神装聖剣ファフニール

なつめ猫

桂木神滅流 VS 4神将マーケット(後編)

 爆発の余波により周囲に爆音が響き渡り、馬が一斉に逃げ出す。
 甲冑を着ていた兵士達と魔法師達は突然の事で全員が馬から投げ出されていく。
 落馬した人間の中で何人かが辛うじて立ち上がり俺の方へ眼を向けて来た。
 その中の一人。魔法師と思われる者が俺を指差して。

「ば、ばかな!? 魔法だぞ? 向かってくる魔法を破壊? 切り裂いた? 何を……何をあの男はしたのだ!」

 魔法師の一人が、目の前で起きた現象を理解できず声を上げている。
 俺はその魔法師を見ながら一足飛びで近づく。

 そして木刀を振るい魔法師達の意識を全て刈り取った。

「なんという速度! 信じられん!」

 甲冑を着ていた男達は震えた声色で俺にブロードソードを向けてくるが、俺は咄嗟にその場から飛び退く。
 すると赤く燃え上がっている槍が地面に突き刺さる。
 そして地面が爆発した。
 爆発した地面は1メートルほど抉られており威力を俺に見せつけた。
 俺は槍を地面から引き抜く男へ視線を向ける。
 その男は、馬に括りつけていた槍を外していた男であった。
 男は地面から槍を引き抜くと俺へと視線を向けてくる。

「なるほど……その身のこなし……貴様、まさかラフラ姫が雇った冒険者か? その強さ……Sランク……否! SSランクか? なるほど……まさかルシアル王国に所属している彼の有名なSSランク冒険者をラフラ姫のために手配するとは……ルシアル王国はラフラ姫と同盟を結んだということか……」

 何かやたらと目の前の男は深読みしているな。
 俺が聞いてない、知らない情報までペラペラと話している。

「くくくっ、言いだろう! 貴様を単体で、我々にぶつけてきたと言う事は我らを知った上で勝算があると思ったのだろう。舐められたものよ! ローレンス王国4神将の一人! このマーケットが!」
「……そろそろいいか?」

 一人語りをするなら誰も居ないところでやってもらいたいものだが……。

「お前達! この男は私が倒す! お前らは、ラフラ姫と護衛騎士を殺せ」

 男の言葉と同時に兵士達は動き出すと無事だった馬に乗りラフラ達の方へ移動しようとする。

「逃がすかよ!」

 俺は木刀を振るう。
 斬り裂かれた大気は真空の刃を発生させ陽炎のような物にぶつかると同時に破裂した。

「なるほど……貴様の魔道武器は風を操る武器か?」

 俺は陽炎の正体を熱から来る大気の気流変化だと一瞬で看破する。

「そちらこそ、熱を操る武器か?」

 マーケットが俺の前に兵士達を守るように立ちはだかってくる。
 この状態だと攻撃をしても、膨大な熱量で俺の【桂木神滅流:風斬系】の技が封じられてしまう。

 無事だった馬を5頭ほど確保すると兵士達はラフラがいる方へ走っていく。
 距離は1キロメートル。
 馬の時速は60キロメートル程。
 つまり、俺に残された時間は……1分~3分ほどと言ったところか……。

「時間が惜しい、悪いが……」
「こっちもだ! たった5人でカーゼル達を倒せるのは思えんからな!」
「つまり……」

 俺の言葉にマーケットは頷いてくる。

「この勝敗が全てを握ってるということか?」
「そうなるな!」

 俺の言葉に答えてくるマーケットはすでに赤熱している槍を頭上で回転させながら近づいてくると上段から打ちおろしてきた。
 俺はその槍を地面を蹴り右に避けながらマーケットに近づく。
 そこでマーケットは、口角を歪ませながら俺を見てきた。
 すかさず俺は、マーケットの鎧を蹴りながら距離を取ると一瞬遅れて、俺が居た場所が槍で横凪ぎされていた。

「とんでもない反射神経だ。これが……SSランクの冒険者の実力か?」

 俺は正中線に木刀を構えながら息を整える。
 魔剣を使えば倒すのは簡単だが、取り出してる時間はない。
 思考しているところで、目の前でマーケットは自身の頭上で槍を回転させ始めた。
 槍の穂先が黒、赤、白と変化していく。

「SSランク冒険者! 貴様に我が奥義を見せてやろう! プロミネンス!」

 回転させた後にマーケットが振りおろした槍は、巨大な閃光を放ちながら俺へと向かってくる。
 俺は【桂木神滅流:疾風雷神】の精度を引き上げて常人の数百倍まで肉体強度、反射速度を引き上げ避けた。
 避けた俺の脇を通り過ぎた閃光は数十メートル先まで地面を蒸発させた。

「クククッ……ハハハハハハッ! まさか! まさか! 私の奥義を避けることが出来るとはな! ここまですごいものなのか! SSランク冒険者というものは!」
「勘違いしているようだが、言っておく。俺は、SSランク冒険者では無い」

 俺の言葉に笑っていた男が動きを止めた。

「では貴様は一体?」
「俺か? おれはただのカズトだ!」

 俺の答えにマーケットは……突然、肩を振るわせると。

「ハハハハハハハハッ、まさか……これほどの使い手が冒険者ギルドではなく普通にいるとは! よいぞ! 貴様の強さ! SSランク冒険者よりも上と見た! ならば私も全力を持って……この神代武器フレイブランスを持ってして貴様を倒すとしよう!」

 男は高らかに告げてくる。
 俺は男の言葉を聞きながらも木刀を右手に持つと【桂木神滅流:疾風雷神】の精度を引き上げていく。
 そうすることで、俺の五感、肉体、細胞レベルが常人を越え上昇する。

「フレイブランスを手に入れてから私は全力を出す事ができなかった。礼を言うぞ! カズト! 貴様になら全身全霊を! 全力を出す事が出来そうだ!」

 マーケットは自身の頭上で槍を回しながら穂先を白から青白に変化させた。
 それに伴い周囲の水素分子が蒸発していき、急速に周囲の草が枯れていく。

「とんでもない熱量だな……」

 こんなところで、神代兵器コロナランスと相対するとは適合者がいるとは思わなかった。
 俺は木刀を両手に持ちかまえる。
 そして木刀の封印を解除。
 木刀に刻まれている生体魔術回路に、【桂木神滅流:疾風雷神】で作り出している膨大な生体電流を流しこむ。
 それに伴い、【終焉の森】の御神木で作られた木刀に刻まれた生体魔術回路が起動する。

 深く静かに息を吐き吸い込み体内の生体電流を制御し肉体の強度を極限まで引き上げる。
 それにより俺の体にはうっすらと陽電子の膜が形成され、木刀に刻まれた無数の生体魔術回路は俺の力を吸収し木刀に纏わせる。
 それはイカヅチとなり雷へと昇華する。
 俺の姿を見たマーケットは口角を歪めると。

「貴様も大概ではないか! よい! よいぞ! いくぞ! カズト!」

 マーケットが、俺の元まで走り近づいてくる。
 そしてマーケットにより横凪ぎに振られた10000度を超える槍の穂先を俺は、体を倒すことで避け――そのまま体を捻る事でマーケットの顔を目がけて蹴りを入れる。
 たしかな手応えと共にマーケットの体が宙に一瞬だけ浮く。

 俺は体を、捻ったまま軸足を回転させ居合抜きの構えを取る。

「ば……ばかな……い、一体……どれほどの移動速度をきさまは……」

 マーケットが驚くにも無理はない。
 極限まで高めた【桂木神滅流:疾風雷神】の移動速度は雷と同じ速度で動く事が可能になる。
 それはまさしく、雷神のごとし!

「これが、貴様の敗北だ! マーケット!!【桂木神滅流:雷光刃】」

 全ての極限を詰め込んだ一瞬の太刀は大気を空間を切り裂き、神代兵器ですら一瞬で破壊・粉砕する。
 砕かれた神代兵器は貯め込んだ力を解放し周囲を明るく照らす。

 そして発生した衝撃波によりマーケットの体は上空に跳ね飛ばされ地面に激突し数メートル転がると、そのまま動かなくなる。

 俺は、マーケットを一瞥すると木刀を腰に差すとすぐにラフラの元へ向かって走った。







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