神装聖剣ファフニール

なつめ猫

エピローグ(前編)

 室内は、どこまでも薄暗い。
 ガラスが高価な為、一般庶民まで周り切っていないのだ。
 そのため、窓というの基本的に木の板で作られており、外から明かりを取り入れるためには、両開きの木で作られた小さな扉を開けなくてはならない。

 そんな室内に数度のノックが響き渡ると、部屋の中に一人の人物が入ってくると、換気のためだろうか?
 その人物は、部屋の窓を――木で閉ざされていた扉を開ける。
 すると、外から風が入り込んでくる。

「部屋の中に、カズトの匂いが籠ってるのはいいんだけど……」

 窓を開けた事で部屋に入り込んできた明かりに照らされたのはエイレンであった。
 白銀の髪は対応の光を反射し眩しいくらいに光輝いている。
 そしてルビーのような真っ赤な視線の先には、カズトが眠っており――。

「でも、淀んだ空気は換気しないといけないから」

 そう呟くエイレンの表情は、とても残念でならないという感じを見せている。
 そして外から入り込んできた光が、カズトの顔にかかると――。



「眩しい……」

 俺はゆっくりと瞼を開けていく。
 自分がベッドの上で寝かされているというのは分かる。

 自分の意識が……視線が焦点を結んでいき――。

「カズト? カズト起きたの?」

 俺が目を覚ました事に誰かが――いや、俺の事を知っているのは数人くらいなものだろう。
 ましてや、俺の名前を呼ぶ人間なんて限られる。
 声がした方へ視線を向けると、そこには白龍神族の長であるエイルバートラスさんの娘であるエイレンが立っていた。

 俺はエイレンの姿を見て目を細める。
 エイレンは俺と知り合ってからと言うもの髪を伸ばしており、今では御尻まである。
 俺が住んでいる家に遊びに来ている時は、立つ時に髪を踏んだりすると痛い! とか言っていた。
 その時に、「髪を伸ばす必要なんてないだろ?」と、言ったら「カズトがー」と俺の事を見ながら口を窄めて文句を言ってきた。
 最後らへんなんて、「カズトのバカ!」などと理不尽な事を言われた。
 それ以降、髪の長さについては俺は一切、言わないことにしている。
 どうせ言っても、文句を言われるだけだから。

「とても綺麗だな――」

 手入れの行き届いたというか白龍神族の強靭な生命力からくる髪の輝きは、窓から入りこむ日の光を反射し、より一層神秘的に光り輝いている。

「え……?」

 俺の事を見ていたエイレンが、俺の言葉を聞くと顔を真っ赤にして「う、うん……今日は青空がキレイだよ!」と、目線を逸らし答えてくる。

「いや、エイレンの髪の毛は日の光を反射して光り輝いてキレイだなと思っただけなんだが……それに、俺の寝ている場所からじゃ外の様子は見れないだろ?」
「う、うん……」

 エイレンは俺の言葉を聞いたら顔を伏せってしまう。
 俺は何かおかしな事を言ったか? と考えるが思い当たる節はまったくない。

「どうかしたのか?」
「もう! カズトのバカ! そんな風に簡単に軽い気持ちで女の子を褒めたらいけないんだよ!」
「おいおい……」

 俺は、別に褒めていないだろ。
 エイレンの髪の毛が、日の光を反射してキレイだなと思ったから正直に言っただけであって……まったく意味が分からない。
 理不尽な怒り方にも程があるだろうに。

 エイレンは両手で口元を抑えながら顔を真っ赤にして怒りを露わにしているが、まったく困ったものだ。
 これでは、俺が何かを言う度に文句を言われてしまうではないか。

「そ、そそそそ、そういえば、もう体は大丈夫なの?」

 怒りで動揺しているのかエイレンが俺に問いかけてくる。
 俺は無言のまま、ベッドから降りて床に足をつけて立ち上がろうとする。
 床は、俺の体重を支えると同時に、木材特有の軋む音を発し――。

「カズト!?」

 俺は、その場でふらつく。
 すると、エイレンが驚くほど大きな声を発すると近づいてきて体を支えてくれる。

「まだ、回復しきってはいないようだ」

 エイレンに支えられながら部屋の壁に手をつくと肉体の状態を確認する。
 体内の細胞を動かしている生体電流は問題ないようだが、動きに淀みがある。
 おそらく【魔剣解放】の影響で、一時的に生体電流を動かしている何かに問題が起きているのだろう。

 祖父が言っていたが、魔力と生体電流というのは限りなく似ていて互いに干渉し合うと言われていた。
 俺が祖父から渡されていた【雷切】と【水刃の太刀】は、数百年という年月をかけて蓄積された魔力の塊。
 そんなモノの力を解放したのだ。
 影響がない方がおかしいというところだ。

「カズト……しばらく寝ていた方がいいんじゃない?」
「いや――」

 エイレンの言葉に俺は頭を振る。
 軽い病気や筋肉痛の時もそうだが、部屋に安静にするより体をある程度動かした方がいいというのは、祖父から教えられており、多少は無理してでも体を動かした方がいい。
 その方が、身体の回復も早まるだろうしな。

「下手に休むよりかは、動いていた方が楽だからな。だから問題ない」
「…………もう、だから……私、心配したんだから! 休めるときに休まないと!」

 エイレンが、俺を支えながらもギュッと着ている洋服を握りしめてくる。
 そして俺を見上げてきたエイレンの瞳は、何故が涙を湛えていて――。

「おいおい、どうした? お腹でも痛いのか? いや……白龍神族が体調を壊す訳が――」

 俺は途中で言葉を止める。
 どうもからかっていい雰囲気では無い気がするからだ。




「神装聖剣ファフニール」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く