覇王の息子 異世界を馳せる
だからダンジョンはある
そんな、こんなで曹丕と関羽はダンジョンの入り口に立つ。
ダンジョンへ続くメインストリートは整備されている。
道の左右には、露店が並んでおり、曹丕と関羽に活気のある声をかけている。
そして、目前のダンジョン。
どうやら、ダンジョンから戻る者には二種類の人間がいるようだ。
片方の人間は―――極度の興奮状態のせいだろうか?
荒らしい獣じみた雰囲気を身に纏い、それでいて爛々とした瞳を輝かせ、強烈な笑みを顔に貼り付けながら進む者。
彼らは勝者。ダンジョンという過酷な環境に対応し、成果をあげる。
自らを死という現象に進ませ、ギリギリで生存するという快楽に身を任せる事に成功したのだろう。
もう一方の者達は悲惨。彼らは奪われた者だ。
武器を、肉体の一部を、あるいは仲間の命を
彼等は戦う意思を奪われている。戦う意思を根本から叩き割られた敗北者。
鮮血を浴びている顔から、涙が流れて赤い血を流れ落としている。
その結果、こびり付いて黒く変色した血が見える。まるで、黒い涙を流しているようだ。
ダンジョンは、まるでギャンブルだ。
掛け金は人生。
負ければ、悲惨。しかし、勝者も、また悲惨。
今日、勝利した彼らもギャンブルの快楽から逃げられない。
いつか、自分も敗者へ転落するゴールが見えていても、例え、隣に座っている敗者が、明日の自分だと分かっていても……
決して逃げられない。……そう、決してだ。
――――ダンジョンとは何か?
それは太古の昔から存在している……らしい。
この場所だけではなく、世界各地に幾つも存在してる。
下へ下へ。地下へ地下へと深く続いていく建造物。
その中には魔物の巣窟。
人間に対して、悪意と敵意と殺意と、食欲を抱いて襲ってくる生物が、生息している場所だ。
それは人間に取って、限りなく危険な空間。
しかし、ダンジョンに人間が挑まなければ、世界の生態系は、大きく崩れるという。
魔物の生命力と繁殖能力。奴らの侵食に終わりが見えない。
ほっておけば、奴らはダンジョンから溢れ出し、世界への侵食を開始する。
だから人間はダンジョンに挑まなければならない。
なぜ、そんな危険な場所が存在しているのか?
それは神のみぞ知る……というやつである。
だから、聞いた人間がいる。
実際に神の元へ訪問し、恐れ多くも神に質問した人間がいたのだ。
その時の神の言葉は―――
『私が過去に制作した世界は、純粋な人間のみを集めて作った世界だった。
しかし、失敗した。純粋な人間は成長し、禁を犯した。
だから、今度は人間の成長を促す世界にした。
―――だから、ダンジョンがあるのだ
成長せよ人間。私は、そのための困難と苦行を用意した。
それでも足りぬと言うのならば、外からの変革を呼び込もう』
そんなダンジョンではあるが、曹丕と関羽の2人は、1時間で15層までたどり着いていた。
過去、このダンジョンに多くの者が挑んだが、その攻略速度は上位に入るだろう。
ただ、その速度は曹丕と関羽の実力によるものかと問われれば、そうではない。
彼らの手には、古びた地図と本。
村長から渡されたものであり、片方はダンジョンの地図。
片方の本は、ダンジョン内に現れる魔物の種類と特徴を階層別に書かれている。
言うならば、攻略本である。
魔物の襲撃を返り討ちにし、一息つく。
「……しかし、奇妙ですな」と関羽が呟いた。
「奇妙?何かおかしな事でもありましたか?」と曹丕が聞き返す。
すると、関羽は手にした本を確認するように目を通す。
ダンジョン内は薄暗い。だが、松明などの人工的な光源が容易されていて、辛うじて文書は読める。
「このダンジョンは最深層が30層と書かれています」
曹丕は関羽の手にする本をのぞき込んだ。
「丁度、この階が折り返し地点となる。確かに、この書物にも書かれていますね」
「しかし、報告にあった奇妙な魔物とは、今だに交戦していません」
「……確かに」
曹丕達が、ダンジョンで戦った魔物は、普通の魔物だった。
武器を突き刺せば、その生命を奪う事の出来る。そういう生物の延長線上の魔物だった。
しかし、この依頼内容は、『奇妙なモンスターの調査』である。
そいつ等は、通常の魔物と比べて異常な生命力。まるで知能が失われているみたいだ。
動物的な行動ではなく、食虫植物のように、反応に近い動きをみせる。
厄介なのは、感染能力。その魔物に怪我を負わされると、どのような生物であれ、それらの特徴を受け継いでしまう。
以上の事から、なんらかの病原菌が原因と考えている。
これらは、ダンジョンからの生存者の情報からまとめたものである。
どこまで情報の精度が高いのか?それらの調査こそ『奇妙なモンスターの調査』という依頼なのだ。
それらの説明を村長から受け、緊張感を張り詰めさせ、挑んだわけだったのが……
だが、ダンジョンの半分まで進んでも、そのようなモンスターはいなかった。
だが―――
「だが、死臭が激しい」
関羽が言う。
そいつ等は、明らかにいる。
ダンジョンの下の階から、異常な気配を、存在を感じている。
しかし、それは事前に知らされている情報とは異なっている。
知性がなく、植物的反応で襲ってくるのではなかったのか?
しかし、下の階で留まっている彼らの統一感は、どこから来ているのか?
それは、何らかの意志の存在を―――
ダンジョンへ続くメインストリートは整備されている。
道の左右には、露店が並んでおり、曹丕と関羽に活気のある声をかけている。
そして、目前のダンジョン。
どうやら、ダンジョンから戻る者には二種類の人間がいるようだ。
片方の人間は―――極度の興奮状態のせいだろうか?
荒らしい獣じみた雰囲気を身に纏い、それでいて爛々とした瞳を輝かせ、強烈な笑みを顔に貼り付けながら進む者。
彼らは勝者。ダンジョンという過酷な環境に対応し、成果をあげる。
自らを死という現象に進ませ、ギリギリで生存するという快楽に身を任せる事に成功したのだろう。
もう一方の者達は悲惨。彼らは奪われた者だ。
武器を、肉体の一部を、あるいは仲間の命を
彼等は戦う意思を奪われている。戦う意思を根本から叩き割られた敗北者。
鮮血を浴びている顔から、涙が流れて赤い血を流れ落としている。
その結果、こびり付いて黒く変色した血が見える。まるで、黒い涙を流しているようだ。
ダンジョンは、まるでギャンブルだ。
掛け金は人生。
負ければ、悲惨。しかし、勝者も、また悲惨。
今日、勝利した彼らもギャンブルの快楽から逃げられない。
いつか、自分も敗者へ転落するゴールが見えていても、例え、隣に座っている敗者が、明日の自分だと分かっていても……
決して逃げられない。……そう、決してだ。
――――ダンジョンとは何か?
それは太古の昔から存在している……らしい。
この場所だけではなく、世界各地に幾つも存在してる。
下へ下へ。地下へ地下へと深く続いていく建造物。
その中には魔物の巣窟。
人間に対して、悪意と敵意と殺意と、食欲を抱いて襲ってくる生物が、生息している場所だ。
それは人間に取って、限りなく危険な空間。
しかし、ダンジョンに人間が挑まなければ、世界の生態系は、大きく崩れるという。
魔物の生命力と繁殖能力。奴らの侵食に終わりが見えない。
ほっておけば、奴らはダンジョンから溢れ出し、世界への侵食を開始する。
だから人間はダンジョンに挑まなければならない。
なぜ、そんな危険な場所が存在しているのか?
それは神のみぞ知る……というやつである。
だから、聞いた人間がいる。
実際に神の元へ訪問し、恐れ多くも神に質問した人間がいたのだ。
その時の神の言葉は―――
『私が過去に制作した世界は、純粋な人間のみを集めて作った世界だった。
しかし、失敗した。純粋な人間は成長し、禁を犯した。
だから、今度は人間の成長を促す世界にした。
―――だから、ダンジョンがあるのだ
成長せよ人間。私は、そのための困難と苦行を用意した。
それでも足りぬと言うのならば、外からの変革を呼び込もう』
そんなダンジョンではあるが、曹丕と関羽の2人は、1時間で15層までたどり着いていた。
過去、このダンジョンに多くの者が挑んだが、その攻略速度は上位に入るだろう。
ただ、その速度は曹丕と関羽の実力によるものかと問われれば、そうではない。
彼らの手には、古びた地図と本。
村長から渡されたものであり、片方はダンジョンの地図。
片方の本は、ダンジョン内に現れる魔物の種類と特徴を階層別に書かれている。
言うならば、攻略本である。
魔物の襲撃を返り討ちにし、一息つく。
「……しかし、奇妙ですな」と関羽が呟いた。
「奇妙?何かおかしな事でもありましたか?」と曹丕が聞き返す。
すると、関羽は手にした本を確認するように目を通す。
ダンジョン内は薄暗い。だが、松明などの人工的な光源が容易されていて、辛うじて文書は読める。
「このダンジョンは最深層が30層と書かれています」
曹丕は関羽の手にする本をのぞき込んだ。
「丁度、この階が折り返し地点となる。確かに、この書物にも書かれていますね」
「しかし、報告にあった奇妙な魔物とは、今だに交戦していません」
「……確かに」
曹丕達が、ダンジョンで戦った魔物は、普通の魔物だった。
武器を突き刺せば、その生命を奪う事の出来る。そういう生物の延長線上の魔物だった。
しかし、この依頼内容は、『奇妙なモンスターの調査』である。
そいつ等は、通常の魔物と比べて異常な生命力。まるで知能が失われているみたいだ。
動物的な行動ではなく、食虫植物のように、反応に近い動きをみせる。
厄介なのは、感染能力。その魔物に怪我を負わされると、どのような生物であれ、それらの特徴を受け継いでしまう。
以上の事から、なんらかの病原菌が原因と考えている。
これらは、ダンジョンからの生存者の情報からまとめたものである。
どこまで情報の精度が高いのか?それらの調査こそ『奇妙なモンスターの調査』という依頼なのだ。
それらの説明を村長から受け、緊張感を張り詰めさせ、挑んだわけだったのが……
だが、ダンジョンの半分まで進んでも、そのようなモンスターはいなかった。
だが―――
「だが、死臭が激しい」
関羽が言う。
そいつ等は、明らかにいる。
ダンジョンの下の階から、異常な気配を、存在を感じている。
しかし、それは事前に知らされている情報とは異なっている。
知性がなく、植物的反応で襲ってくるのではなかったのか?
しかし、下の階で留まっている彼らの統一感は、どこから来ているのか?
それは、何らかの意志の存在を―――
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