覇王の息子 異世界を馳せる

チョーカー

消えた死体

 関羽は手こずっていた。
 襲撃者たちは、確かな殺気を放出して襲ってくる。
 しかし、その殺気に対して、奇妙に慎重で手堅い戦術。
 1人目の攻撃を受けて払うと、すぐさま後退。
 それを追おうすると、2人目は入れ替わるように襲い掛かってくる。
 まるで足止めが目的の戦い方。殺気は意図して醸し出された偽物か?
 だとすれば―――まんまと罠にはまってしまったか。
 面白い。この関羽、遊ばれたというのか!?
 内から湧き出る感情を怒に染める。
 ならば―――やる。
 自身に向かって振り落される短剣。意識を集中する。
 ―――速度―――角度―――
 一瞬の判断。
 狙いは武器破壊。 青龍偃月刀を敵の短刀にぶつける。
 鉄と鉄。金属と金属が接触する高音。
 斬鉄。
 襲撃者が振るった短剣―――ククリナイフは、真っ二つに切り裂かれ、刀身が宙に舞う。
 武器を失い、空中で無防備な体を晒す敵に、関羽は青龍偃月刀を突く。
 その一撃は、さして力が込められているようには見えなかったが、
 まるで吸い込まれるように襲撃者の胸に当たり、そのまま体内を突き進んで行った。

 青龍偃月刀で串刺しになった敵の体を、地面に振るい落とし、残る1人を見る。 
 関羽は訝しがる。その様子に動揺は見られなかったからだ。
 目の前で仲間を殺されても、鍛錬によって平常心を保てる。
 そういう者はいる。
 だが、連携を持って、共に戦っていた者が倒された。
 即座に戦術を組み立てなければならない。
 通常なら、そこに心のブレとして現れるはずなのだが・・・・・・。

 そこに異音が届く。何か光が夜空に登り、爆破。
 色とりどりの炎が、暗闇の空を照らす。
 「なんだ?あれは?」
 その異常な光と大気を震わせる大音からか、寝静まっていたはずの村人たちが集まってくる。
 その気配に紛れて、襲撃者は逃走した。
 「逃がしたか」と関羽は言う。
 すると「何があったのですか?」と村人が訪ねてくる。 
 「ああ、それは・・・・・・」
 関羽は事態を説明しようと打ち倒した敵を見ると
 「いない」
 さっきまで、地面に転がっていたはずの死体がない。
 生きていた?いや、そんなはずはない。
 1人は胴体をほとんど切断するように切り裂いている。もう1人は胸を青龍偃月刀で貫いている。
 ならば、どうやって?あの一瞬で遺体を消し去ったというのか?

 

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