ただの世界最強の村人と双子の弟子

ヒロ

第26.5話 戯神

===魔神視点==================

「おらっ!(ドスッ!)おらっ!(ドゴっ!)おらぁぁっ!!(ボコッ!!)」

「ぐっ、がぁっ!ぐがぁっ!!」
  男の容赦ない拳が妾の顔に、腹にめり込んで血を撒き散らす。
  どれぐらい経ったか分からないが、男達は定期的に妾の牢屋にきて、殴る、蹴るといった暴力をしていた。なぜか、妾を犯すといった性的な事をしてこなかったが。
 
  妾は暴力を受けた後、回復魔法を受け、男達に無理矢理携帯食料を口に詰められ、水を流し込まれた。どうやら妾を生かして長い苦痛を与えるつもりのようじゃ……。男達はそれが済むと、黙って帰っていく。

「一体………いつまで……………」
  
「さあ?いつまでだろうね?」

「………………っ!!」
  突如聞こえた、今までの男達とは違う声に項垂れていた頭を上げるとそこには、暗くてよく分からんが、身長は150cmほどの少年が立っていた……。
  こやつの魔力………!あの時の女神にどこか似ておるし、強大な魔力じゃ…!何故、声をかけられるまで気づけなかったんじゃ……!

「やあ、初めまして。僕は『戯神』。君を回収しにきたよ」

「何故、妾を回収しにきた?」

「決まってるじゃないか。君の『魔素支配』の力を奪うためさ」

「…………………っ!!」
  何故、こやつは『魔素支配』の事を知っておる……!あれは歴代魔神のみ、受け継がれてきたものじゃぞっ!?歴代魔神じゃなければ、存在すら知る事が出来ないものなのに……。

「あ、何故知っているか、とかどうやって奪うのか、とかは一切受け付けませんので……」

「それじゃあ、早速運びだそうか。おい、お前達、魔神の枷を外せ」
  『戯神』がそう言うと、さっき帰ったはずの男達が入ってきて、妾の枷を外しにかかった。よく見ると、男達の目には光が無く、まるで……

「人形……とでも思っていますか?そうです、彼らは僕の忠実なる人形。僕の言う事には必ず聞いてくれる。僕の"遊び"には欠かせない存在ですよ」

  話している間に枷が全部外れた…!男達は『戯神』が命令していないと動かないようじゃから……

「さーて、そろそろ外れた頃合いだな。おい、お前達、この………枷…を……付けって、いなくなってるじゃん。めんどくさいな~。でも、それも"遊び"の醍醐味か」

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「ふぅ、何とか逃げられたようじゃの」
  『戯神』が注意力散漫で助かったわ。お陰で《ブリュンビレ》の近くの森に転移出来たわ。さて、ここからどこに逃げるかの…。やはり…《ラーグ村》かの。

「よし、そうと決まれば早速………!」

「あれ?まだそこにいたの?」

「…………………っ!」
  森の奥から、先程まで"転移"の反応が無かったのに…!急に現れた……!
  "転移"は便利じゃが、その転移先には転移する少し前に、その転移する人の魔力が現れる。それは、どの人も例外なく、記憶の中では、あのユウキすらもその反応が出ていた。でも、この『戯神』は……!

「驚きましたか?ふっふっふっ!これこそが僕の力、"空間支配"!!僕が再構成した空間では、全てが僕の支配下!木も、家も、土地も、人間すらも!!だから、私がここに来れたのは、"転移"ではなく、"ワープ"。この空間の管理者である僕だけの特権さ」
  
  なるほど…。確かにその能力があれば、全ての辻褄が合うが、何故、こやつは妾を支配しない?妾をさっさと支配して、連れて行った方が早いではないか。となると、奴の支配には、条件がある。それを突けば……

「ハハッ、さあかかってきなよ。もしくは逃げるのもいいね。あっ、でも、降参とか、諦めるのはなしだよ。だって、面白く無いからね。さあ、"遊び"を始めよう!」
  『戯神』は話しながら、妾を取り囲むように、街の人達を呼び出した。数は……30人ってところかの。

「さあ、行け!お前達!魔神を捕まえろ!!」
  『戯神』が命令すると、ただ黙って街の人達が妾に一斉に襲いかかってくる。生物としてのリミッターを外されたのか、何か改造されたのかは知らんが、女の人ですら、凄まじいスピードで駆け寄ってくる。それに対し妾は、

「"サンダーレイン"」
  超上級魔法で街の人達を1人残らず雷で跡形もなく、消しとばす。

「へえ、やるねぇ♪じゃあ、この人達はどうかな?」
  『戯神』は余裕の笑みを浮かべながら、妾の周囲に今度は冒険者10人を呼び出した。こやつらはちょっとマズイかの…。

「行けっ!お前達!!」

「……!"サンダーレ…ぐはぁっ!!」
  妾の魔法が発動する前に、冒険者の1人の拳が妾の腹に当たり、そのまま、森の奥に吹き飛ばされた……。

「ぐっ!がはぁっ!!」
  腹の一部の器官が潰れたのか、口からおびただしい量の血が出る。
  くそっ!長い拷問の所為で、体に力が出にくいし、魔力もかなり少ない。片っ端から魔素を吸収しておるが、それが間に合うか……。

「おっ、ちゃんと生きてるじゃん。それじゃあ、まだまだ続けようか♪」
  『戯神』は冒険者達を引き連れながら、楽しそうにこちらを見ている。

「くっ!"グラビティゾ……ぐがっ!!」
  妾はまた魔法発動前に冒険者の1人に今度は蹴飛ばされ、蹴飛ばされた先の木を2本くらい折って止まった。
  やはり、妾の魔法が発動するスピードより、こやつらの足の方が速い!

「はぁ、はぁ、がぁっ!!」
  妾が震える手足で何とか立った瞬間、今度はいつの間にか回り込まれ、背中を蹴飛ばされ、思いっきり、顔面から地面に落ちる。
  くっ!こやつらの力は異常じゃ!せめて、全力が出せればこんな奴ら……!

「はぁ、ちょっと強くし過ぎたかな?これじゃあ、面白くも何ともない。……っ!誰だっ!!」

「誰だろうな」

「なっ!!があぁっ!!」

  急に警戒し出した『戯神』の声が聞こえると同時に男の声が聞こえ、『戯神』が殴りか、蹴飛ばされた声が聞こえた。
  突如、聞こえた声はどこか聞いた事のあるような気がして、重い体を上げるとそこには、右手に日本刀を携えて妾に背中を向けて立っている黒髮の……

「………っ!!まさか、お主が……!ユウキ!?」

「へえ、俺の名前を知っているのか。魔神さんよ」
  振り向いた男は記憶どおりの少年じゃった……。

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  ふぅ、やっと魔神とユウキを対面させる事が出来ました!

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