ただの世界最強の村人と双子の弟子

ヒロ

第?話 強欲神誕生秘話


 初代神王が創り出した世界の統治、もしくは全滅したとされる悪魔族への決戦兵器として創り出したとされる5つの神器。

 "生の神器"、エクトリス。"死の神器"、イエリアス。"ことわりの神器"、エホラスト。"かなたの神器"、ヤカナラト。"欲の神器"、フラシスタ。

 これらの神器は後の高位な神が創った神器とは格が違い、これらの1本でも所持していたら、数多の世界を支配できると言われている。
 
それほど強大な力を持つので、歴代の神王に厳重に管理されている。そんな神器を盗みだした、極悪な神が居た………。







ージリィジリィジリィ!
『緊急態勢!緊急態勢!"欲の神器"が何者かに略奪された!繰り返す!"欲の神器"が何者かに略奪された!至急厳戒態勢を取り、必ず取り返せ!!』

 神殿内に耳を塞ぎたくなる程の声量でアナウンスがかかり、未だ痛む傷口が更に痛む。あの保管庫から脱出する時、正直、能力の発動が少しでも遅れていれば死んでいた。まさか神王自ら居るとは思わなかった。

「……ふぅ、ですが、これさえあれば……」

 両手で抱いた圧倒的な存在感を放つ金色の斧。しかも、その斧の柄から先近くまでが透明な筒のようなものになっている。
 何でも、"欲の神器"は欲を叶える神器らしい。そして、欲を叶える事も出来れば、欲を溜めて力へと還元出来る。まさに、欲というものの象徴でもある神器だ。
 こいつを使えば、私の野望は実現出来る。だから、今はここをくぐり抜けないと。

「居たぞ!略奪者だ!!捕らえろ!!」

 どうやら気配を探知、もしくは透視出来る者が居たのか、居場所がバレてしまい、遠くから多くの足音、近くからは1人の足音が聞こえる。
 この場から離脱したくても、この神王殿では魔法の系統は一切使えない。魔道具もだ。神独自の能力は使えるが、私の能力はそういうものじゃないし、門も開けない。なら、ここはーー

「"欲の神器"よ!帰還したい私の欲を叶えよ!!」

 勢い良く天に掲げたのと同時に透明な筒の底から薄い赤紫色の光が急激に伸び、3分の1まで行った後、全て消えて視界が一気にすり替わった………。







「チィッ!逃げられたか……」
「申し訳ございません!責任を取って自分が自害をーー」
「よせ!責任を感じているなら1秒でも犯人確保の為に動け!」
「ははっ!!」

 警備神兵のリーダーである『警備神』が馬鹿な事をしようとしたが、今『警備神』を失う訳にはいかないので思い留まらせ、捜索に向かわせる。警備の仕事とは違うが、今は警備は必要無いだろう。

 それにしても、まさか神器を盗む奴がいるとはな。アハナが居なかったとしても、それなりに力はあると思っていたが、あと一歩のところで逃げられるなんて、神王失格だ。

 ……起きてしまった事は仕方ない、対策を考えよう。
 まず、捜索及び排除及び回収はアハナしか適任者は居ないだろう。
 存在を完全に隠す力も堕神を防ぐ力も他の世界に行っているかもしれない相手を探すのにはうってつけだ。
 だが、いくらアハナといえど神器を盗んだ相手と戦うのは問題無くても神器が絡んでくるとなると勝てないだろうから、アハナには何か神器を貸し与えないといけないな。となると、神器の中でも強力な"死"を貸し与えた方が確実だな。

「よし、『宰神』!」
「お呼びですか?」
「アハナを保管庫へ呼べ。我もすぐ行く」
「承知しました」

 突然の呼びかけでも真っ先に駆けつけてきた『宰神』に指示を出し、荒れた保管庫へと向かう。この時、"#望__かなた__#"の所持者に呼びかけなかったのが運命が狂い始める事を知らずに………。







「はぁ、はぁ」
「お、あんたがそんなボロボロになってんのは初めて見たな」

 アジトにて、私が傷だらけになっているのを面白そうに見る『戦神』を始め、『暴神』や『破壊神』、『刈神』などが集まって来る。

「…どうやら目的は果たせたようだな」
「ええ。ですが、もう意識を保っているのも辛いですね」

 "欲の神器"を部屋の壁に立てかけ、皆を見渡せるように背の低い机に立ち、呼びかける。

「私はこれから"欲の神器"をある程度設定してから、眠りにつこうと思います。今回であまりにもリソースを使ってしまったので、長い眠りになると思います」
「ので、これからは"欲の神器"があなたたちのトップになります。神名はそうですね……『強欲神』とでもしておきましょうか」

 私の提案に反対する者もいるが、その大半が雑魚で、上位の神たちは別に問題は無いという表情になっているのが大半だ。

「我ら『#神の強欲__ゴットグリード__#』の目的を遂行するために、"欲の神器"の力は大きな一歩を踏み出せるものとなるだろう!」
「『#神の強欲__ゴットグリード__#』は力こそ全て!力がある者が全てを決めるっ!文句のある奴は今来い!」

 私は手負いだ。それなのに、来ようとする者が居ないのは人望なのか。どっちにせよ、来る者が居なくて良かった。これで"欲の神器"を変革出来る。

「では、話は以上だ。今から自室にこもるので、立ち入りを禁止する」

 机から降り、"欲の神器"を掴んで歩く。自室の扉を開けようとしたら、『暴神』が開けてくれた。

「すまない、ありがとう」
「いえ、お気をつけて」

 『暴神』はゆっくりと扉を閉めた。
 さて、私の神気が持つか、"欲の神器"の暴走で殺されるか。全ては神器様にかかっている………。







「………"欲の神器"、フラシスタです。望みは何ですか?」

 目の前に現れたのは明るめの紫色の髪をなびかせ、体は紫色の光で構成されたもので、顔立ちは生気の無い暗めの女性というイメージ。目は強い神の証である真っ白に輝いている。

「望みは世界の変革。その為に核世界である『オリジン』を乗っ取れ」
「代償は?」
「君の自我」

 本来なら認められないが変革は成功したようで、うずくまり、何やら呻いている。本当に自我を代償にしているみたいだ。

「暫くは私の部下に従え。だが、アハナの左腕を食らってから行動を起こせ」
「……了解……」
「そして、お前の神名は『強欲神』だ」
「…………アァ」

 もはや言葉も喋らなくなった『強欲神』は私の部屋を出て行った。
 全てやる事を終えた私はベットに飛び込み、修復術式を自身にかけてから重たかったまぶたを漸く下ろした………。







「……ほう、これが『強欲神』か」
「何とも言えねー」「だが、強い力を感じる」

「そうでしょうとも。では、『強欲神』、アハナの左腕を食らって来い」
「アアァァ……」


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 いかがでしたでしょうか?長い時間をかけて漸く公開された話でしたが、みなさんが少しでも満足頂けたら幸いです。
 では、次の300人突破記念では、『#神の強欲__ゴットグリード__#』結成秘話と致します。まあ、無理だと思いますが、まだまだファイルシリーズは続きますので、いつかは300人行く事を夢見て!

 では!

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