高校サッカー 〜一人の少年の物語〜
八話『笑顔』
どうにか怒りを収めた立木は、祐一から教科書を見せてもらいながら授業に励んでいた。
「気に触ったのは悪かったけど、いきなりビンタすることはねーだろ」
「確かにやりすぎたとは思うけど、そっちこそ言葉には気をつけなさいよ」
他人についつい毒づく癖がある立木ではあるが、ついつい手が出てしまったのはこれが始めてだ。思い返せば、祐一と接している時は無性に感情を突き動かされている気がする。
始めて祐一と接した時も、なぜかからかいたくなってしまった。高橋の変態発言を利用して意地悪をしたのはいい思い出だ。そのバチが当たったのか、今日はかなりイライラさせられたが。あまり細かいことはきにしないことにした。
「あなたにはどうやら人をイラつかせる才能があるようね」
「それはお前がタンチャーだからだろ」
祐一が謎の言葉を発する。
「何よ、そのタンチャーって」
「ああ、悪りぃ、沖縄の方言で短気な人って意味だよ」
立木は再沸騰しかけた胸元をどうにか沈めながら言い返す。
「あら、ごめんなさいね、あなた限定でタンチャーになってしまうみたい」
そりゃ迷惑な話だな、と祐一は言う。迷惑しているのはこっちだと言いたくなる。しかし、祐一はまたしても、「あ、もしかして」と言った後に余計な事を言ってしまう。
「お前今日、生理なの?」
乾いた音が再び教室中に木霊した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日も全ての授業が終了し、皆が一斉に教室を出て行く。祐一もユニフォームなどが詰まったカバン(もちろん勉強道具の類は一切入っていない)を背負って教室を出ようとする。すると、後ろから静かな、しかし耳の奥に木霊するような優しい声が祐一を呼び止めた。
「あら、クソ野郎、今から部活かしら?」
「おう……そうだよ……さっきはごめんって……」
声は優しくとも言葉は辛辣だった。祐一は力なく返事する。
「はぁ……もういいわよその事は……あなたが脳みそにクソが詰まってる哀れな人ってのはよく分かったから。そんな人にデリカシーを求めるのも可哀想な話よね」
「そこまで言わなくても……」
心にボディーブローをくらった気分だが、ここでへこたれている訳には行かない。今は早く部活に行かなければならない。
「じゃあな、また明日」
「待って」
まだ罵声を浴びせられるのだろうか。聞こえなかったふりをしてそのまま歩き出そうとした祐一に、予想外の言葉が突き刺さる。
「あなた、最近部活に行く時楽しくなさそう」
――どう言う事だろうか。確かに試合に負けた時などは少なからずネガティブな感情になったりもするが、イコールサッカーが嫌いと言うわけではない。しかも明日は県予選の初戦だ。楽しくないわけがない。
「――どうしてそう思うんだよ」
思わず立ち止まった祐一は、振り返って立木に問う。
「笑顔」
「なんだって?」
「今のあなたには笑顔が無いわ」
そりゃああれだけ怒られたら笑顔も消えるだろ、と言いたくなるが、流石に祐一も学習した。意味深だが細かい事は気にしないことにした。
「分かった、笑顔だな、心掛けてみるよ」
そう言って祐一は足早に去って行った。あっと手を伸ばすが、祐一を呼び止めるには至らなかった。
「部活に行く時は、どんな時でもニコニコしてたのにね」
多少気になるが、自分には関係ない事だと、立木はそう思うことにして、誰もいなくなった教室を後にした。
「気に触ったのは悪かったけど、いきなりビンタすることはねーだろ」
「確かにやりすぎたとは思うけど、そっちこそ言葉には気をつけなさいよ」
他人についつい毒づく癖がある立木ではあるが、ついつい手が出てしまったのはこれが始めてだ。思い返せば、祐一と接している時は無性に感情を突き動かされている気がする。
始めて祐一と接した時も、なぜかからかいたくなってしまった。高橋の変態発言を利用して意地悪をしたのはいい思い出だ。そのバチが当たったのか、今日はかなりイライラさせられたが。あまり細かいことはきにしないことにした。
「あなたにはどうやら人をイラつかせる才能があるようね」
「それはお前がタンチャーだからだろ」
祐一が謎の言葉を発する。
「何よ、そのタンチャーって」
「ああ、悪りぃ、沖縄の方言で短気な人って意味だよ」
立木は再沸騰しかけた胸元をどうにか沈めながら言い返す。
「あら、ごめんなさいね、あなた限定でタンチャーになってしまうみたい」
そりゃ迷惑な話だな、と祐一は言う。迷惑しているのはこっちだと言いたくなる。しかし、祐一はまたしても、「あ、もしかして」と言った後に余計な事を言ってしまう。
「お前今日、生理なの?」
乾いた音が再び教室中に木霊した。
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今日も全ての授業が終了し、皆が一斉に教室を出て行く。祐一もユニフォームなどが詰まったカバン(もちろん勉強道具の類は一切入っていない)を背負って教室を出ようとする。すると、後ろから静かな、しかし耳の奥に木霊するような優しい声が祐一を呼び止めた。
「あら、クソ野郎、今から部活かしら?」
「おう……そうだよ……さっきはごめんって……」
声は優しくとも言葉は辛辣だった。祐一は力なく返事する。
「はぁ……もういいわよその事は……あなたが脳みそにクソが詰まってる哀れな人ってのはよく分かったから。そんな人にデリカシーを求めるのも可哀想な話よね」
「そこまで言わなくても……」
心にボディーブローをくらった気分だが、ここでへこたれている訳には行かない。今は早く部活に行かなければならない。
「じゃあな、また明日」
「待って」
まだ罵声を浴びせられるのだろうか。聞こえなかったふりをしてそのまま歩き出そうとした祐一に、予想外の言葉が突き刺さる。
「あなた、最近部活に行く時楽しくなさそう」
――どう言う事だろうか。確かに試合に負けた時などは少なからずネガティブな感情になったりもするが、イコールサッカーが嫌いと言うわけではない。しかも明日は県予選の初戦だ。楽しくないわけがない。
「――どうしてそう思うんだよ」
思わず立ち止まった祐一は、振り返って立木に問う。
「笑顔」
「なんだって?」
「今のあなたには笑顔が無いわ」
そりゃああれだけ怒られたら笑顔も消えるだろ、と言いたくなるが、流石に祐一も学習した。意味深だが細かい事は気にしないことにした。
「分かった、笑顔だな、心掛けてみるよ」
そう言って祐一は足早に去って行った。あっと手を伸ばすが、祐一を呼び止めるには至らなかった。
「部活に行く時は、どんな時でもニコニコしてたのにね」
多少気になるが、自分には関係ない事だと、立木はそう思うことにして、誰もいなくなった教室を後にした。
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コメント
☆
雪雨さんありがとうございます!サッカージャンルの物語は多いのですが、キーパーが主人公というのはなかなかないでしょう笑
小説家になろうの方で主に活動しているので、よければそちらもチェックされてみて下さい。未熟者ですが、これからもよろしくお願いします
雪雨
とても面白かったです!
個人的にキーパーが主役で嬉しいヽ(*>∇<)ノ
更新、お待ちしております(*・ω・)*_ _)ペコリ