神装聖剣ファフニール

なつめ猫

形見の魔剣

「どうかしたのか?」
「ううん、なんでもない。でも、本当にいいの? 前にカズトの御爺さんから聞いたけど……桂木神滅流は、神木から切り出して作ったモノでしか真価を発揮しないって――」
「まぁ、そうなんだが――今更、それを言ってもどうにかなるものじゃないからな」
「うん……でも、あの魔剣は……ユリカさんが残したモノって――」
「エイレンが気にすることはない」
「でも!」

 今日は、何だかエイレンがずいぶんと絡んでくる。
 そこで俺はふと思い至った。

 エイレンは、小さい頃に母親を亡くしている。
 そして白龍神族は、装飾品に拘りを持っていないことから、母親が残したモノがまったくない。
 だから、エイレンは思い出の代物にとても深い愛着を持っている。

「大丈夫だ、武器や形在るモノは何れ壊れるものだし……それに、桂木神滅流は爺さんも言ってたとおり、弱い者を力無い者を守る為の剣術であると同時に、魔法が使えない弱い人間が唯一、魔法を使う者に対抗するために編み出された技でもあるんだ。だから――ロマの住民を守れて壊れたのなら、それは――本望と言うやつだろう?」
「……」

 俯いてしまったエイレンの頭の上に手を乗せながら俺は語り続ける。

「だから、誰かを守ってそれで壊れたのなら問題ないだろ? むしろ、守れなかった方が母さんに怒られると思う」

 エイレンの銀色の髪を撫でながら説明をすると「うん――。カズトがそう言うなら」と、小さく呟いたあと、頷いてきた。
 ただ――その表情は、まだ納得してないようにも見える。
 これだけは、仕方ないと諦めるしかないな。
 母親の記憶があるエイレンと、物心ついた時から爺さんと二人きりで暮らしてきた俺とでは、母親が残したモノに対しての思い入れが違うのだろう。
 だから必然的に考え方、捉え方が違うのも仕方ない。

 とりあえず、話題を転換した方がいいかも知れないな。

「エイレン、俺の事を英雄とか言っていたが、その出所はラフラが広めているのか?」
「――えっ? えっ、えっと……冒険者ギルドが率先して流してるって聞いたけど?」
「なるほど。……それなら一度、冒険者ギルドに顔を出して、その噂を止めて貰った方が良いかもしれないな」
「どういうこと?」

 エイレンが首を傾げて俺に問いかけてくる。
 一瞬、冗談で聞き返してきたと思ったが、そうではないようで俺の瞳をまっすぐに、不思議そうに見てる事から、俺の言葉の真意を理解しているとは言い難いように思えた。

「はぁ……。いいか? 冒険者ギルドが、率先して俺の情報を流しているんだよな?」
「うん――」
「それなら、冒険者ギルドに話をつけて、その話を止めてもらう。もしくは情報拡散を止めてもらう必要があるわけだ」
「うん、うん」
「だから、冒険者ギルドに行って、事の顛末を伝え、間違った情報拡散を止めてもらうように言わないといけない」
「なるほど! どうして冒険者ギルドにいかないといけないのか分かったけど……。でも! どうして! カズトが人気者になる事を、わざわざ止めない行けないか分からないよ?」
「あー……」

 そういえば、白龍神族は村一番の人気者になるために、年に一回の戦いをしていたような気がする。
 つまり白龍神族は、目立ちたがり屋なのだ。
 ただ、全員が全員目立ちたかり屋と言う訳もなく、俺は静かにひっそりと世界中を旅したいと思っていたわけで……。
 それがこんな風に晒しものになるようなのは大変困る。

「え? どうしたの? 何かカズト――変な事を考えてない?」

 エイレンは頬を膨らませて話しかけてくる。

「――いや。とくに何も考えてない。ただ、俺は静かに普通に世界を見て回りたいと思っていたのに……どうして、こんな風に、厄介ごとばかりに巻き込まれるのかなと悲嘆しただけだ」
 「カズトが……静かに? 平和に? 世界を回ってみたい? ええー……」

 俺の言葉を聞いたエイレンは意外そうに叫んでいたが、そんなに俺はおかしな事を言っただろうか?
 基本的に平和主義な俺にとっては、売られた喧嘩は、高値であっても安値であっても購入して利息を追加して返す主義なだけであって、戦闘大好き人間ではないんだよな。

 俺は肩を竦める。
 これ以上、ここに止まって話合いをしていても埒があかない。

「お前が普段、どういう目で俺を見てるかは、この際、置いておくとしよう。とりあえずは、肩を貸してくれ――」
「カズトって、とっても手がかかるよね!」
「うるさい――」

 桂木神滅流の使いすぎと、魔剣である【雷切】と【水刃の太刀】の魔力開放により、いまだに体の自由が利かない俺は、エイレンに支えてもらう。

「それじゃ冒険者ギルドにいきましょう!」
「テンション高いなお前――」

 エイレンは、俺の事を見上げてくると「だってカズトに肩を貸したのなんて何年ぶりか分からないから」と、頬を赤くして語りかけてくる。

「まぁ、たしかにな――。最近は、こんな事無かったからな……」

 深淵の森で修業に明け暮れていた時よりも、外の世界に出た時の方が戦闘経験値が高いというのは、おかしな話だが実際起きたからな。世界は広いってことだろう。

 俺はエイレンに肩を借りて、貿易都市ロマネの冒険者ギルドに向かった。



「絶対おかしい。間違いなくラフラの命令だろ……」

 冒険者ギルドから出てきて、俺とエイレンは近くの食堂で発泡酒を頼んで喉を潤していた。
 そして、俺と言えば――。

「でも、いいんじゃない? カズトも冒険者登録すれば、かなり高いランカーからスタートできるんでしょ?」
「まあ、そうだが……」

 記憶の糸を手繰り寄せ、先ほど冒険者ギルドで話した内容を俺は思い出す。



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