ただの世界最強の村人と双子の弟子

ヒロ

第0話の18 クソ勇者

===ユウキ視点======================== 

「……よぉ、初めましてだな。同郷者よ」

 突然現れた俺という存在に、5人は驚いて固まっている。

 5人のうち2人が女性で、全員学生だ。
 2人の女性のうち、1人がポニーテールに髪を結った活発そうな奴。
 もう1人が長髪で、生徒会長とかが似合いそうな、責任感が感じられる真面目そうな奴。

 男の方は、1人は眼鏡をかけてガリ勉っぽい雰囲気を出している奴に、ワイシャツやズボンといった制服をだぼだぼに来ていて、首に髑髏のネックレスをかけている、茶色の髪のチャラそうな男。
 そしてもう1人は、右手に誰かの胸部の1つを持ち、左手には血塗れになった小刀を持っている、どこにでもいそうな普通の男だった。

「………誰?アイツ?」
「さあ?」「知らなーい」「僕も全く」

 チャラそうな男の問いに、3人が答えられなかったが、ただ1人、一番バイオレンスな男は俺を見て笑った。

「……もしかして、あの女が呼んだ助けじゃないの?」

 それを聞いた途端、残りの4人が笑い出す。
 俺は無言で歩き出す。それを見て更に笑い出す5人。

「アハハハッ!そいつは~マヌケだな~!!俺らに勝てる訳もねぇのに~!お願いされちゃってぇ~!!」

 俺はなお無言で歩く。いや、少し速歩きになってしまっているが、そんな事なんてどうでも良い。

「はぁ~、おいっ」

 次の瞬間、俺の喉元にナイフがそえられ、俺は立ち止まる。
 後ろからチャラ男が俺にナイフをそえたらしい。

「同じ日本人として、最後に聞いてやるよ。お前、いつからこの世界に居る?」

 チャラ男の問いに、他の4人も押し黙る。どうやら他の奴らも気になっていたらしい。
 なら、答えてやるよ。

「……俺はお前らより前から来た、テメェらの先輩だ。クソ野郎ども」
「……はっ、よっぽど死にてぇらしいな」

 チャラ男は怒りを表にして、ナイフを軽く持ち替えた後、俺の喉元に突き刺した。
 が、俺の喉元にはナイフは貫通せず、代わりにナイフが音を立てて砕けた。

「………は?……ぐべらぁっ!!」

 俺はチャラ男が呆けている間にチャラ男の首元を掴んで部屋の奥へ投げ飛ばした。
 壁に強い衝撃が走り、壁の一部が砕けた音と肉が落ちる音が聞こえる中、俺は歩く。

 もう、4人はあの気持ちの悪い笑みなんて浮かべて無かった。ただ、俺が歩いてくるのを瞬きせず見つめてくる。

「……さっきの奴はどうせ"転移"が無制限に使えるとか、そういう能力だろう」

 技姫に聞いたところによると、勇者召喚によって出て来る勇者の『ソウルウェポン』はどれも特別なものが多いらしい。

 奴の左手には『ソウルウェポン』と思われる指輪があった。
 本来なら『ソウルウェポン』は武器の形をしているが、勇者ともなれば変わっていてもおかしくは無いだろう。

「……おい、さっさと来いよ」

 俺の言葉を聞いて、まるで小動物が捕食者に見つかったようにビクつき、一部は震える。

「お前らがあいつにやった事を俺にやってみろよ。…………さあ!!」
「……う、うぁぁぁぉっ!!」

 俺の怒声に最初に動いたのはガリ勉だった。
 
 ガリ勉の右手にはリボルバーが握られている。

「死ねっ!"必死の弾丸"!!」

 ガリ勉の震える手から、もの凄いスピードで6発の弾丸が寸分違わず俺の両目、額、心臓、両方の肺へと向かって来る。
 それを片手で全て掴み取り、握り潰す。

 ガリ勉は「ひっ!!」と情けない声を出した後、急いで空薬莢を取り出そうとしているが、焦りすぎて全く出来ていない。

「なあ、今どんな気持ちだ?」

 俺はそんなガリ勉の首を掴んで上に持ち上げる。ちょっと力を入れて逃げられないようにする。
 ガリ勉は首を絞められると思って俺の手を首から離そうと一生懸命両手で俺の手を剥がそうとしている。

「答えろよっ!!なぁ!!」

 俺がついつい声を荒げてしまったら、今度は失禁し、口から泡を吹き出した。……極度の恐怖によって、派手に気絶したみたいだ。

 俺は手を離して、ガリ勉を地面に落とす。
 そして振り返る。女2人と男1人が居る方へ。

「ひっ!」「……な、何よ…、何なのよっ!!」

 女2人はありがちな反応をしたが、男は俺を気にもせず、チャラ男じゃなくなった肉塊の方へ歩き出したので、取り敢えず放って女の方を見る。

「……なあ、お前らは何でこんな事をしたんだ?」
「……そ、それは…」「………」

 答えようとしない2人。俺はそんな2人の内、活発そうな女の背後に"転移"して、肩に手を置く。

「ひぃぃ!」
「…………なぁ、教えてくれよ?」
 
 怯える女の顔を横から見ながら、聞く。
 女も失禁をしてしまったが、気絶はしていない。根はまだ強い方らしい。

 今度は手を置いた肩から、一回転させて俺の方を向かせた後に、地面に背中を押し付け、両手を女の両肩に置いて逃げられなくする。

「いやっ!やめて!!殺さないでぇぇ!何でもするからぁぁ!!体も『ソウルウェポン』もあなたのものになるから!!だから、命だけはぁぁぁあ!!」

 女は足をバタつかせ、年甲斐なく泣きじゃくり、本気で俺に懇願して来た。
 俺はそれを見ても、どうも怒りしか覚えられなかった。

 お前はきっとこんな風に泣きじゃくった奴を殺したんだろう。ここに来る途中に泣きじゃくった跡のある首を何個も見てきた。
 なのに、お前だけが助かろうなんて虫が良すぎる話だ。

「…分かった」
「……へ?」

 俺は女から退き、横から手を掴んで起き上がらせる。女は不細工になった泣き顔でただ俺だけを見ている。

「……本当に殺さないの?」
「…ああ、本当だ。俺はな」
「……え?」

 俺は女を突き離す。女の背後には、瞬時に"アイテムボックス"から出したある時に取っておいたアイアンメイデンという拷問器具が扉を開けて、今か今かと人を待っていた。

 そして、女がアイアンメイデンの中にすっぽりと入った瞬間、内側に長い針が付いた両扉が勢いよく閉まり、女の心の底から出た悲鳴が部屋中に響いた。
 閉まった扉の下からは、赤い赤い血が溢れ出るように漏れている。

「……最低ね…」

 そんな事をやった俺を、もう1人の女が冷ややかな目で、軽蔑するかのように見ていた。

「お前がやった事と何が違う?」
「……………」

「俺は確かに悪だ。だけど、悪にすらクソ野郎と言われるお前らはどうなんだ?」
「…………」

 女はずっとだんまりしている。戦意も無く、ただ待っているかのようだ。

 俺はこいつも殺そうと思っている。そして、もうあの村には戻らない。
 これでこの事件は終わーー

「斗真っ!!」

 女が誰かの名前を呼んだ途端、目の前に現れたのはあの小刀を持った男。
 おかしい。俺の目には急に現れたようにしか見えなかった。こいつに魔力消費量が馬鹿みたいに多い"転移"が使えるとは
思えなーー

「死んでよ」

 それだけ呟いた後、手に持ったリボルバーで俺を撃ってきた。

 それを難なく握り潰すが、もう目の前には男も、女も居なかった………。


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 今回、残忍なユウキが出てきましたが、ユウキは案外そういった事に躊躇が無いのは知ってますよね?

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