神装聖剣ファフニール

なつめ猫

決意と決心

 無理な生体電流の消費と木刀が砕けた余波で吹き飛ばされた俺は、地面の上を転がりながら体中傷だらけになる。
 そして四方に散らした加速粒子砲の1本は、王都ファフニールを囲んでいる城壁に着弾。
 大爆発を引き起こし、数十もの建物を吹き飛ばした。

 その様子を見たローレンス王国軍は、誰もが凍りついたように動けずにいる。
 そりゃそうだろう。

 今よりも遥かに文明が進んだ神代文明を滅ぼした要因の一つなのだから。
 そんなモノが目の前に現れて、その力を振るって目にすれば分かるはずだ。

 本能が、神兵が危険だと。
 本能が理解するはずなのだ。

 俺は体中に力を入れながら立ち上がる。
 今の……桂木神滅流の技を使った事で俺の力はもう殆ど残っていない。

 神兵の方を見てもエイレンが何とか抑えてはいるが、いつまでも時間は稼げないだろう。

「カズトさん! 大丈夫ですか……? 申し訳ありません。カズト様が私達に注意してくれたのに……あれほどの強大な敵とは知らずに……」

 ラフラがよろめく俺に肩を貸してくる。
 その目には涙を湛えていて、自身の行動を反省してるように見える。

「分かった……とりあえずは……ラフラ、お前は兵士と魔法師と騎士を連れて、王城へ逃げろ」
「カズトさんは?」

 俺は砕けた木刀の柄を握りながら目の前で時間稼ぎをしているエイレンを見つつ。

「俺は、エイレンと共に時間稼ぎをしてから逃げる」

 ラフラに、そう言いつつも……もう殆ど体が動かない状態に俺は舌打ちする気力すらない。
 やばいな……これは死ぬかもしれないな……。
 まぁ、神兵なら敗れてもと思ったところで「嘘です! カズトさんは、お兄様と同じ目をしています!」と、ラフラが胸の中に飛び込んできた。

「もう嫌なんです! 大事な人が目の前で死ぬのを見るのは……私を守って誰かが死ぬのを見るのはもうたくさんです!」
 何度もラフラが涙を零しながら俺の胸を小さな手で強くもなく叩いてくる。

 それを見て……「パパは最強の剣士なのに、どうして!」と、言う子供の記憶が一瞬だけ脳裏に過ぎる。

「やばいな……今までで一番痛いな」

 俺はラフラを強く抱きしめた。すると、「痛かったですか……? ごめんなさい」と、言ってくるラフラの頭に手を置きながら離す。

「ああ、今までで一番痛かった」

 そう、心に響いた。
 俺は何をしていたんだ……。
 負けそうになったからすぐ諦めるなんて俺らしくないだろ。

「ラフラ……神兵を倒す方法が一つだけある」
「それは一体……?」

 ラフラは首を傾げながら俺に尋ねてくる。

「それは神装聖剣と呼ばれる物だ」
「神装聖剣?」

 ラフラの問いかけに俺は頷く。

「そうだ、剣を振るう者とパートナーである剣になる者、その二人が心を通わせる事で一つとなって戦う術式。それが神装聖剣だ」
「なら! すぐにそれを!」

 俺はラフラの言葉に首を振る。

「ただし、それを使えば剣となるパートナーは高い確率で死ぬことになる。だから神装聖剣は使う事は――」
「カズトさん! 私はローレンス王国の王女であり民を守る責任があります。そして国民を愛しています! 国民を国を守るためにこの命を捧げられるなら……カズトさんと一緒に戦えるなら、私はそれで本望です!」

 俺はラフラの決意に一歩下がった。
 誰かの為に命を使うなんて理解できない。
 それは、狂人の領域だ。
 そんな俺の手をラフラが握ってきた。
 そして気がつく。
 ラフラの体が震えている事に。

 俺は自分の額に手を当てる。
 俺は何て馬鹿だ。
 死ぬのを恐れない奴なんている訳がない。
 それでも皆、何かを守りたいから戦っている。

 それに比べて俺は何だ?

 強い奴に、勝てない奴に当たったらすぐに降伏するのか?誰かに放り投げるのか?
 そりゃ、祖父に未熟者扱いされるはずだ……。 
 俺はラフラの手を握り返す。
 するとラフラが決意の眼差しで俺を見上げてきた。

 ああ、なんて強い瞳なんだろうか。
 そして美しい青い瞳の色なんだろうか。

「分かった!お前の決意汲み取った!」
「はい!」



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