私の拳はマーケットの肋骨を粉砕し内臓を破壊し上空へと打ち上げてしまう。

「【ドラゴンロア】!】

 追撃のために黒龍神族のドラゴンのみが放つことができる極限まで圧縮した超振動砲を放つ。
 空中で避けることが出来ないマーケットは、【ドラゴンロア】をまともに受けるが「ぐはあああああああ」と叫びながら、ドラゴンロアにより破壊された結界から場外へと吹き飛んでいった。
 そして、ドラゴンロアの影響で闘技場内の結界が崩壊を始めた。


 

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