覇王の息子 異世界を馳せる
VSドラゴン⑧
ドラゴンの触手。
その動きは緩やかで、舞のように優美さすら感じさせる。
それは動から表される美の動き。
(これは人を殺めるための動きか?そもそも、これは本当に攻撃なのか?)
関羽は、そんな感想を思い浮かべながらも、警戒の色だけは強めた。
やがて、自身の頭部へ振り落された触手を青龍偃月刀で受けた。
接触の瞬間に鳴り響いたのは金属音。
その衝撃に、思わず「むっ」と声を出す。
(―——なるほど)
あまりにも、頼りなさげで、儚さすら感じられる触手。
しかし、それはドラゴンの巨体と比較するから、そう思うのだ。
実際に受けた感覚から伝わった情報量。
その強度は、金属製の武器と比べても劣るものではなく―——
その質量は、並みの鈍器を比較しても軽視するものではない。
結論は十分に人間を―——否。生物を殺すために進化した武器だと言う事がわかった。
一合、二合と打ち合っていく。
三合、四合と交える。すると、変化が起きた。
それは速度だ。徐々に振り回されているドラゴンの触手の速度が上がってきている。
風を切り裂く音が、やたらと大きく聞こえる。
そして、ドラゴンの攻撃は触手だけではない。
前腕から繰り出される爪。巨大な咢からの噛みつき。距離が出ると、今度は、その咢から炎が放射される。
それを関羽は受ける。あるいは避ける。そして弾く、弾く弾く弾く。
不意に風切音が聞こえなくなった。
また触手も消えていた。
触手による攻撃を止めた―——わけではない。
逆だ。触手が人間の知覚を超えた動きを開始したのだ。
人間が聞こえる音の事を可聴域と呼ぶらしい。
関羽は、正確な知識を身につけているわけではないが、どうやら人間が聞き取れる以上の高音、または低音を出しながら、触手を振り回しているだろうと判断する。
では、触手そのものの姿が見えなくなったのは、なぜか。
これは単純に関羽の動体視力を超えた動きをしているからだ。
静寂さすら帯びてきた戦いに、破壊音が現れる。
関羽の足元に穴が開く。
不可視を化した攻撃が、関羽への直撃を避けて足元に炸裂したのだ。
それをきっかけに関羽は走り出す。
その動きに法則性はなく、ただ単純に見えない攻撃を避けるために動く。
破壊音、炸裂音が、逃げる関羽を追ってくる。
関羽は見えない攻撃に逃げ回るしか選択肢はなかった。
なかったはずだ。しかし―——
ドラゴンの攻撃音が周囲に広がるようになって暫く―——
金属音が鳴った。
それは接触音、それは最初の音。
最初に関羽の青龍偃月刀とドラゴンの触手が接触した時を同質の音。
関羽の青龍偃月刀がドラゴンの触手と衝突したのだ。
ただの偶然ではない。
なぜなら、その接触音は一度では終わらなかったからだ。
何度も、何度も甲高い金属音が鳴り響いていく。
人間の動体視力を超えた動き。それは関羽ですら例外は許されない、見る事の叶わぬ不可視の攻撃。
あるいは、神の領域に踏み込んだ関羽なら、見る事ができただろう。受けて、弾く事もできただろう。
ならば、関羽が再び、神の領域に踏み込んだのか?
―――答えは否だ。
ならば―——
『なぜ、受けれる?』
人間を遥かに凌駕する英知。その持ち主であるはずのドラゴンも同じ事を思ったのか?
戦いの最中でありながら、ドラゴンから疑問の声が、関羽に向けられた。
しかし、関羽の答えは一言。「わかる」とだけ返す。
『うむ、なるほど。そうか……』
これには関羽が驚いた。
『わかる』と返した関羽であったが、その意味は単純に『ドラゴンの攻撃がわかる』というだけの事。
自分でも、『なぜ分かるのか?』と理由は分かっていなかった。
だから、一言だけ「わかる」と言ったのだ。
しかし、それだけでドラゴンは、関羽が攻撃を受けれる理由を納得したのだ。
『闘争とは読み合い。つまりは相互理解。戦いを媒体に我とコミュニケーションを取る人間が現れるとは……貴様になら、この首をくれてやらん事もないぞ』
ドラゴンの言葉。
つまり、関羽が攻撃を受ける事ができるのは、関羽がドラゴンの思考を読み説いているからだと言っている。
おそらく―——
それは、関羽が、普段の戦いから無意識に行っているものだ。
相対した相手の体や表情から、相手の力量を読み取る。
どういった技が得意で、そこの流派の武術の人間か、読み取る。
さらには、戦いの流れから、相手が放つ技の種類が事前にわかっていく。
命を賭した戦いで身につけた技だが、それが人間以外の相手―——
それもドラゴンに通じているのだ。
それを理解した瞬間、関羽の体に震えが走った。
関羽の目に、武の頂が浮かんで見えたのだ。
その動きは緩やかで、舞のように優美さすら感じさせる。
それは動から表される美の動き。
(これは人を殺めるための動きか?そもそも、これは本当に攻撃なのか?)
関羽は、そんな感想を思い浮かべながらも、警戒の色だけは強めた。
やがて、自身の頭部へ振り落された触手を青龍偃月刀で受けた。
接触の瞬間に鳴り響いたのは金属音。
その衝撃に、思わず「むっ」と声を出す。
(―——なるほど)
あまりにも、頼りなさげで、儚さすら感じられる触手。
しかし、それはドラゴンの巨体と比較するから、そう思うのだ。
実際に受けた感覚から伝わった情報量。
その強度は、金属製の武器と比べても劣るものではなく―——
その質量は、並みの鈍器を比較しても軽視するものではない。
結論は十分に人間を―——否。生物を殺すために進化した武器だと言う事がわかった。
一合、二合と打ち合っていく。
三合、四合と交える。すると、変化が起きた。
それは速度だ。徐々に振り回されているドラゴンの触手の速度が上がってきている。
風を切り裂く音が、やたらと大きく聞こえる。
そして、ドラゴンの攻撃は触手だけではない。
前腕から繰り出される爪。巨大な咢からの噛みつき。距離が出ると、今度は、その咢から炎が放射される。
それを関羽は受ける。あるいは避ける。そして弾く、弾く弾く弾く。
不意に風切音が聞こえなくなった。
また触手も消えていた。
触手による攻撃を止めた―——わけではない。
逆だ。触手が人間の知覚を超えた動きを開始したのだ。
人間が聞こえる音の事を可聴域と呼ぶらしい。
関羽は、正確な知識を身につけているわけではないが、どうやら人間が聞き取れる以上の高音、または低音を出しながら、触手を振り回しているだろうと判断する。
では、触手そのものの姿が見えなくなったのは、なぜか。
これは単純に関羽の動体視力を超えた動きをしているからだ。
静寂さすら帯びてきた戦いに、破壊音が現れる。
関羽の足元に穴が開く。
不可視を化した攻撃が、関羽への直撃を避けて足元に炸裂したのだ。
それをきっかけに関羽は走り出す。
その動きに法則性はなく、ただ単純に見えない攻撃を避けるために動く。
破壊音、炸裂音が、逃げる関羽を追ってくる。
関羽は見えない攻撃に逃げ回るしか選択肢はなかった。
なかったはずだ。しかし―——
ドラゴンの攻撃音が周囲に広がるようになって暫く―——
金属音が鳴った。
それは接触音、それは最初の音。
最初に関羽の青龍偃月刀とドラゴンの触手が接触した時を同質の音。
関羽の青龍偃月刀がドラゴンの触手と衝突したのだ。
ただの偶然ではない。
なぜなら、その接触音は一度では終わらなかったからだ。
何度も、何度も甲高い金属音が鳴り響いていく。
人間の動体視力を超えた動き。それは関羽ですら例外は許されない、見る事の叶わぬ不可視の攻撃。
あるいは、神の領域に踏み込んだ関羽なら、見る事ができただろう。受けて、弾く事もできただろう。
ならば、関羽が再び、神の領域に踏み込んだのか?
―――答えは否だ。
ならば―——
『なぜ、受けれる?』
人間を遥かに凌駕する英知。その持ち主であるはずのドラゴンも同じ事を思ったのか?
戦いの最中でありながら、ドラゴンから疑問の声が、関羽に向けられた。
しかし、関羽の答えは一言。「わかる」とだけ返す。
『うむ、なるほど。そうか……』
これには関羽が驚いた。
『わかる』と返した関羽であったが、その意味は単純に『ドラゴンの攻撃がわかる』というだけの事。
自分でも、『なぜ分かるのか?』と理由は分かっていなかった。
だから、一言だけ「わかる」と言ったのだ。
しかし、それだけでドラゴンは、関羽が攻撃を受けれる理由を納得したのだ。
『闘争とは読み合い。つまりは相互理解。戦いを媒体に我とコミュニケーションを取る人間が現れるとは……貴様になら、この首をくれてやらん事もないぞ』
ドラゴンの言葉。
つまり、関羽が攻撃を受ける事ができるのは、関羽がドラゴンの思考を読み説いているからだと言っている。
おそらく―——
それは、関羽が、普段の戦いから無意識に行っているものだ。
相対した相手の体や表情から、相手の力量を読み取る。
どういった技が得意で、そこの流派の武術の人間か、読み取る。
さらには、戦いの流れから、相手が放つ技の種類が事前にわかっていく。
命を賭した戦いで身につけた技だが、それが人間以外の相手―——
それもドラゴンに通じているのだ。
それを理解した瞬間、関羽の体に震えが走った。
関羽の目に、武の頂が浮かんで見えたのだ。
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