第0話の12 初めての解放

===ユウキ視点========================

「………マジかよ」

 俺の全力の一振りが、彼女の光線で相殺されてしまった。
 しかも、俺は2発目を撃てないのに、彼女はもう2発目の準備をしている。

 何か無いのか？
（……ある事にはあるんですが、失敗するリスクの方が高いです）
 知るか、そんなリスクよりも今を切り抜ける事の方が大事だろ。
（よっしゃ！よく言った！！俺がいく）
（そうですね、今回は火力バカの方が良さそうです）
（誰がバカだ！？）
 おいっ！そんな言い合いより、何をすればーー

 俺は攻武たちに何をするのか聞こうと思ったが、やめた。
 何故なら、もうやり方が浮かんで来たからだ。

（よしっ！集中しろ。思い浮かべ！強大な力を振るう自分の姿を！！）

 攻武に言われ、思い浮かべる。そして、口にした。

「…『魂の解放ソウルバースト』」

 すると、すぐさま俺を中心に爆風が巻き起こり、手に握る攻武が徐々に姿を変える。

 爆風が消えた時には攻武は刀身が俺の背丈ほどあり、幅も人ぐらい、柄も人の腕ぐらいの長さもある。

「……何？その剣……」

 彼女は俺の大剣を見て、目を奪われたのか、光を集めるのを一時中断したが、俺が足を踏み出した瞬間、すぐさま再開した。

（良いか、俺の能力は"様々なものを強化する"だ。この姿はそれを俺自身のみに注いだものだ。どんな攻撃も防御も、俺の前には紙切れ同然だ。だから、もしあれを生かしたいと思うなら配慮しろよ）
 ……ああ。

「あなたが人間の味方じゃなかったら良かったのにぃぃぃ！！」

 彼女はさっきよりも強い光線を撃って来たが、俺が攻武の切っ先を軽く当てると、光線は真っ二つに切れて俺の両サイドを通り抜けていく。

「えっ！？そんな簡単にーー」

 俺は攻武を地面に突き刺し、彼女のところまで瞬時に移動し、彼女の鳩尾みぞおちを殴る。

「うっ！？」

 彼女は呻く声を出した後、気を失ったようでその場に倒れこみそうになったので、俺は彼女を抱きとめる。
 彼女の顔はさっきまで殺気立っていて、怖いものだったが、意識が無い状態だと普通に美人でーー

（……ご主人様？）
 あ、はい。

 俺は守姫の低い声を聞いて、ふざけられないと思い、彼女をお姫様抱っこの形で抱き上げて村へと入った。





「ユウキ様っ！大丈夫ですか！？」
「お怪我は！？」
「このクソ女がっ！！俺らのユウキ様になんて事をしやがった！！」
「さっさと牢にぶち込むぞ！」

 俺の下へ駆け寄って来た村人たちは俺の身を案じた後、今度は彼女に対して強い憎悪を向けて来たので、彼女を少し村人たちから守るような向きにする。

「おいっ！ちょっと待て！！」

 俺が叫ぶと村人たちはすぐに黙った。

「彼女は俺が保護する！文句はあるか！？」

 俺がそう叫ぶと村人たちは、納得は言ってないが、仕方ないような感じで許してくれた。

 俺は村人たちに退けてもらうように言い、俺が住んでいる村の隅にある家に向かおうとしたが、二人の人影が俺の行く手を阻んだ。

 一人はミウ。もう一人に肩を貸して申し訳なさそうに立っている。

 そして、もう一人は最近体調が良くなって来たこの村の村長、ミウの親父さんだった。ミウに肩を借り、左手に木の棒を持ち、足は震えている。相当無理をしているようだ。

「おいっ、大丈夫なのか？さっさと寝た方がーー」
「その女は牢へ入れる」

 村長は弱っているとは思えないほどしっかりとした声で言った。

「は？俺が監視するから別に良いだろ？」
「……ダメだ。その女には反省してもらわなければならない」

 村長は俺の話を取り合わず、村人たちに強引に彼女を牢へ入れた。
 俺はそれをただ見ていた。






「なあ？なんでダメなんだ？」

 あれから2日後。俺は村長の家で、村長に直談判していた。

「彼女、もう目覚めているのに、暴れてないんだろ？彼女にはまだ、更生の余地がある！俺が更生させてやる！」
「……だが、村人たちは不安がるだろう。お前があれだけ苦戦した相手だ。次暴れたら、どれだけ被害が出るか分からない」

 村長の言う事は最もだった。俺はただのしがない用心棒。俺のわがままでここに住む村人たちを不安がらせる訳にはいかない。
 ならーー

「なら、俺が村人たちを説得してやる」

 俺はそれだけ言い放ち、家を出た………。





（どうするんですか？）
 決まってるだろ、村人たちを説得する。
（どうやって？）
 それはこれからやる。

 俺は村を見渡せる丘に立つと、その場で攻武を顕現すると、両手で持って上に掲げ、攻武に魔力を注ぎ始める。
 魔力が次第に攻武から漏れ、徐々に魔力が攻武より大きい剣の形を形作っていく。

「……どうされました？」
「なんだ？なんだ？」
「ユウキ様だ」
「一体何をするんだろう？」

 俺がいきなりこんな事をするので、村人たちが徐々に集まってくる。しまいには、村長と奥さん、ミウまで来て、彼女を除く村中の人を集めれた。

「集まってくれてありがとう。今から、俺が本気で剣を振るう。これを見て、まだ彼女を不安がる奴が居たら手を上げろよ？」

 それだけ言うと、村人たちが居ない俺の背後へ向き、奥に見える山へ狙いをつける。

（え？届きます？）
 ふっ、俺が力業だけでやると思うなよ？

 俺は右足を後ろにし、手首のスナップを活かしつつ、思いっきり振り下ろした。

「"一刀斬破"！！」

 俺の斬撃である魔力の塊は山に真っ直ぐぶつかり、激しい爆発を起こした。
 遠くからでも分かるほど、砂煙を大量に上げる。

 そして、砂煙が晴れるとそこには山は無かった。
 俺は激しい頭の痛みと疲労感を押し退けて攻武を右手で掲げて言う。

「見たか？俺は山を消す事も出来る。これでも不安ならーー」

 俺は最後まで言い終える事が出来ず、その場に倒れ込んだ………。


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